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小学生の起業家教育とは、子どもが「お店を開くように考える」体験を通して、自分で考えて動く力を育てる学びだと考えています。
何を売るかを考える。値段を決める。お客さんに届ける。この流れを、子ども自身がやってみます。
ねらいは、早く社長にすることではありません。どんな仕事に就いても役に立つ「考え方の土台」をつくることです。
「うちの子にも、自分で考えて動ける力をつけてほしい」。そう願う親御さんは多いと思います。
その一方で、こんな声も聞きます。「小学生に商売はまだ早いのでは?」「お金のことばかり考える子にならない?」
このコラムでは、海外ですでに行われている例を紹介します。そのうえで、子どもにどんな力が育つのか、家庭で何ができるのかをお伝えします。
起業家教育は「社長を育てる勉強」ではありません
起業家教育は、日本でも国が力を入れ始めています。
きっかけは、2022年11月に国がまとめた「スタートアップ育成5か年計画」です。
新しい事業を生み出す人を増やすための計画で、文部科学省も小学生から高校生への教育を進めています。
文部科学省がめざしているのは、子どもが「挑戦っておもしろい」と感じ、自分から動けるようになることです。
起業する人を増やすだけが目的ではありません。困りごとを自分で見つけ、どうすれば解決できるかを考える。そんな姿勢を育てることを大切にしています。
2023年からは、起業家などが学校へ話をしに行く仕組みもできました。起業家教育は、一部の家庭だけの特別なものではなくなってきています。
世界では、もう「授業のひとつ」になっている
フィンランド:小学6年生の約8割が「小さな街」で働く
フィンランドには「ユリテュスキュラ」という学びの場があります。英語では「Me & MyCity(わたしとわたしの街)」と呼ばれています。
中には、銀行やスーパー、市役所などがそろった小さな街があります。子どもたちは1日だけ、その街で働く大人になります。
お給料をもらう。税金を納める。買い物をする。1日だけの体験ですが、お金と社会のつながりを体で感じられます。
運営する側によると、今では小学6年生の8割ほどが参加しているそうです。
アメリカ:100年以上続く「ジュニア・アチーブメント」
アメリカには、1919年にできた「ジュニア・アチーブメント」という団体があります。子どもたちに、お金や仕事のしくみを教えてきました。
今では100か国以上に広がっています。毎年1,000万人を超える子どもが学んでいるそうです。日本にも活動の拠点があり、学校向けの授業を届けています。
レモネード・デー:レモネード屋さんで「小さな経営」
アメリカのヒューストンでは、2007年に「レモネード・デー」が始まりました。子どもが1日だけ、レモネード屋さんを開くイベントです。
材料にいくらかかるかを考える。看板をつくる。売れたお金から、借りた材料代を返す。小さいけれど、立派な経営です。
始まった年の参加者は数千人でした。今では、150万人を超える子どもが参加しています。
アメリカには、4歳でレモネードづくりを始めた女の子もいます。ミカイラ・ウルマーさんです。
きっかけは、ハチに刺されたことでした。ハチのことを調べるうちに、はちみつ入りのレモネードを思いつきます。
10歳のときにはテレビ番組で投資を受け、のちに大きなスーパーにも商品が並びました。
特別な才能があったから、というだけではないと思います。「好きなこと」と「誰かの役に立つこと」が、うまく結びついた例です。
お店づくりで育つ5つの力
ここまでの例には、共通点があります。子どもが自分の手で「商品をお客さんに届けている」ことです。
この体験から、次の5つの力が育ちます。
1. 自分で決める力:何を売るか、いくらにするかを自分で決める
2. 相手の気持ちを考える力:「どんな人が、なぜ買ってくれるのか」を考える
3. 伝える力:看板や声かけで、商品のよさを短い言葉で伝える
4. お金の意味がわかる力:お金は「誰かを助けたお礼」として受け取るものだと知る
5. 失敗から学ぶ力:売れなかった理由を考え、次に生かす
こちらはこの記事の内容を要約したものです。
私はふだん、コピーライター・マーケターとして、お店や会社の「伝え方」をお手伝いしています。
その目で見ると、2と3は大人でもいちばん難しいところです。そして、いちばん差がつくところでもあります。
マーケティングというと、売り込むための技術だと思われがちです。でも本当は「自分と相手の想いを繋ぐスキル」だと、私は考えています。
その入り口に小学生のうちに立てるのは、大きな財産です。
この5つの力は、一度で身につくものではありません。決めて、届けて、反応を見て、また考える。この小さなくり返しで、少しずつ育っていきます。だからこそ、小さいうちから「やってみる場」があることに意味があります。
家庭で今日からできる3つのこと
特別なスクールに通わなくても大丈夫です。起業家教育の第一歩は、家庭で始められます。
1.「どうしてこれを買ったと思う?」と聞いてみる
買い物の帰りに、親子で話してみてください。パッケージの絵、値段、置いてあった場所。「売る人の工夫」に気づくことが、相手の気持ちを考える練習になります。
2. 小さな「お店」を任せてみる
フリーマーケットや、家族相手のお店屋さんごっこがおすすめです。値段決めや看板づくりを、子どもに任せてみましょう。
親はつい口を出したくなります。そこはぐっとこらえて、見守ってください。
売上は数百円でもかまいません。「自分で決めたことが、人に届いた」。この手ごたえが、次の挑戦への元気になります。うまくいかなくても、それは大事な経験として残ります。
3. 結果より「ふり返り」をほめる
売れたか、売れなかったかよりも大切なことがあります。「次はどうする?」と考えられたことです。そこをほめてあげてください。失敗を次に生かす経験が、自分で考える力を育てます。
親御さんからよくある3つの疑問
お金にこだわる子になりませんか?
いちばん多い心配です。でも、実際の起業家教育でいちばん長く考えるのは「どうしたらお客さんが喜ぶか」です。
お金は、喜んでもらえた結果として返ってくるもの。この順番を体験するので、むしろ「人の役に立つことの大切さ」を学べます。
勉強がおろそかになりませんか?
起業家教育は、勉強のじゃまにはなりません。値段を決めるには計算が、看板をつくるには国語の力がいります。
学校で習ったことが「使える道具」に変わる。そんな体験ができるので、勉強する理由がわかる子も少なくありません。
何歳から始めればいいですか?
フィンランドの例のように、小学校の高学年がひとつの目安です。ただ、お店屋さんごっこや買い物の会話なら、低学年からでも十分楽しめます。
まとめ
小学生の起業家教育は、社長をつくるための早期教育ではありません。自分で考える力、相手の気持ちを考える力、言葉で伝える力を育てる学びです。
世界ではすでに授業のひとつになり、日本でも国が後押しを始めています。まずは家庭の会話から、小さな一歩を始めてみてください。
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