民法と相続税法における「相続の取扱い」の違い(相続の基礎知識5)
相続開始の原因
相続は、人の死亡によって開始します。
人の死亡とはいわゆる自然死亡のほか、失踪宣告によって死亡したものとみなされた場合も含まれます。
1. 自然死亡
・自然死亡の場合は、医師に死亡診断書を交付してもらい、これと共に死亡届を提出します。
・死亡届と死亡診断書(死体検案書)は1枚の用紙(A3ヨコ)で、左半分が死亡届、右半分が死亡診断書(死体検案書)となっています。
⑴死亡診断書(死体検案書)
・死亡診断書は通常亡くなった当日か翌日に、臨終に立ち会ったあるいは死亡を確認した医師が交付してくれます。
・死亡診断書は、その後の手続で必要になる場合がありますので、何枚かコピーを取っておいてください。
⑵死亡届
・死亡届の提出期限は、親族、同居者、後見人などが、亡くなった事実を知った日から7日以内です。
・亡くなった方の死亡地もしくは本籍地または届出人の所在地の市町村役場に提出します。
2. 失踪宣告
・人が行方不明になり、その生死がわからない場合、その人の財産や家族関係が長期間放置されてしまいます。
このような親族はもちろんその他の関係者にとっても不都合な状態を解消するための制度が失踪宣告です。
・失踪宣告を受けた者は、死亡したものとみなされます。
⑴普通失踪
不在者の生死が7年以上明らかでないときに、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をします。
失踪期間満了時の7年経過時に死亡したものとみなされます。
⑵特別失踪
戦地に臨んだ者や、沈没した船や墜落した飛行機に載っていた者などが、その危難が去った後1年間その生死が不明であったときに、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をします。
特別失踪の場合は、その危難が去った時に死亡したものとみなされます。
3. 同時死亡の推定
・数人の者が死亡した場合で、その1人が他の人の死亡後も生きていたかどうかがわからないときは、これらの人たちは同時に死亡したものと推定されます。
・同時死亡の推定が働いた場合には、本来なら被相続人と相続人の関係となる者同士であっても、お互いに相続は発生しません。
「みなす」と「推定する」
民法やその他の法律では、「みなす」や「推定する」という言葉をよくみかけます。
一般的な言葉としては、同じようなニュアンスとして使われているのかもしれませんが、法律用語としての両者は大きく違っています。
「みなす」場合、みなされた事柄に対して反対事実を証明しても、これを覆すことはできません。
これに対して、「推定する」場合には、反証することができれば、推定された事柄を覆すことが可能です。
相続開始の場所
相続開始の場所は、亡くなった方(被相続人)の住所地です。
相続に関する裁判や相続税の申告書を提出するときに、被相続人の住所地が問題になることがあります。