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佐藤昌徳

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佐藤昌徳(さとうまさのり) / 不動産業

株式会社ビーティーアール

コラム

相続土地国庫帰属法について

2023年1月23日 公開 / 2023年2月7日更新

テーマ:相続問題、空き家問題

コラムカテゴリ:住宅・建物

相続土地国庫帰属法制定の背景

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「国庫帰属法」といいます。)が令和5年4月27日から施行予定です。
近年、土地所有者が死亡しても相続登記が未登記のままであったり、転居後も住所変更登記がされなかったりすること等を原因として、不動産登記簿からは所有者がすぐに判らず、所有者と連絡が取れないといった事が発生し問題となっています。
このような所有者が不明な土地が生ずると、土地が適切に管理されなかったり、土地の利用等が阻害されるといった問題が生じます。そこで、国庫帰属法が、相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みとして、制定されました。

国庫帰属法の内容

申請手続の概要

相続等により土地を取得した者は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属されることについての承認を申請することができます。
法務大臣は、当該承認申請に係る土地が国庫帰属法5条1項各号の事由のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければなりません。
承認された場合、承認申請者は、所定の負担金を納付し、その納付の時に、当該承認に係る土地の所有権が国庫に帰属します。
このように、国庫帰属法は、申請を受けて行政機関が要件を審査し、承認された場合に当該土地所有権が申請者等から国に直接移転するという制度です。

申請承認の要件

申請が承認されるための要件としては、①申請主体に関する要件、②対象地に関する要件、③その他の要件があります。

①申請主体に関する要件

申請できるのは「相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者」です。
土地が共有の場合、相続等によって共有持分を取得した共有者がいれば、共有者の全員で共同して申請することができ、共有者の中に相続等以外の原因で共有持分を取得した共有者がいても構いません。

②対象地に関する要件

申請できる土地は、次のいずれにも該当しないことが必要です。

 ・建物の存する土地
 ・担保権等が設定されている土地
 ・他人による使用が予定されている土地が含まれる土地
 ・特定有害物質により汚染されている土地
 ・所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

上記のいずれかに該当する土地については申請が却下されます。
また、対象地が通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を有する土地に該当するときは承認されません。

③その他の要件

承認申請に所定の添付書類が添付されていないときや所定の手数料が納付されないとき等や、申請者が所定の事実の調査に正当な理由なく応じないときは、当然、申請は却下されます。

法の実効性についての疑問

この制度の対象となる土地は、建物がなく、抵当権等の担保権がなく、土壌汚染がなく、境界等についての争いもなく、埋蔵物や残置物もないこと等、多くの条件があります。
そのような土地であれば、通常の不動産取引で、比較的容易に売却することが可能な土地ですから、国庫帰属法申請の検討をするまでもないでしょう。
本来、国庫帰属法は、土地利用ニーズの低下等により、相続したものの土地を手放したいと考える人が増加していることや、相続を契機として、望まないのに土地を取得した所有者の負担感が増し、管理不全化が問題となっていることから制定されたものです。
一方、管理又は処分が困難な土地を国が引き受けることは、将来的には国民負担の増大という結果にもつながるために、多くの要件が設けられたと考えれます。
その結果、相続したけれども手放したいと考えるような管理又は処分が困難な、ほとんど価値が無く、値段がつかず売れない土地は、ほとんど国庫帰属法の対象外になってしまうという、本来の立法目的からすれば実効性に疑問のある法律となってしまう可能性があります。

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