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相続の意思表示による承認、法定単純承認(相続の基礎知識14)

井川卓

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テーマ:相続の基礎知識

相続人の選択の自由

相続人は、基本的に被相続人の財産を引き継ぐことになります。
しかし、借入金などの債務が多額である場合には、相続したくないこともあるでしょう。
そこで、相続人は、自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に、
①単純承認
②限定承認
③相続の放棄
のいずれかを選択して、相続するかどうかの意思表示をすることができます。

単純承認とは?

単純承認とは、被相続人の財産のうちプラスの財産・マイナスの財産を問うことなく、すべてを無条件で相続することです。
単純承認には、相続人が被相続人の財産を相続することを積極的に意思表示する場合のほか、相続人の行為または期間の経過によって単純承認したとみなされる法定単純承認とがあります。

意思表示による単純承認

⑴意思表示の方法
 「単純承認します。」という意思表示は、特別の届出など必要ありません。
⑵相続人の行為能力
 相続の承認や放棄はいわゆる「法律行為」なので、相続を承認するには相続人に行為能力がなければなりません。
 相続人が未成年者、成年被後見人、被保佐人の場合には、法定代理人や保佐人の代理または同意が必要となります。
⑶承認の範囲
 相続財産の承認は、その相続財産のすべてに対してしなければなりません。
 現金は相続するが不動産は相続しないとか、プラスの財産は相続するがマイナス財産は相続しないというような意思表示はできません。
⑷撤回の禁止
 相続の承認および放棄は、一度意思表示をした以上は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内であっても、撤回することはできません。

法定単純承認

相続人が以下の行為をした場合には、単純承認したものとみなされます。
 ①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき
  ・「処分」とは、相続財産を売却や相続債権を回収するなどの法律行為のほか、相続財産を壊すなどの事実行為も含まれます。
 ②自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、限定承認または相続の放棄をしなかったとき
  ・この3か月という期間は、相続人が相続財産の内容を調査して、相続を承認するか放棄するかをしっかり考えるための熟慮期間といわれています。
 ③相続人が限定承認または相続の放棄をした後でも、相続財産の全部または一部を隠匿し、消費し、悪意で相続財産目録に記載しなかったとき

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井川卓
専門家

井川卓(司法書士)

司法書士・行政書士 アワーズ事務所

登記に関わる書類を作成する司法書士と、国や地方自治体などの行政機関に提出する書類を作成する行政書士の二種類の書士業の資格を持つため、別々の事務所に依頼することなくワンストップで相続に関する問題に対応。

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