住宅ローン業界におけるジェンダー不平等
住宅ローンの審査で厳しく見られる恐れがある「現金決済主義」
「住宅ローンの審査に通らない。でもその理由が分からない。」
時々このような相談を請けますが、その原因のうち意外な事例を紹介します。
審査に通らない意外な理由、それは「現金決済主義」です。
これまでにクレジットカードを1枚も作ったことがなく、何かの支払いの際は必ず現金で支払い、それに加えてマイカー購入などでも一切ローンを取組んだことがないケースをいいます。
金融業界では、クレジットヒストリーが全くないことからそれを「スーパーホワイト」と呼ぶこともあります。
ただし最近はスマホ本体代金を分割払いにしているケースが多いため、スーパーホワイトは少なくなりました。
しかし住宅ローンの審査をする金融機関には、スマホ本体代の情報だけだとスーパーホワイト同様とみなすところも多いのです。
なぜ現金決済主義だと住宅ローンの審査が厳しくなるのか
結論から言うと「クレジットヒストリーが全くないので、お金の貸し借りでの信用度が分からない」からです。
クレジットヒストリーとはクレジットカードやローンの利用履歴のことです。
欧米ではかなり前からクレジットカードが浸透していて、ローン業界においてはそれが個人の信用力のポイントとなっています。
英語で言うcredit(クレジット) = 信用なのです。
近年のキャッシュレス社会では、電子マネーのほかクレジットカードでの支払いも増えています。
数年前からマクドナルドなどのファストフード店でもクレジットカードや決済アプリが利用出来るようになりましたが、少し前までは少額の支払いだと現金が主流でした。
なおコンビニでは、現金を全く扱わない店舗が試験的に導入されています。
ネット通販は多くがカード決済です。
このように近年は日本も欧米のようなカード社会・キャッシュレス社会になっているのです。
よってこれまでにクレジットカードを利用したことがなく、マイカーなど何を買うにしても現金決済主義の人にはクレジットヒストリーがないため、お金を貸すことに対する信用度を低く見られる傾向が強くなりました。
また、過去に何らかの金融事故(自己破産、債務整理など)があり、クレジットカードを作ったりローンを取り組むことが出来ない状況が長年続くと、その人の個人信用情報がスーパーホワイトになるケースもあります。
お金を貸す金融機関から見れば、完全に現金決済主義なのか過去に金融トラブルがあったのかが分からないのです。
また現金決済主義だとすれば、いざローンを取り組んだら毎回期日にきちんと返済してくれるのかが分からないのです。
住宅ローンの審査の際、金融機関は以下の3社に登録されている個人信用情報を必ず調査します。
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
・(株)シー・アイ・シー(CIC)
・(株)日本信用情報機構(JICC)
そのうち(株)シー・アイ・シー(CIC)では、金融機関との契約別のクレジットヒストリーがこのように情報登録されています。
金融機関によって契約時期、極度額、請求額、入金額(支払い額)などのほか、入金状況(返済実績)も月毎に記録されているのです。
このサンプル画像では、日頃からクレジットカードを利用しているが毎月の入金(支払い)は全く遅れていない、ということが分かります。
そしてこのカードはすでに解約されていて、今は使われていないことも分かります。
「いつもニコニコ現金払い」
かなり昔ですが、こんな言葉がありました。
日本では長年、現金決済主義や無借金主義がよいものとされてきました。
しかし今は住宅ローンの審査スタンスにしても、時代の風潮が明らかに変わっていると言えるでしょう。