子どもへの運動の効果 ~勉強が苦手だった子どもの声~
「ADHDを疑っていました」5ヶ月後に起きた変化の理由
「ADHDを疑っていました。」
昨日届いた保護者様のメッセージの一文です。
幼稚園の年長頃から、多動と衝動が目立ち始めたそうです。友達とのトラブルが増え、家ではじっとしていられず、困りごとが増えていたそうです。
悩んでいたところSNSで S.パワーキッズプログラムプログラムの投稿を知ったそうです。
そして入会、それから5ヶ月後。
落ち着きが出てきた。
姿勢が整い始めた。
目の力が変わった。
友達との関係が安定してきた。
なぜ、この変化が起きたのでしょうか。
私はこのケースを「性格」や「気質」の問題としては捉えていません。発達の視点から見ると、背景にあるのは実行機能の未成熟、つまり前頭前野の働きが十分に使われていない状態だった可能性があります。
前頭前野は、感情のブレーキ、注意の持続、衝動の抑制、行動の切り替えを担う“司令塔”です。この働きが弱いと、怒りが先に出る、我慢がきかない、考える前に動いてしまう、といった行動が目立ちます。
これは「わがまま」でも「しつけ不足」でもありません。脳の順番が整っていない状態とも言えます。
適切な身体経験や成功体験が積み重なり、予測・判断・調整のプロセスを繰り返すことで、前頭前野の使われ方は少しずつ変わっていきます。その結果、感情の持続時間が短くなり、切り替えが早くなり、行動が安定していくのです。
私はこれを「発達の空白化」という視点で説明しています。本来幼少期に自然に積み重なるはずだった体験が不足し、脳と身体の統合が十分に進んでいない状態。そこに支援が入らないまま思春期を迎えると、問題が深刻化するケースもあります。
しかし、早い段階で整え直すことは可能です。
今回の保護者の方は、最後にこう書かれていました。
「体を動かすことは、心を動かすことにつながっていると感じました。」
私はこれまで多くの改善事例を見てきました。これは偶然ではありません。叱る前に整える。その順番が変わるだけで、子どもの未来は大きく変わります。
現在、この「なぜ?」の正体と改善のプロセスを一冊の書籍にまとめています。これは一家庭の問題ではありません。日本の子どもたちの発達環境そのものを問い直す内容です。
多くの子ども達の未来が切り拓らかれていくことを願い。
まもなく公開。
参考図書・資料
■ ヒルマン,チャールズ H./エリクソン,カーク I./クレイマー,アーサー F.(2008)
「運動は脳と認知機能を高める ― 心臓を鍛えれば脳も賢くなる」
『ネイチャー・レビューズ・ニューロサイエンス』
(身体活動が注意力・実行機能・認知機能を向上させることを示した総説)
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■ エリクソン,カーク I. ほか(2011)
「運動トレーニングは海馬体積を増加させ、記憶を改善する」
『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』
(有酸素運動が記憶を司る海馬の体積を増加させることを示した研究)
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■ ダイヤモンド,アデル(2013)
「実行機能(Executive Functions)」
『心理学年報(Annual Review of Psychology)』
(前頭前野を中心とする実行機能の理論的整理と発達的意義)
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■ レイティ,ジョン J.(2008)
『脳を鍛えるには運動しかない』(原題:Spark)
NHK出版
(運動が学習・感情・注意力に及ぼす神経科学的影響をまとめた書籍)
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■ グレイ,ピーター(2011)
「遊びの減少と子どもの精神病理の増加」
『アメリカ遊び学ジャーナル(American Journal of Play)』
(外遊びの減少と子どもの心理問題の関連を指摘)
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■ ルバンズ,デイビッド R. ほか(2016)
「青少年の認知およびメンタルヘルスに対する身体活動の効果」
『英国スポーツ医学誌(British Journal of Sports Medicine)』
筆者プロフィール
山崎憲治
発達・教育×脳科学統合理論 実践研究者
子どもの発達・運動・社会性の関係に関する実践研究と指導に長年携わり、子ども達の変化事例をもとに発信を行っている。



