事例Ⅰ 農地を含む調区内の数々の問題があった線引き前からの宅地
管理不全空家とは
「管理不全空家」とは、正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」によって定義された区分で、今の状態のまま放置すると「特定空家」に該当するおそれがある空き家を指します。
これは、2023年12月の法改正によって新たに設けられました。従来は「特定空家」に該当しない状態では行政が介入できませんでしたが、「管理不全空家」を新設することで、所有者に早めの管理対応を促す仕組みとなっています
管理不全空家に認定される基準
以下のような状態にある空き家が「管理不全空家」と認定される可能性があります。
- 建物が傷んでいて倒壊の危険がある
- 壁や窓、屋根の一部が腐食・破損し、崩落の恐れがある
- 敷地内にゴミが散乱し、衛生や景観に悪影響がある
- 雑草や枯れ枝が繁茂し、防虫や景観に影響が出ている
- 不審者が出入りし、犯罪の温床になるおそれがある
特定空家とは
「特定空家」とは、倒壊の恐れがある、安全に深刻な影響を及ぼす状態や、著しく衛生的に有害な状態、景観や周辺環境に重大な悪影響を与えている状態の空き家を指し、自治体が指定します。
指定された場合、行政によって助言・指導 ⇒ 勧告 ⇒ 命令 ⇒ 最悪は行政代執行(解体など)という段階的な対応が行われます。
管理不全空家 vs 特定空家
| 区分 | 主な特徴 | 行政介入の内容 | 税負担への影響 |
|---|---|---|---|
| 管理不全空家 | 放置して特定空家に至る恐れがある状態 | 助言・指導 → 改善要請 | 「住宅用地特例」が解除され、軽減措置が受けられなくなる可能性あり |
| 特定空家 | すでに危険または有害な状態の空家 | 勧告 → 命令 → 行政代執行や罰則(最大50万円の過料) | 同じく住宅用地特例が解除に加え、最終的には解体費用負担のリスクもあり |
行政対応の流れ(共通)
- 1.調査・認定:自治体が現地確認や通報を基に認定。
- 2.助言・指導:所有者に対して適切な管理を働きかけ。
- 3.勧告:対応がない場合、税優遇の対象から除外されるなどの措置。
- 4.(特定空家の場合)命令・行政代執行:強制措置や罰則も検討されます
なぜ「管理不全空家」が設けられたのか
- 特定空家より軽度な状態でも早期対応の必要性が高まったため。
- 空き家の増加に行政対応の逼迫があり、対応が遅れる前に介入可能にした狙いがあります。
- 管理不足な状態を見逃さず、地域住環境の悪化を防ぐための制度設計です。
所有者が取るべき対策
- 定期的な現地確認(月1回の巡回や清掃が望まれます)
- 雑草・倒壊リスク対策:剪定や補修、防犯対策などを行う。
- 売却・賃貸・解体の検討:管理が難しいなら早めに判断を。
- 管理代行や自治体支援制度の活用:管理不全状態を避けるための手段として有効です。
まとめ
- 管理不全空家は、まだ深刻な危険状態ではないものの、放置すれば特定空家となる「予備軍」の空き家です。
- 行政は早期介入を可能にするため、この新区分を設けました。
- 所有者は定期的に管理しつつ、放置による税負担や罰則のリスクを避けましょう。
もし、実際にお手元にある空き家に対応を考えている場合は、お住まいの自治体の「空き家対策窓口」に早めのご相談をおすすめします。




