アーコール製オールパーパスチェアのぐらつき修理をしました。
「この椅子を見てください。永く使い続けたいのですが・・・。」
愛媛県今治市・K様からお問い合わせをいただきました。
K様の椅子は、秋田木工製202Bスタッキングスツールでした。
この椅子は、伝説の工業デザイナー剣持勇が設計した1958年から半世紀以上作り続けられているロングライフの品です。
私も大好きな椅子で、1脚買いそろえているしている椅子なんです。
約30年前に発行された秋田木工様のカタログより202Bスタッキングスツールを紹介いたします。
修理作業前/愛媛県今治市・K様が椅子をご持参くださいました。
写真奥が30年以上もの間、使い続けてこられた秋田木工様の202Bスタッキングスツールです。
写真手前が、秋田木工様から供給してもらった新しい座面です。
半世紀以上も作り続けられているのに、座面の基本サイズや構造が変わってないことに感心します。
これは、将来起こりうる座面の交換などのメンテナンスを考えてのことと想像できます。
修理作業中①/座面の取り外し~取り付け作業
「座面の取り替えなんてカンタン・・・!?」と思っている方が多いと思います。
「でも、この椅子の座面の取り替えはコツがあり、私には難度が高いです・・・。」
この椅子の座面の取り換えには、昔ながらのナット回しと+ドライバーの共用が必要なんです。
新しい座面のウラ側と取り付け用のネジです。
最初にオスネジを取り付け用の穴にセットします。
次のネジ締め作業にコツがあり、私には難度が高い作業です。
“ テコの要領 " を使い、+ドライバーでネジの頭を動かないように固定しながら、ナット回しで締めつけていくのです。
私は不器用なため、ネジ締め8か所の作業に約1時間もの時間を要しました。
修理作業中②/フレーム全体の調整作業
TOKI家具館メンテナンスの椅子の修理作業は、どんな椅子でも最後に必ずフレーム全体の水平バランス調整をはじめとする基本メンテナンスや掃除を欠かしません。
愛媛県今治市・K様のスタッキングスツールも水平盤(ガラスの厚盤)に乗せてみますとすこし「ギッコン、バッタン」してましたので、脚先を少し切り取り調整いたしました。
この基本メンテナンスの有無で、椅子全体の長持ち度合や毎日の使い心地がかなり違ってくると思います。
修理作業後/202Bスタッキングスツールがよみがえりました。
どうですか? 秋田木工様の202Bスタッキングスツール!
半世紀以上も前から作られているような椅子には見えないと思います。
新しい座面に張り込んだグリーンレザーと、フレームのウォールナットカラーのバランスが、とってもきれいです。
愛媛県今治市・K様、ご依頼いただきありがとうございました。
TOKI家具館メンテナンスが家具修理で大切にしていること
それは、取引先家具メーカー様、資材メーカー様・問屋様との「人と人との親密な関係性」です。
今回のK様の座面も張り替えることも可能ではありました・・・。
しかし、座面ベースの合板の衰えなどを考慮しますと、合板ごと新しくした方が永く愛用できると判断しました。
この秋田木工製202Bスタッキングスツールの座面ベースの合板は曲面加工させてあり、取り付け部の穴掘りも特殊です。
これは、秋田木工様より座面の部品供給をしていただいた方が、納期的のも金額的にもK様にとって良いと想ったのです。
こんな時に大切なのが、「人と人との親密な関係性」です。
これは、ネット社会がいくら進化しても、私が一番大切だと確信していることです。
下の写真は、私が持っているスツールとK様のスツールを並べたものです。
半世紀以上、愛され使い続けられた椅子って、シンプルで無駄な加飾がない、とってもきれいなスタイルだと想います。
ありがとうございました。土岐泰弘