課税庁の更正処分が出来る期限が過ぎた贈与を巡る争い <浦安・市川の中小企業支援コラム>

和泉俊郎

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テーマ:税務訴訟

令和8年度税制改正要望が各省庁、業界団体等から続々と上がっていますが、未だ詳細が見えない中、今回は、課税庁の更正処分が出来る期限が過ぎた贈与を巡る争いに関し、本年1月に東京地裁が下した判決を、以下にて取り上げたいと思います。

事案の骨子

 相続人は平成21年7月に被相続人の土地の上に建物を建てるために建設工事契約を締結し、同年中に借地権設定契約も締結した。当該地域では借地権設定に伴い権利金等の一時金を収受する取引慣行があるが、相続人は被相続人にその一時金を支払わなかった。同年11月に相続人は被相続人から610万円の現金贈与を受け、翌年相続時精算課税制度を選択し、25百万円の非課税枠を使い、贈与税額¥0で贈与税の申告をしたが、一方、同年の借地権については申告をせず、令和になって、相続が開始したが、借地権については税務署から10年以上も申告漏れの指摘が無かったことから、課税庁の更正処分が出来る期限(除斥期間は原則6年、仮装隠蔽があった場合でも7年)を徒過している為申告をしなかったが、税務署は借地権の権利金4,800万円が申告漏れとして課税処分を行った。

判決の内容

 相続時精算課税制度において加算される財産の範囲は相続税法上「相続時精算課税選択届出書の提出に係る財産の贈与を受けた年以後の年に特定贈与者(相続時の被相続人)から贈与により取得した財産」と規定されているのみで、これを超えて、「納税者の申告や税務署長の更正・決定等により贈与税の課税価格に算入されたもの」とは規定していない。従って、納税者側の主張は採用できないとの判決を下した。

暦年課税に与える影響

 納税者側は控訴し、未確定ではあるが、暦年課税においても令和6年1月1日以後、贈与により取得した財産については、令和13年以降発生の相続よりその加算対象期間が相続開始前7年以内となることから、除斥期間(6~7年間)との関係で、同様な争いが生じる可能性がある為、今後の高裁・最高裁の判決が注目される。ちなみに、大昭和製紙事件として高名な「32億円の無申告の贈与」について、除斥期間を理由に、平成17年静岡地裁は「納税者は贈与税も相続税も課税されない」との判決を下した。




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