不動産の特性(不動産の基礎知識1)
なぜ不動産鑑定評価が必要なのか?
公的土地評価額のうち、公示地価と基準地標準価格については、不動産鑑定士の鑑定評価を求めて、その結果をそれぞれの機関が審査し必要な調整を行って評定することになっています。
これらの公的評価額は土地取引の指標となるものですから、その基となる不動産鑑定評価制度は重要です。
今回は、この「不動産鑑定評価」について解説します。
不動産鑑定評価の定義
不動産の鑑定評価に関する法律では、「不動産鑑定評価」を次のように定義しています。
「土地もしくは建物またはこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること」
もう少し簡単にいうと、「不動産の経済的な価値を金銭に見積もること」となります。
売主が自分の主観に基づいて付けた「売値」や不動産仲介業者が行う「価格査定」も、広い意味では「不動産の経済的な価値を金銭に見積もること」といえます。
しかし、仲介における価格査定や建築士の建物価格査定などは、不動産鑑定評価ではありません。
土地等の適正な価格の形成に資することを目的として、不動産の鑑定評価に必要な事項を定めた不動産の鑑定評価に関する法律に基づいて、不動産鑑定士だけが不動産鑑定を行うことができます。
不動産鑑定評価の必要性
不動産の現実の取引価格は、取引の必要に応じて個別に形成されます。
そして取引価格は、個別の事情から影響を受けることになります。
例えば、
①売主が何らかの事情で売却を急いでいる
②隣地の所有者が買主
このような、個々の事情を抱えた取引価格から不動産の適正な価格を見出すことは、一般の人にとって非常に困難です。
したがって、不動産の適正な価格については、
①十分に効率的であるとはいえない不動産市場の市場メカニズムについての体系的な知識や技術を体得している
専門家としての不動産鑑定士の鑑定評価活動が必要となります。
不動産鑑定評価とは?
一般の商品は合理的な市場の価格形成機能により、需要と供給の関係から価格が決定しています。
これに対して不動産は、
①個別性が強い
②取引市場が局限されている
ことから、自由な価格形成が難しくなります。
取引市場において適正な価格形成が期待できないのであれば、これに代わって不動産の適正な価格を判定する作業が必要となります。
そこで、「合理的な市場があったならばそこで形成されるであろう正常な市場価格」を、不動産鑑定士が的確に把握する作業が「不動産鑑定評価」です。