「寿陵」・「寿陵墓」とは

佐々木博一

佐々木博一

「寿陵」または「寿陵墓」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

結論からいうと、生前に建てられたお墓のことを、「寿陵」または「寿陵墓」といわれています(別に生前墓といわれることもあります)。

「寿」という漢字が入っていることから、どことなくおめでたい響きを感じますね。
寿陵という言葉を聞いたことはあっても、詳しくは知らないという方のほうが多いかもしれません。
そこで今回は、「寿陵」「寿陵墓」についてお話ししたいと思います。

寿陵は、秦の始皇帝が生前にお墓を建てたことが始まりといわれています。
始皇帝のお墓を始皇陵といい、寿陵という言葉の起源とされてきました。寿陵の「陵」はみささぎと読み、皇帝の墓という意味を持つようです。

日本では、飛鳥時代に聖徳太子が寿陵を建てたことでも有名です。
また、天皇のお墓も「天皇陵」と呼ばれています。

寿陵は生前墓という呼び方が示す通り、ご自身が亡くなった後に遺された家族が建てるお墓と違い、自分で自分のために生前に建てるお墓のことを指します。

生前にお墓を用意し、「長寿」「子孫繁栄」「家庭円満」を授かる寿陵は非常に縁起の良いこととされ、仏教では非常に徳の高いこととされ、幸福を招くと考えられてきました。

以前、(私が墓石店に勤めていた頃・・・20年以上前)お墓を建てたいとお店に来られた方がいらっしゃいました。その方は仏様もなく、ご自身のために気に入った墓石を建てておきたいというご希望でした。また、子供達にも将来経済的な負担を掛けたくないということも理由のひとつでした。

ですが、奥様をはじめ身内の方々から、「縁起でも無い」「それで早く亡くなったら・・・」と猛反対を受け、当時は断念したというお客様がいらっしゃいました。当時の私も、寿陵に関する知識が乏しく、寿陵について紹介することすら出来なかったことを覚えています。

話を戻しますが、縁起のいいこととされる寿陵ですが、縁起だけではありません。
実際にお墓を建てるうえでのメリットもあるように思います。

生前の元気なうちに自分自身のお墓を建てるため、色や形などをご自身の好みで選ぶことができます。また、デザインや石種なども自分自身で決められるのは寿陵ならではだと思います。

また、時間をかけてお墓を検討できるため、納得のいくお墓を建てられるのもメリットのひとつではないでしょうか。通常だと、回忌や法要に合わせてなど、建てる時期が定められることが多くあるようです。

墓地に関しても同様で、自分が眠りたい場所を選ぶことができます。

これまでは、お墓を子供など跡継ぎに任せるという方がほとんどのような気がします。
ですが近年では、自分好みのお墓を建てたいというニーズの高まりから、終活の一環として寿陵を選ぶ方も増えてきています。

ご存じの方も多いかもしれませんが、お墓やお仏壇などは祭祀財産といい、遺産相続の際、課税対象外となります。
お墓を建てるための現金や預金を遺している場合、お金だと相続財産となるため、課税の対象となります。
生前にお墓を建てておくことで、その分は課税されないというわけです。
跡継ぎに負担を掛けたくないと思っている場合はメリットといえるでしょう。

もうひとつ、残された家族のことも考えて選ぶことも大切だと思います。

例えば、お墓参りがしやすい場所、日当たりが良い、お手入れがしやすい、などが挙げられます。お墓参りをする方をイメージしながら考えてみることも必要ではないでしょうか。

お墓のデザインの見た目だけではなく、高齢の方でもお墓参りがしやすいようバリアフリーにする、小さい子供が怪我をしないように角は面を取るなど、気を配る必要があります。
そのようなことも専門家としての石材店と相談しながらじっくりと打ち合わせができるのが寿陵のメリットのひとつではないでしょうか。

また、お墓に彫る文字を自分で選ぶことができるのもお墓選びの中でとても重要なポイントといえるでしょう。
従来のように 「○○家之墓」、「南無阿弥陀佛」だけではなく、漢字一文字やメッセージなど、より自由な文字が彫られるようになりました。

「ありがとう」とひらがなで刻まれた洋墓のお墓を見ることがありますが、まったく同じものはほとんどありません。書体や字の配置、大きさの違いなどさまざまな違いがあります。
お墓の文字をみることで、建てられた方の想いが伝わってくるのではないでしょうか。

お墓(墓石)のことを中心にお話ししてきましたが、墓地についても少し触れておきたいと思います。

墓地には公営霊園、民営墓地、境内墓地、みなし墓地といったように、運営管理の方法や管理者の違いなどにより種類があります。墓地の購入を検討する際には、ぜひ、寿陵(生前墓)について確認していただくことをお勧めします。

特に公営霊園(役所や役場が管理している墓地)では、埋葬できる焼骨がなければ墓地の申込ができないといったケースもあります。また、墓地の購入後、○年以内にお墓を建てること、といった条件を定めているところもありますので、確認して進めてください。

一般的にお墓を建てて納骨すると、魂入れ(開眼法要)を行いますが、寿陵の場合はどうなのでしょうか。

結論から言うと、開眼法要が絶対に必要というわけではありません。
ですが、開眼法要を行うことを推奨されています(菩提寺に確認していただくことをお勧めします)。

寿陵についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。

縁起がいいことはもちろん、金銭面や遺された家族への負担、お墓選びに使える時間の長さなど寿陵には様々なメリットがあります。

ですが、寿陵としてお墓を建てる場合でも、自分ひとりのお墓ではなく家族にとってのお墓になります。きちんと家族内で話し合い、納得と理解を得たうえでお墓を建てることをお勧め致します。

お墓総合サポートサービス http://ohakasupport.com/

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

佐々木博一プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

佐々木博一
専門家

佐々木博一(墓石・終活カウンセラー)

お墓総合サポートサービス

「後継者がいない」「遠くて墓参りに行けない」などのお墓関連をはじめ、葬儀、相続、供養etc…。墓石業界で30年のキャリアを持つ終活カウンセラーが悩みに応え、最高の人生のエンディングをともに考えます。

佐々木博一プロは青森放送が厳正なる審査をした登録専門家です

プロのおすすめするコラム

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

葬送・お墓・供養にまつわる悩みを解消する終活のプロ

佐々木博一プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼