「24年前に購入したソファーの修理が可能かどうかご連絡しました。」
「土岐さんで、20年前に買った椅子の前脚が抜けたんです!」
「ついでに、座面の布も汚れたので張り替えたいです・・・。」
と、お得意様の新居浜市・K様からお問い合わせをいただきました。
修理作業前/K様からお預かりしました。
K様にお届けさせていただいたのは、当時コスガ様が輸入していた、フランスのロッシュボボア製の1916DCチェアが6脚です。
手前の椅子の前脚は、ほぞ組みが抜けてしまってました。
どんなに良い椅子でも、家具はメンテナンスフリーではありません。人の身体や自動車などと同様に適切なメンテナンスを行うことによって、より永くご愛用いただけると想います。
他の椅子のほぞ組みも抜けかかっていました・・・。
修理作業中①/フレームのぐらつき修理
まず初めに、全ての椅子の座面を取り外し、ぐらつきが出ていた2脚は、愛用のソマックス製T型クランプを使い、フレーム本体と前脚を圧着していきました。
この時、大切なことは、ほぞ穴とほぞ先の古い接着剤をすべて取り除き、きれいな状態にしておくことです。
フレームを傷つけないように、適切な当て木を挟んでおくことは、圧着作業の鉄則です。
この椅子のフレームは、まっすぐの部材が多いため、直材の当て木を挟みました。
修理作業中②/座面の張り替え作業
座面の張り替えといいますと、「表面に張っている布だけを張り替える・・・。」と思っているお客様も多いです。
でも、表面の布だけの張り変えですと、張り栄えもしませんし、6脚すべての張り具合の統一感がでません。そのため、TOKI家具館メンテナンスでは、内部のクッション材もすべて交換いたします。
そのクッション材も基本的に、下に硬めのチップウレタン材(写真・手前)、上の柔らかめのウレタン材(写真・奥)を、ゴム糊で貼り付けて仕上げています。
K様にお選びいただいた張り生地は、サンゲツ様のノルディウォームⅡ(アクアクリーン)の赤色です。北欧調の色合いがとっても上品です。
奥に置いてあるのは、硬めのチップウレタン材と、柔らかめのウレタン材を、貼った座面です。
一層のクッション材で仕上げる会社様が多い中で、二層仕上げを基本としているのは、お尻の底打ち感をなくしたいためなんです。
座り心地も、かなり違ってくるんですよ・・・。
修理作業中③/脚先の剥がれ修理作業
この写真にある脚先の剥がれは、座面を取り付けて、最終調整時のフェルトキーパーの交換時
に気が付きました。
こういった “いも接ぎ” の場合は、湿気や使い方によってこんなになることも仕方がない点です。
こういった剥がれやすいヶ所ですので、十分に接着剤を入れて、ヤマザキ製端金を使い圧着していきました。
修理が行後/K様の椅子が完成しました。
最後に、椅子全体の水平バランス調整や新しいフェルトキーパーの取り付け、掃除をして完成しました。
ハイバックのこのダイニングチェアは、とっても美しいデザインだと想います。
今回、張り替えたこのアクアクリーンの生地は、サンゲツ様のカタログによると、このような特徴があります。
①水だけで簡単にお手入れができます。
②日常生活のさまざまな汚れに対応できます。
③人や環境に配慮した安心・安全な加工。
https://www.sangetsu.co.jp/newproduct/aquaclean/
K様、いつもお世話になり、今回は椅子の修理のご依頼をいただきありがとうございました。
21世紀は、メンテナンスの時代
1997年~2002年ごろ、私は新居浜商工会議所に頻繁に出入りしていました。
その中で、よく参加していたのが、毎年の新年互例会です。
当時の藤田会頭様(東予信用金庫理事長)が、よくおっしゃっていたのが、
「21世紀は、メンテナンスの時代になる・・・。」
という言葉でした。
続いて、藤田会頭様は・・・
「新居浜市は、鉄工業が盛んな街・・・。」
「20世紀は、大量生産・大量販売・大量廃棄していたけれど、21世紀になってこんなことが続くはずがない・・・。」
「新居浜市は、四国の中心部に位置するため、鉄工業における、四国のメンテナンスシティを目指すべき・・・。」
これは、私の記憶ですので、多少違っている可能性もありますが、私は、このように理解しました。
そして、家具や木工の業界でも、同様に「メンテナンスの時代が来るかも・・・?」と想い活動してきて、今の仕事に繋がっています。
そのため、永年使ってきた屋号 “TOKI家具館” に、メンテナンスの文字を足して、新屋号を “TOKI家具館メンテナンス” とさせていただきました。
約20年前の新居浜商工会議所藤田会頭様の言葉が無かったら、今のTOKI家具館メンテナンスは無いと、深く感謝しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。土岐泰弘