先代の借金40億円を完済した男！ ＜浦安市川の中小企業支援コラム＞

父の急逝により選択の余地なく引き継いだ会社は、売上高20億円に対し借入金40億円、債務超過25億円の実質破綻会社。これを16年掛けて再生した（株）湯佐和の湯澤社長が語る「折れない心の工夫」を日経トップリーダーが連載しています。以下要約抜粋して紹介させて頂きます。

精神的に追い詰められると被害者意識が芽生える

人間とは弱い生き物です。精神的に追い詰められると、「何故自分ばかりこんなに不幸なのか」と被害者意識が芽生えます。正に私がそうでした。財務破綻だけでなく、組織面でも大きな問題がありました。引き継いだときは、海鮮居酒屋等の店舗が33あったにも係わらず店長は2人だけ。管理者がいない店舗では従業員はやりたい放題でした。調べて見ると、父が急逝する数年前、優秀な営業部長が部下を引き連れて独立店舗を立ち上げ今も拡大中だと分かりました。資金繰りで苦しい中、この事実を知って理性を失い、些細なことで社員や妻に八つ当たりしました。そして、何人かの心ある社員が辞めていきました。会社経営は人を信頼することなくしては成り立ちません。ところが、被害者意識が強くなると、周囲の人が加害者に見えて来る。孤独に耐えながら向き合う不安は凄まじい勢いで膨張し、認知の歪みを生じ、物事を客観視出来なくなるのです。

不安に支配された異常な心理状態から抜け出すには？

では、不安に支配された異常な心理状態から抜け出すにはどうしたら良いか。とにかくまず、不安を外に吐き出すことです。出来るだけ誰か相手を見付けて話すことが肝心です。話し相手がいなければ、独り言でも良いのです。「今日、俺はどうも朝からいらいらしているな」等と自分の気持ちを外に出して見て下さい。そうすると客観視でき、原因を理性的に考えられるようになります。もう一つ効果的な方法があります。それは、自分が恐れていた不安が的中したときに起こることを考え、紙に書き出すこと。私の場合、自社が破綻した際、自分や社員、家族の身に何が起きて、自分が何をしなければならないかをノートに手書きし、必要な手続きや費用等含め列挙し「破産計画」を作りました。すると、40億円の借金があるという現実は何も変わらないにも係わらず、不安が大きく減りました。

大きな課題に挫けそうになったら、目の前の小さな課題に集中する

然し、借金40億円という現実を真正面から受け止めると、心が折れそうになって、苦悩は続きました。試行錯誤の末に手応えを感じたのは、40億円の借金を完済するという結果にフォーカスするのを止めること。その代わり、日々出来ることに全力を尽くすということでした。具体的には、「今後5年間だけは、どんなに厳しい状況に陥っても、借入金完済を目指して粘り通す」。逆に言えば、5年頑張って駄目なら、諦めて倒産しても仕方ない、こう大きく割り切ったのです。大きな課題に挫けそうになったら、目の前の小さな課題に集中する。外部環境の厳しさや、自分自身の精神的弱さに振り回されないようにする上で、有益な心得だと思います。

店舗の雰囲気を良くできるような人を育てる！

再建については、まず無駄の削減から手を付けました。父の代は放任経営でしたから至るところに無駄があり、目に見えて削減効果が出るので、非常にやりがいがありました。 そして、父が残してくれた店舗は実は立地がすごく良かったのです。管理が行き届かないから利益が出ていなかったので、身の丈に合わせて店舗数を縮小し、顧客のターゲットを決めて、やることをきちんとやっていれば、結果が出易かった。それと人、人材教育です。利益ベースでいけば2倍とか変わってきます。その人がスーパーマンとして活躍するというよりも、チームワークを作れる、店舗の雰囲気を良くできるような人が行くと、ひとりの力だけじゃなくて店舗全体の力が変わってくるので、その時の成果の出方というのはちょっと驚くべきような状態になりますね。


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