高齢者の認知機能の低下を防ぐ栄養成分や健康成分は?
これまでに様々ながん治療法が提案されてきたにもかかわらず、日本人のがんの罹患率や死亡率は減少傾向にはあらず、グラフで示す部位別がんによる死亡率の推移を見ると、男女とも胃がんや肝がんは減少傾向にありますが、肺がんや大腸がんおよび膵がんなどは増加傾向にあります。
最近、化学療法(抗がん剤治療)を行っている複数の患者さんから、「がんの治療効果を高める食材を多めに摂りたいので教えて欲しい」というような問合せが来るようになりました。
そこで、食品医学研究所では、がんに罹る前の予防や罹ってからの治療補助として役立ち得る10品目の食材からなる野菜主体の「抗がんスープ」を提案し、お薦めしています。
10品目の食材とは、アブラナ科野菜(ブロッコリー・カリフラワー・キャベツ・大根・小松菜・白菜など)、にんにく類(にんにく・ネギ・ニラなど)、生姜、大豆製品、キノコ類(舞茸・椎茸・シメジなど)、海藻類(もずく・ワカメ・昆布など)、トマト、玉ねぎ、にんじん、海洋性n-3系脂肪酸(鯖缶・鮭缶・鰯缶などの魚油)です。
各食材に含まれる主な抗がん成分は
①アブラナ科野菜→スルフォラファンなどのイソチオシアネート類(isothiocyanates such as sulforaphane)、ルテオリン(luteolin)、ケンフェロール(kaempferol)
②にんにく類→アリシン(allicin)、スルフィド類(sulfides)
③生姜→ジンゲロール(gingerol)、ショウガオール(shogaol)
④大豆製品→イソフラボン(isoflavones)
⑤キノコ類→ベータ・グルカンなどの多糖類(polysaccharides such as β-glucan)
⑥海藻類→フコイダン(fucoidan)、フロロタンニン(phlorotannin)
⑦トマト→リコピン(lycopene)
⑧玉ねぎ→オニオンA1(onionin A1)、ケルセチン(quercetin)
⑨にんじん→ポリアセチレン化合物(polyacetylenes)、ベータ・カロチン(β-carotene)
⑩海洋性n-3系脂肪酸→EPA(eicosapentaenoic acid)、DHA(docosahexaenoic acid)
となります。
これらの抗がん食材を適当に組み合わせた具材で、洋風、和風、中華風、エスニック風のスープを時々作って食べてはいかがでしょうか?
「抗がんスープ」に肉類を入れる場合には大腸がんの心配がほとんどない鶏肉や魚肉(鰯のつみれ・はんぺん・かまぼこなど)がおすすめです。
ハム・ベーコン・ソーセージなどの加工肉には、発色剤として使われている亜硝酸ナトリウムがN-ニトロソ化合物(N-nitroso compounds)という発がん物質を生成したり、発がん性のある合成着色料が使われていたりするので、摂りすぎに注意してください。
米国のミネソタ大学による研究(Chimia [Aarau], 2018, 72(10), 718-724)では、図に示すように、赤身肉(牛・豚・羊の肉)に含まれるN-グリコリルノイラミン酸(N-glycolylneuraminic acid; Neu5Gc)も大腸がんの一因になるそうなので、赤身肉を頻繁に摂るのも禁物です。
また、赤身肉を高温で調理すると発がん性の複素環芳香族アミン(heterocyclic aromatic amines)を生成したり、赤身肉を燻製にすると発がん性の多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbons)を生成したりするので、バーベキューなどで高温加熱や燻製にした赤身肉をあまり摂りすぎないようにしてください。
結局、赤身肉はほどほどにして、野菜は「抗がんスープ」に用いるような食材を中心に、鶏肉・魚肉・全粒穀物・野菜・果物・豆類・発酵食品を適当に組み合わせ、カロリーオーバーにならないように摂れば、栄養のバランスが取れた健康的な、がんを遠ざける食生活を送ることができると思います。



