なぜ今、子どもの問題行動は「説明がつかなくなっている」のか ― 99%の人が知らない“発達の空白化”という視点
「壊れやすいのは子どもではない ――壊れた社会の中で苦しむ子どもたちの“本当の原因”」
なぜ今、子どもたちの「今」を
本当に危惧しなければならないのか
――責任は子どもではなく、大人社会にあります
近年、不登校、情緒不安定、衝動的な行動、対人関係のつまずきなど、
子どもをめぐる問題が急増しています。
これらの現象に対し、
・子どもが変わった
・我慢ができなくなった
・親の育て方の問題ではないか
といった声が向けられることも少なくありません。
しかし、発達科学・脳科学の視点から見ると、
本当に危惧すべき対象は「子どもそのもの」ではありません。
⸻
問題は「子ども」ではなく「環境」にあります
子どもの行動や情緒は、生まれつきの性格だけで決まるものではありません。
育つ過程で、どのような経験を積み重ねてきたか――
その結果として表れます。
・落ち着きがない
・衝動的に行動する
・集団が苦手
・感情の切り替えが難しい
これらは意志の弱さではなく、
発達に必要な経験が十分に積み重なっていない可能性を示しています。
⸻
この20〜30年で変わった子どもの育つ環境
この数十年で、子どもを取り巻く社会環境は大きく変化しました。
・公園でのボール遊びの禁止
・学校・園での安全配慮の過剰化
・クレームや責任回避を優先する社会
・共働き・核家族化の進行
・管理された習い事の増加
これらはすべて、子どもを守るための合理的な判断として導入されてきました。
しかしその結果、子どもたちは次のような経験を失ってきました。
・失敗しながら調整する経験
・力加減を身体で学ぶ経験
・相手との距離感を測る経験
・興奮を自分で抑える経験
⸻
脳は「経験したこと」でしか育ちません
脳科学の基本原則として、
脳は「教えられたこと」よりも「実際に体験したこと」によって発達します。
特に次の脳機能は、身体を伴う経験の中でしか十分に育ちにくいことが分かっています。
・前頭前野(判断・抑制・計画)
・小脳(タイミング調整・誤差修正)
・感覚統合(身体感覚の整理)
・社会脳(対人調整・共感)
これらが未成熟なまま成長すると、
行動面・情緒面・学習面に影響が表れやすくなります。
⸻
誰の責任として捉えるべきでしょうか
ここで重要なのは、この状況を誰の責任として捉えるかです。
子どもは、自分で環境を選ぶことができません。
・遊び場を決めるのは大人
・ルールを決めるのは大人
・危険かどうかを判断するのも大人
つまり、今の子どもたちの姿は、
**大人社会がつくってきた環境の「結果」**として現れています。
この視点を欠いたまま子どもを叱り、正そうとすると、
問題はさらに深くなってしまいます。
⸻
それでも、希望はあります
ここで最も大切なことをお伝えします。
子どもの発達は、一度きりで固定されるものではありません。
環境が変われば、発達は再び動き出します。
安心・安全が確保され、
失敗が許され、
比較されない環境に置かれたとき、
子どもは驚くほど本来の力を発揮し始めます。
これは特別な才能の話ではなく、
人間の発達の仕組みそのものです。
⸻
大人社会に求められていること
今、必要なのは、
・子どもを責めること
・親を追い詰めること
・即効性のある成果を求めること
ではありません。
必要なのは、
子どもが育つ条件を、社会の側がもう一度組み直すことです。
それは、昔に戻ることでも、無秩序に放任することでもありません。
現代社会に合った形での再設計です。
⸻
結びに
今、子どもたちを本当に危惧すべき理由は、
子ども自身にあるのではありません。
私たち大人社会が、
どのような環境を子どもに渡しているか、そこにあります。
しかし同時に、これは希望でもあります。
なぜなら、環境を変えられるのも、また大人社会だからです。
⸻
⸻
参考図書・資料一覧
発達科学・脳科学
• アデル・ダイアモンド『実行機能 ― 脳を鍛える方法』
• ジョン・J・レイティ『脳を鍛えるには運動しかない!』
• ダニエル・J・シーゲル『マインドサイト』
感覚統合・身体体験
• A・ジーン・エアーズ『感覚統合理論の基礎』
• エアーズ『感覚統合と子どもの発達』
• 松本千代栄『子どもの感覚統合と遊び』
社会性・対人発達
• マイケル・トマセロ『ヒトはなぜ協力するのか』
• 岩田 誠『社会脳とは何か』
教育・社会環境
• デヴィッド・エルキンド『急がされる子どもたち』
• ピーター・グレイ『子どもは遊びで育つ』
• 文部科学省『不登校児童生徒の実態調査報告』
• 国立教育政策研究所『非認知能力に関する研究報告』
⸻



