不祥事を国土交通省へ報告していないマンション管理会社は存在する ~行政処分を一度も受けた事がないというアピールポイントは信じるべきか~
平成30年2月27日付け西日本新聞朝刊に国土交通省九州地方整備局による管理会社への「行政処分」の記事が掲載されていました。この管理会社は大阪市に本社があり北九州市に出張所があります。
処分に至った内容は、パート従業員が複数のマンション管理組合の管理費等から約100万円を着服したといういわば「横領」の事実に対し、国土交通省九州地方整備局は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)」第81条に基づき「指示処分」を行ったというものです。
このような、事件が発生すると管理組合としては、管理会社に対して信用がなくなり、管理会社の全業務に対して疑念を抱くのではないでしょうか。特に管理会社従業員より金融機関から出金依頼を求められ「払い出し用紙」を渡されたとしても払い出し用紙の捺印を躊躇するのではないでしょうか。以下のような疑いを抱くのではないでしょうか。
・何の目的で払い出すのか。払い出した後、支払先へ即時に支払いをするのだろうか。
上記のような疑いを持ち始めると、出金の際、管理組合役員は管理会社従業員に金融機関へ同行し支払いを見届けたくなるのではないしょうか。しかし、管理組合役員の方が管理会社従業員に金融機関に同行する時間をタイムリーに作れるかどうかという問題があります。よって、管理会社より出金依頼があった場合は、出金当日に支払先の領収証、振込用紙控などを管理組合役員が確認する事が一つの手段と思われます。
この管理会社は、管理業務を受託している管理組合に対し、「行政処分」を受けた事実を報告したのかどうか、疑義があります。マンション標準管理委託契約書第12条は、管理会社がマンション管理適正化法の規定に基づき処分を受けたとき管理組合に対し通知しなければならないと定められています。この通知義務を怠れば、契約違反、債務不履行により管理会社との管理委託契約を解除することができます。
実際にあった話ですが、平成25年10月29日、北九州市に本社がある管理会社が行政処分を受けました。内容は、従業員が管理組合の財産を着服し横領した事でした。私がこの管理会社が管理を受託しているマンションに出張相談に伺った際、応対頂いた理事長にこの「行政処分」の事実を話したところ、「知らない、通知を受けていない」との事で、理事長はかなり驚いていました。また、この管理会社の隠蔽体質に対して激怒していました。
もっと悪質なケース聞いた事があります。それは、ある管理会社従業員が複数の管理組合財産から数百万円着服、横領している事実が発覚しているにもかかわらず、国土交通省に届けず、会社として管理組合に金銭を返済すれば問題なしと事態を終結させたということです。さらに、被害を受けた管理組合役員に対しては「被害を受けたお金は返済します。他の組合員に口外しないでください。」といわゆる「口止め」工作を行っていたということです。もっと呆れた事に、着服横領は複数の従業員が行っていたということです。
複数の従業員による管理組合財産の着服、横領、会社としての隠蔽体質、管理組合役員への「口止め」工作と驚くような悪行三昧で、極めつけは、この管理会社の責任者は「不正の事実を正直に行政へ報告する会社なんか存在するわけがない。」と平然と主張しているようなのです。
この会社の代表者は、上記の事実を把握しているにも関わらず「コンプライアンス(法令遵守)は企業として当たり前である。」と常日頃から言っている割には不正事実に対し正当な手続きを指示していないようで、暗に不正事実に関し行政も含めた「社外緘口令」を敷いているようで、「法の抜け穴」を模索しているようなのです。いわば、言っていることと行っている事が矛盾しているようなのです。
管理会社より不正事実を「口止め」された管理組合役員は、当然として全組合員に対し早急に、不正事実、口止め工作された事実を公表すべきです。また、管理組合として国土交通省に届ける事が望ましいと思います。これが、危機管理への対応と思います。管理組合財産は、管理組合役員だけのものでなく全組合員の財産なので、財産に対する危機的状況を全組合員は「知る権利」があるのです。
不正を行った管理会社に対しこの先、管理委託を継続するかどうか全組合員で検討すべきと思います。不正を隠蔽する管理会社に対しこの先、信頼関係を維持できるかについても全組合員で検討すべきではないでしょうか。