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清野隆(せいのたかし) / マンション管理士

マンション管理トータルサポート

コラム

実務における有資格者と無資格者の違い ~単なる経験値よりも知識の正確さ~

2017年10月14日

コラムカテゴリ:住宅・建物

私は、不動産会社に約11年、マンション管理会社に約7年在籍していました。この2つの業界とも仕事するにあたり、資格を有しなければ行ってはならない業務があります。逆に言えば、無資格者が行うと法律違反になるという事なのです。
不動産業界に関して言えば、「宅地建物取引士」という国家資格で、少し前まで「宅地建物取引主任者」という名称でした。宅地建物取引士が行わなければならない業務は、重要事項の説明、重要事項説明書への記名押印、契約内容記載書(契約書)への記名押印です。また、事務所ごとに業務に従事する者5人に対して1人の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければなりません。このような、資格を必置資格といいます。
上記の重要事項の説明とは、不動産取引を行うにあたり、契約対象物件が権利関係、法令上の制限においてどんな物件であるのか、契約締結に際しどんな条件なのか、契約締結の判断に重大な影響を与える事項について説明するものです。消費者に「こんなはずじゃなかった。」「騙された。」と後悔させないように、そして、損害を与えないようにするための説明なのです。だから、不動産取引について、正確な知識を有する資格者が行わなければならないのです。
宅地建物取引士になるには、まず、宅地建物取引士試験という国家試験に合格しなければなりません。合格率は、平成28年度は15%でした。ある程度、正確な知識を有してなければ合格できないのです。逆を言うならば、試験に合格できないのは知識が不十分で、正確さが欠けているということなのです。
不動産取引を検討する方は、担当する営業が有資格者なのか無資格者なのか確認された方がいいと思います。無資格者の営業であれば、不動産知識の正確さが不十分である可能性が高く、誤った説明を受けて損害を被る可能性があるかも知れません。
自分自身が営業をしていた頃、他業者の営業で何回受験しても試験に合格できない方は、やはり不十分な知識で仕事をしていたことを思い出します。
マンション管理会社に勤務する場合は、「管理業務主任者」という資格を有していないと業務に支障をきたすことがあります。
管理業務主任者は、現行のマンションの管理の適正化の推進に関する法律制定に伴いマンションの委託契約に関する重要事項や管理事務報告を行うために設けられた国家資格であり、マンション管理業務上、その諸問題に精通していなければならないとされています。
管理業務主任者が行わなければならない業務は、委託契約に関する重要事項の説明および重要事項説明書への記名押印、管理委託契約書への記名押印、管理事務の報告です。また、事務所ごとに30管理組合に1人以上の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければなりません。宅地建物取引士同様、必置資格なのです。
管理業務主任者になるには、宅地建物取引士と同様、管理業務主任者試験という国家試験に合格しなければなりません。合格率は、平成28年度以は、22%でした。ある程度、正確な知識を有してなければ合格できないのです。逆を言うならば、試験に合格できないのは知識が不十分であるということなのです。
管理業務主任者の資格試験に合格できず、仕事をしている方も宅地建物取引士試験に合格できない方同様、知識の正確さが欠いていました。具体的には、区分所有法等の法律知識、管理規約の条文の理解、大規模修繕の概要など知識の不十分さが顕著でした。一番記憶に残っているのは、管理組合に対し総会を開催せずに書面決議を提案し、過半数の賛成で可決したと管理組合に報告し決議内容を執行したことでした。この無資格者の方は、書面決議は、全員の賛成が必要だという認識がないのです。次に思い出すことが、「管理規約は理事会の決議で変更できます。」と理事会に堂々と説明している無資格者の管理会社社員の発言です。管理規約変更は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要だという認識がないのです。目を疑うような驚くべき事実です。
マンション管理会社に勤務するならば、取得した方がよい国家資格がマンション管理士です。マンション管理士は、専門知識をもって管理組合の運営、大規模修繕等を含む建物構造上の技術的問題、その他マンションの維持・管理に関して、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者などの相談に応じ、適切な助言や指導、援助等のコンサルティング業務を行う、マンション管理のスペシャリストとして、主に管理組合の立場でマンション管理に関する様々な問題の解決をサポートする資格者なのです。
マンション管理士になるには、既に述べた「宅地建物取引士」「管理業務主任者」と同様、マンション管理士試験という国家試験に合格しなければなりません。合格率は、平成28年度は、8%と「宅地建物取引士」「管理業務主任者」試験の合格率と比べ物にならないくらいの難関試験です。
管理業務主任者、マンション管理士共にマンション管理に関する国家試験ですが、出題内容が、管理業務主任者試験が「基礎問題」に対してマンション管理士試験は「応用問題」という感じです。
ただ、マンション管理士は、「名称独占資格」といって、マンション管理士という名称を名乗って業務を行うことができるにすぎず、無資格者であっても、業務を行うことが可能なのです。つまり、「マンション管理に詳しい人」「マンション管理に携わってこの道〇年」と語り、「マンション管理士」という名称さえ名乗らなければ業務を行う事ができるのです。
しかし、「マンション管理に詳しい人」「マンション管理に携わってこの道〇年」と語り、マンション管理に関する相談等の業務を行っている方は、十中八九「マンション管理士」試験に何回挑戦しても合格できない方が多いようです。合格できないということは、マンション管理のスペシャリストと呼ばれるに相応しい知識の正確さが欠けていて、必要な知識が不十分なのです。
具体例として、「マンション管理に携わってこの道〇年」という方が、あるセミナーで「管理不全マンションは、管理組合が存在しない。」と発言していました。この発言は、不適切で、二人以上の区分所有者が存在した段階で管理組合は区分所有法により強制的に設立されるのです。だから、「管理組合が存在しない」という発言により、区分所有法を正しく理解できていないことが露呈した事案でした。この場合「管理不全マンションは管理組合が機能しない。」という発言が適切な言葉と思われます。
知識不十分かつ、知識の正確さがない「マンション管理に携わってこの道〇年」の方は、様々なマンションの相談を受けているようですが、相談に行かれた管理組合は、この方の提案、回答により損害等を被っていないか気になります。
マンション管理士であれば、提案等によって管理組合に損害を与えた場合には、賠償義務を負いますが、「マンション管理に携わってこの道〇年」の方は、与えた損害の賠償責任について認識しているのか疑問を抱きます。また、日管連所属のマンション管理士であれば、損害を与えた場合の賠償に備えて賠償保険に加入しますが、「マンション管理に携わってこの道〇年」の方は、不測の事態に備えた賠償保険に加入しているのだろうか不安に思います。
有資格者と無資格者の違いを以下のようにまとめてみました。
①無資格者は、業務に対する知識が不十分であり、正確さに欠ける。
②有資格者は、自分自身の発する言葉に責任を持っている。
③有資格者は、向上心を持ち、常に学習している。そしてお客様を不幸にしないように細心の注意を払い努力している。
④無資格者で経験値を自画自賛する方は、学習しない方が多い。さらに、お客様に不測の事態が生じ不幸な思いをしないかどうか気に欠けない方も多い。
以上、マンション管理業界が正常化し、さらに浄化していけばいいと思います。最終的には、マンションにお住みの方が、快適なマンションライフを謳歌し続けられるようになればいいと思います。

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