遺産分割協議で紛争になった場合、調停と審判(相続手続きの基礎知識20)
遺産分割の方法
相続人が2人以上いるときは、亡くなった方の財産は共同相続人が共有することになります。
この共有状態のものを、それぞれの相続人の単独の財産にするのが遺産分割です。
遺産分割の方法には、指定分割と協議分割の二つの方法があり、協議が成立しないときは家庭裁判所に分割の審判を求めることができます。
指定分割
被相続人は、遺言で、
①遺産分割の方法を定めること
②遺産分割の方法を定めることを第三者に委託すること
ができます。
これを指定分割といい、分割方法の指定は、遺産全部はもちろんですが、遺産の一部についてだけでもすることができます。
また、財産の種類だけを指定したり、個別具体的な財産を指定しても構いません。
共同相続人の一部または遺産の一部しか分割方法が指定されていないときは、残りの財産は共同相続人が協議して分割方法を決定します。
協議分割
被相続人の遺言による分割方法の指定がない場合には、共同相続人全員協議によって遺産を分割することになります。
共同相続人の一人から分割を求められたときは、他の共同相続人は分割に応じなければなりません。
協議には、共同相続人「全員」の参加と合意が必要であり、一部の相続人が参加していない、または一部の相続人が同意していない協議は無効となります。
遺言によって相続分が指定されていても、共同相続人全員の協議によって遺言とは異なる分割案が合意されたときには、協議分割が優先されます。
協議による遺産の分配比率は、指定相続分や法定相続分に従わなくてもよいので、共同相続人中の一人の取得分がゼロでも問題ありません。
遺産分割の禁止
遺産の共有は、分割までの一時的な状態にすぎず、共同相続人はいつでも遺産分割を求めることができます。
ただし、次の場合には一定の期間、遺産分割を禁止することができます。
①被相続人の遺言
②共同相続人の特約
③家庭裁判所の審判
遺産分割の基準
遺産の分割にあたっては、
①遺産に属する物または権利の種類と性質
②各相続人の年齢、職業、心身の状態、生活の状況
③その他一切の事情
を考慮しなければなりません。
遺産分割の効果
遺産分割されると、それぞれの相続人は相続開始の時にさかのぼって、分割された権利・義務を引き継いだことになります。
ただし、第三者の権利を害することはできません。
また、共同相続人の一人が分割により取得した債権が取り立て不能になった場合には、他の相続人にそれぞれの相続分に応じて、取り立て不能分を負担してもらえます。