相続の定義・歴史と相続制度の存在理由(相続の基礎知識4)
遺贈と死因贈与
人が亡くなった場合の財産の処分方法としては、相続のほかに
①遺言
②死因贈与
の2つがあります。
遺贈と死因贈与は、ある人が生前に、自分が死んだら自分の財産を他人に無償または負担付きで与えることを指定しておくものです。
遺贈・死因贈与によって自分の財産を相続人以外の他人に無償で与えることが可能となり、その人の死亡によって財産が移転します。
遺贈
遺贈とは、遺言によって相続財産の全部または一部を他人に与えることです。
遺贈する人を遺贈者、遺贈を受ける人を受遺者といいます。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。
⑴包括遺贈
遺言者が、遺産の全部または何分の1というような抽象的な割合を示して遺贈するのが包括遺贈です。
「不動産全部」「有価証券の半分」という表現は、原則として特定遺贈とされ、特に遺産に対する割合を示したと考えられる場合だけが包括遺贈になります。
包括遺贈された受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされています。
⑵特定遺贈
遺産のうち特定の財産を対象として、受遺者に遺贈することを特定遺贈といいます。
遺贈の承認と放棄
⑴包括遺贈
包括遺贈の承認・放棄は、相続の場合と同じ手続きとなっています。
受遺者は、相続の開始を知った日から3か月以内に承認または放棄をしなければなりません。
3か月以内に限定承認または放棄をしなかったときは、単純承認したものとみなされます。
⑵特定遺贈
特定遺贈の受遺者は、遺言者が亡くなった後いつでも自由に承認・放棄をすることができます。
遺贈の放棄について、法律の定めた特にありませんので、遺贈を放棄する旨を意思表示すれば足ります。
受遺者の死亡による遺贈の失効
遺贈者が死亡した時に遺言の効力が発生します。
したがって、受遺者は遺贈者が死亡した時に生きている必要があります。
遺贈者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その者への遺贈は無効となります。
もちろん、受遺者の代襲相続もありません。
遺贈が無効になったときは、受遺者が受けるはずであった財産は、相続人のものになります。
遺贈が失効した場合には、
死因贈与
死因贈与とは、人が死亡することによって、その効力が発生する贈与契約です。
贈与契約の一種ですから、贈与する人の「この土地をあげましょう」という意思と、贈与される人の「はい、いただきます」という意思が合致することで、法的な効力が発生します。
遺贈が、遺贈をする人の単独行為であり、遺贈を受ける人の意思表示を必要とせず、遺贈者の意思表示だけで法的効力が発する点で、死因贈与と異なります。