コモディティ市場に風穴を開ける先駆者たち!  <浦安・市川の中小企業支援コラム>

和泉俊郎

和泉俊郎

テーマ:ビジネスモデル

日本一の刃物の町・岐阜県関市での創業から114年、多くの戦国武将を魅了した「関の孫六」、その名匠の技と心を受け継ぐ老舗・貝印(株)の4代目遠藤社長と鈴木CMOが、更なる持続可能な経営へ向けた構想を語る。戦略経営者12月号より、以下要約抜粋して紹介。

ものづくりは機械と人の手でおこなうハイブリッド

我々のものづくりは、機械と人の手でおこなうハイブリッドです。しかし、私たちは『切れ味』の『味』の部分を大切にしたい。この部分はまだまだ人の手に頼っており、機械での再現は難しいのが実情です。とはいえ、それでは持続可能とは言えません。そこでDX、AI、IoTを柔軟に活用し、良い切れ味の“音”をセンサーで可視化してデータ化するなどといった取り組みに生かしていきたいと考えています。

誕生の裏にストーリーを持つ製品を作る

貝印がものづくりで追求するのは機能性だけではありません。製品開発の基本方針としているのが「DUPS」。デザイン、ユニーク、パテント、セイフティ&ストーリーの略で、機能美といわれるようなデザイン性に優れ、他に類を見ない独創性があり、会社の知財となり特許といった権利で守られるような確かな製品。さらに安全にお使いいただけて、誕生の裏にストーリーを持つ製品をつくっていきたいという願いを込めたキーワードです。

『カミソリの存在価値とは』といった根本から洗い出す!

その「DUPS」に適った製品のひとつに、発表前から注目を浴びた「紙カミソリ」があります。当社の「伝統あるカミソリでイノベーションを起こしたい」という声は社員からあがったものです。
『カミソリの存在価値とは』といった根本から洗い出しました。衛生面が担保され、切れ味も損なわれないカミソリを求めるならば、毎日交換できるものが望ましい。しかしプラスチック製では環境に負荷がかかる 。そんなやり取りを交わす中でたどりついたのが「環境負荷を考慮した紙をホルダーに使ってはどうだろう」というアイデアでした。「紙で強靭性は保たれるのか」といった反対意見もありましたが、新しいものを生み出すときに向けられる懐疑的な視点は、開発の気付きにもなります。結果、わずかな樹脂を残すだけで98%の脱プラスチックを実現。さらに5色展開で、男女問わずに使えるといったジェンダーフリーのメッセージも込めました。

試作モデルの再制作を何度も反復する「プロトタイピング」手法

紙カミソリを開発した鈴木CMOはマーケター・オブ・ザ・イヤー2021に選ばれましたが、DUPSを念頭に置き、アイデアをいち早く試作品に落とし込み、使い勝手を検証し、試作モデルの再制作を何度も反復する「プロトタイピング」という手法を重視しています。

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