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清野隆(せいのたかし) / マンション管理士

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コラム

内縁関係にある配偶者の居住する権利の保護 ~権利の濫用はこれを許さず~

2017年11月4日

コラムカテゴリ:住宅・建物

私は、月に一度、ホームロイヤークラブという弁護士による暮らしの法律勉強会に参加しています。先月のお題が、内縁関係にある配偶者の居住する権利は保護されるのかというものでした。その内容とは、内縁関係にある夫婦で所有者である夫が亡くなった場合、夫の相続人から所有権に基づく相続不動産の明け渡しを請求された場合、内縁関係にある妻は、居住する権利を主張できるのかどうかというものです。
先に結論を申せば、内縁関係にある妻は、居住する権利を主張できるということなのです。但し、相続人自らが居住するなどの特別な事情がある場合には、不動産を明け渡さなければならないとのことです。
内縁関係の配偶者には、相続権はありません。よって、住居の所有権を相続することはできませんので、相続する権利を持つ方が所有権を取得することになります。よって、内縁関係にある妻が引き続き居住するならば、相続人の承諾が必要であり、且つ相続人が明け渡しを求めれば応じなければならない感じがします。しかし、裁判所は、内縁関係は準婚関係、つまり、婚姻関係に準ずるものと見做し相続人が所有権に基づく住居の明け渡し請求は、民法1条3項の権利の濫用に該当し、請求を退けているとのことなのです。因みに民法1条3項の条文は「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」となっています。
権利の濫用とは、形式的には、権利行使の外形があるが、その時の具体的な状況や結果に照らして社会通念上妥当とされる範囲を超えているため、実質的に権利行使として認める事ができない場合を意味します。権利の濫用と判断される基準としては、①他人を害する目的で権利を行使している②権利の行使によって生ずる権利者の利益と相手方または社会全体に及ぼす損害との比較し判断されるとなっています。
管理規約、使用細則等の運営、適用についても、状況によっては「権利の濫用」と判断される事があると思います。よって、管理規約、使用細則等に抵触する区分所有者がいた場合、上記の「権利の濫用」に当てはまっていないか、理事会も慎重に協議する必要があると思います。
しかし、「権利の濫用」に慎重になりすぎて、「真面目な区分所有者」が損害を被っていないが、我慢ばかりさせていないか等についても考慮しなければならないと思います。
上記②の権利の濫用についての基準は、マンション内においては、「快適なマンションライフ」の侵害にあたるかどうかだと思います。

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