第4回 なぜ今、子どもは投げなくなったのか?──ボール遊び禁止が奪った発達と脳のスイッチ

山崎憲治

山崎憲治

テーマ:子育て

「二刀流・大谷〇平選手の寄贈グローブが教えてくれた“投げる力”で子どもの未来を育てる方法」



第4回 なぜ今、子どもは投げなくなったのか?──ボール遊び禁止が奪った発達と脳のスイッチ

「最近の子ども、投げるのが苦手」「そもそもボールで遊ばない」そんな声を保育・教育現場、そして保護者からよく耳にします。実は今、子どもたちの“投げる経験”が激減しているのです。その背景には“危険・迷惑・非効率”という現代社会特有の価値観と、脳と心の発達に欠かせない原体験の喪失=『発達の空白化』
があります。

1. 現代社会で「投げる」が禁止された理由

現象:ボール遊び禁止/投力テスト廃止/キャッチボールの消滅
背景:公園や学校での苦情・事故リスクへの過敏対応/評価の平等性を重視しすぎた教育改革/親子の時間・場所・文化の変化
→ 一言で言えば、「投げることが“悪いこと”になった社会」です。

2. 投げないことで、脳と心に何が起きているのか?

「投げる」という行為は、単なる運動ではありません。発達の最重要機能を総動員する“脳のトレーニング”生命活動獲得能力の序列一位
なのです。
● 前頭前野:判断・集中・自己制御 → 「いつ、どこに、どう投げるか」を考える
● 小脳:運動の精度・感情調整 → タイミング・姿勢制御・緊張のコントロール
● 感覚統合:五感の統合 → 力加減・距離感・空間把握・手応えの認識
→ 投げることでしか“つながらない脳回路”がある。

3. 投げない時代に育った子どもたちの行動変化

・人との距離がうまく取れない(空間認知の未発達)
・すぐ怒る/泣く(自己制御機能の弱さ)
・頭ではわかっていても行動ができない(感覚統合の空白)
・ルール・勝ち負けに過敏すぎる or 無関心(社会性の未獲得)
→ これらはすべて、「投げる経験がなかったこと=スイッチが入らなかったこと」の結果。

4. どうすれば“投げる力”を取り戻せるか?

・「安全・楽しい・本気で投げ合える」環境を家庭や学校に戻す
・投げる・受け取る・外す・成功する体験を“繰り返せる場”を作る
・例:スーパーハードドッジ
のように安全に、脳・感覚・社会性を同時に刺激するプログラム等が有効(考案以来10年以上数千試合経ていまだ突き指、骨折、鼻血出血など怪我ゼロ)


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まとめ

今、子どもたちに必要なのは、勉強でも叱ることでもありません。必要なのは、「おもいきり力いっぱ投げる経験」です。つづく

次回 超重要

投げる=スイッチが入る/投げない=空白が生まれる


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【参考資料】


1.『子どもの脳を傷つける親たち』
著者:友田明美(医学博士・小児精神科医)
出版社:NHK出版
→ 脳の発達と経験不足・感覚刺激不足による発達障害様症状との関連が詳述。



2.『動いて育つ子どもの脳』
著者:久保田競(脳科学者)
出版社:講談社+α文庫
→ 投げる・走る・体を使う運動が前頭前野・小脳を活性化させるという神経科学的視点から有効性を解説。



3.『脳を鍛えるには運動しかない』
著者:ジョン・J・レイティ(ハーバード大学医学部准教授)
出版社:NHK出版
→ 有酸素運動と脳の構造・機能改善(感情・学習・集中・自己制御)との明確な関係性をエビデンスベースで紹介。



4.『非認知能力 子どもが人生を切り拓く力』
著者:ポール・タフ
出版社:英治出版
→ 学力だけでなく“やり抜く力・自己制御・社会性”が将来の成功を左右することを国際的研究とともに示す。



5.文部科学省「児童生徒の体力・運動能力調査」年次報告書
→ 特に「投力の顕著な低下傾向」については、小中学生全体の傾向として公式データで裏付け。



6.『発達が気になる子の感覚統合あそび』
著者:中村育子(作業療法士)
出版社:ナツメ社
→ 投げる・受け止める・回るといった遊びが感覚統合・自己調整能力にどれだけ影響するかの実例が豊富。



7.『禁止だらけの子育て社会』
著者:中川李枝子(保育士・絵本作家)
出版社:新潮文庫
→ 現代の“禁止文化”が子どもから自由な身体・心の表現機会を奪っているとする文化論的指摘。

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山崎憲治
専門家

山崎憲治(教育アドバイザー)

firstball

独自開発の運動プログラムや学習プログラムで運動能力を伸し、やる気や集中力、脳の認知機能(理解・判断・記憶・思考等)を高めて学習することで学力も向上する文武両道実現。心身共に子どもの健やかな成長を育む。

山崎憲治プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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