亡き父の命日を迎えて

佐々木博一

佐々木博一

4月には、父の命日があります。
プライベートな内容になりますが、父のことを少しお話したいと思います。

父母は、私が小学校入学前に離婚しました。私と妹は母に引き取られ、その後は父と会うことは一度もありませんでした。
父との思い出、父の顔を思い出せることも無く、現在に至っています。

物心ついた頃でしょうか、母方の親戚から父母が離婚した理由などを聞かされたことがありました。
私が生まれた時、私はいわゆる「お坊ちゃま」だったようです。父母は事業をしていて、それなりに事業は上手くいっていたようです。当時、家の金庫には事業資金の現金がおいてあり、お手伝いさんと呼ばれる女性も出入りしていたようでした。

ある日、父は事業資金を持って、お手伝いさんを連れて居なくなってしまったと、親戚からは聞かされました。一方的な話ではありますが、母親が一人で子供二人を育てているのを、目の当たりにしていました。今の時代以上にシングルマザーにとっては、とても厳しい時代だったと思います。そんな母を見ていて、知らず知らずのうちに父を恨むようになっていたのだと思います。

私が三十歳の頃だったと思います。当時の私は、結婚し子宝にも恵まれ、小さいながらも家を持ち、それなりの地位に就き、一般的な幸せな家庭でした。
そんな時、一通の郵便物が届きました。中には父が生活保護の申請をした旨の内容が記載されており、実の子である私に援助はできないか・・・、的な内容でした。

正直私は、どうしようもない怒りと悔しさがこみ上げてきたのを覚えています。顔の記憶すら無く、他人同然の父に何のために・・・。当然のように、私はお断りの返信をして、その後はその件に関しても父の噂を聞くこともありませんでした。

その出来事から、十年ほど経った頃でしょうか、父が亡くなったと風の便りが届きました。どのような葬儀が行われたのか、どこに埋葬されたのかも分かりません。

そんな事があったこともすっかり忘れてしまうほど、月日が流れました。
その間に私は、独立し今の事業をスタートし、終活等の勉強もし、今まで出会うこともなかったような方々と出会うことになりました。

沢山の出会いの中で、ある方との出会いが、父との向き合い方を変えるきっかけになりました。その方は、家系図についてのセミナーや書き方などを教えて下さる方でした。
家系図はただ戸籍をたどって書くだけではなく、先祖があっての自分、自分のルーツを探す旅の様な物が家系図にはあると教えていただきました。
また、先祖の生き様などを感じ取ることで、これからの自分の生き方の参考にもなる、とおっしゃっていただきました。
そんな話を聞き、興味を持ち、私も家系図作成に取り組んでみました。

当然のことながら、家系図を作るには両親の戸籍やら、それ以前の資料を探る必要がありました。母方の方は、母に聞いたり、母方の親戚に聞いたりしながら、割とすんなり五代先までさかのぼることができました。

問題は父方です。父方の親戚とは、ほぼ疎遠状態。かろうじて連絡の取れる叔母が一人居ましたのでまずはその方に連絡を取るところから始めました。

叔母は、訪ねていった私に驚きを隠せませんでした。更に来た理由が父の事だと知った叔母は、余計に驚いていたようでした。父の事が知りたいと話を進めるうちに、叔母は笑顔のまま涙を流しながら、父の若かった頃の話をしてくれました。

私が生まれた時に、とても喜んでいたことだけではなく、離婚したことについても、何度も謝罪の言葉が続きました。その後も、伯父や伯母にも連絡を取ってくれて、疎遠だった父方の親戚の皆さんからも話を聞かせていただく時間を作ることができました。

徐々にですが、父の人物像が見えてきたように思います。父の写った写真を見たとき、母親似だと思っていたけど、自分は父親似なのかな?とも思えるようになりました。
今では、いただいてきた父の写真を飾っています。

父の葬儀の様子、埋葬についても教えていただきました。葬儀は兄弟姉妹だけで質素に営まれたそうで、遺骨は市内の某お寺の無縁墓に葬られたそうです。

後日、そのお寺に足を運んでみました。ところが、無縁墓がありません!
住職に確認したところ、間違いなく父はそこに埋葬されたようでしたが、数年前に移設したとのこと。移設場所は、八戸市営西霊園だということが分かりました。

今では、毎年春と秋のお彼岸、お盆、そして命日にお墓参りに行っています。
恨んでいた時期があったのだろうか?と今では思えるほど、父の存在に感謝している自分がいます。

きっと、我が家のお墓に入ることはなかっただろうと思いますが、こうして手を合わせる場所、埋葬されている場所があることにとても感謝しています。

その場所を知った時には、その無縁墓には供花を供える花立てがなく、小さなゴミ箱のような入れ物にお花が供えてありました。私は市に石で作った花立てを寄贈させていただきました。

今となってはそのくらいのことしか出来ませんが、今の私がいることも、ルーツを知り、ここにたどり着いたことにも奇跡を感じます。

私はお墓の仕事をしていますが、家系図を作り父のことを知ることで、私のしている仕事は、先祖への想いを託す仕事だと、改めて感じることができました。

数日後、父の命日です。
今年もお墓参りに行ってきます。

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