非上場株式評価を巡る相続税課税で国税敗訴!  <浦安市川の中小企業支援コラム>

和泉俊郎

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テーマ:税務訴訟

政治家は27日の衆議院議員総選挙に向けひた走り、税制改正論議は暫く中断であり、今回は、8月28日、相続税の課税を巡り、初めて、「伝家の宝刀」を使った国税側の敗訴が確定した事件を以下にて、取り上げたいと思います。

仙台薬局事件の概要

東北地方で薬局経営などを手掛ける非上場企業の代表取締役の死去に伴い相続した株式の評価を巡る争い。生前、代表者は同社株を他社に売却しようとみずほ銀行をアドバイザーとして価格も算定し、売却予定価格は総額約63億円(1株10万5,068円)であったが、契約締結前に死去した。相続人側は国税当局が通達で定めている通常の算定ルールにのっとって1株8,186円と評価し相続税の申告をしたが、国税当局は相続後1月程の後に生前の売却予定価額と同額の1株10万5,068円で実際に売却が行われた事実もあり、「評価額が低すぎる」と判断し、伝家の宝刀たる総則6項(通常の算定ルールでの評価が「著しく不適当」と認められる場合に、国税当局が評価をし直すことができるとする特別規定)を適用し、専門会社に時価算定を依頼して1株8万373円が妥当だと結論付け、追徴税額約4億円を課税した。相続人側はこの処分を違法だとして2021年に東京地裁に提訴し、納税者側が勝訴。続く東京高裁でも勝訴し、国税側が最高裁への上告を断念したため、納税者勝訴が確定した。

争点

いわゆる「マンション節税」を巡って国税当局が総則6項を適用し最高裁まで争い、国税側が勝訴した2022年4月の最高裁判決の判示を本事案に当て嵌めた場合、総則6項の適用が正しかったのかどうか。即ち、通達による評価額と時価との間に大きな乖離があることのみを以て、総則6項を適用することは出来ず、その大きな乖離を納税者側が作り出し、他の納税者との課税の公平に反する事情があったのかどうかが争点となった。

判決内容

本件においては、2022年4月の最高裁判決の事案とは異なり、本件被相続人及び相続人らが相続税その他の租税回避の目的で株式の売却を行った或いは行おうとしたとは認められない。2022年4月の最高裁判決の事案のように相続税を軽減するために生前に多額の借金をした上であらかじめ不動産を購入して相続税の回避行為をしているような場合でない限り、総則6項を適用して評価通達の定める評価額を否認することは出来ない。



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