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佐々木博一

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佐々木博一(ささきひろかず) / 墓石・終活カウンセラー

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コラム

「両家墓」という考え方

2024年4月15日

コラムカテゴリ:冠婚葬祭

「両家墓(りょうけぼ・りょうけばか)」という言葉をご存じでしょうか?
知らなくて当然です。今回のコラムを書くに当たって、私が勝手にそう呼ばせていただいているだけですから。それでも、誰かがどこかで、そんな言い方をしているかもしれませんが。

「両家墓」という言葉から、なんとなくイメージできる方も多いのではないでしょうか。
どんなお墓なのか・・・、簡単にいうと、ひとつの墓地区画の中に、○○家のお墓と、△△家のお墓の二基建っているようなお墓、墓地です。

墓地や霊園などを散策していると、たまにこの「両家墓」を見つけることができます。(かなり確率は低いですが)

墓じまいのご相談を受けた際に、「両家墓」についてお話しさせていただくことがありますが、実際にそのようなお墓にし、大変感謝をされたことも少なからずあるんですよ。

墓じまいのご相談を受けると同時に、墓じまい後の遺骨をどうするのか、という話に必ずと言っていいほど行き当たります。一般的には、永代供養、海洋散骨、樹木葬、手元供養といった方法をお伝えすることが多いのですが、ご相談者の家庭の事情やお金の事情、親族やその家系の歴史など、ご相談者の数だけ内容が異なります。

様々な複合的な事情を聞いた上で、アドバイスをさせていただいているわけですが、スッキリと、この方法で行きましょう!ってな訳には簡単にはいかないんですよね。
そこで、様々な事情を伺った上で、別の選択肢として「両家墓」という考え方をお伝えする機会が増えてきました。

墓じまいを考えるときに、弊害となっているのは、身内親族からの声だったり致します。
「お墓参りをする場所が無くなる」「手を合わせる場所がない」「知らない場所へは移してほしくない」など。
そのような声が聞こえてくることで、なかなか前に進まない、という現実もあるようです。

そこで新たにお伝えしているのが「両家墓」です。
これで、すべてが解決するわけではありませんが、身内親族の方々の要望にも多少はお答えすることができるのでは、と思っています。

さてこの「両家墓」ですが、実際にあった例で具体的にお話ししたいと思います。

ご相談者はご夫婦でいらっしゃいました。60代後半のご夫婦でした。それぞれが長男長女でご結婚。旦那様には兄弟が無く、奥様には妹さんがいるが、地元八戸には住んでいない。ご夫婦には息子さんが一人いて、ご結婚され、お孫さんがいるとのこと。息子さん夫婦は一緒に暮らしてはいないが、市内に住んでいる。ご相談者のご両親は共にすでに他界している、とのことでした。

ご相談内容は、奥様の実家の墓じまいについてでした。悩んでおられたのは、墓じまいした後の遺骨をどこに持って行ったらいいのか、ということでした。

実家の菩提寺には、永代供養墓がありませんでした。仮に別のお寺に納めるとなると、費用負担が大きくなるとのこと。海洋散骨は、拒否反応を示していました。手元供養も、家の中に遺骨を置いても、自分たちに何かあったときのことを考えると・・・躊躇されていました。そして、できたら近くに納めたいとの希望もありました。

そこで、「両家墓」という考え方についてご説明させていただきました。
「両家墓」はひとつの墓地の中に、旦那様のご先祖のお墓、○○家のお墓と、奥様の実家のお墓、△△家のお墓の二基を並べて建てる方法です。

共に、八戸出身のため、旦那様の菩提寺(墓地)も近くにありました。手を合わせる場所でもあり、何よりご夫婦が納得された理由として、ご夫婦の息子さんからみたら、父方と母方のご先祖が同じ墓地に眠っている。お参りもしやすく、墓地の管理や費用負担、菩提寺の今後のお付き合いも考えると、利便性も高い、というところでした。

もちろん、奥様の実家のお墓は墓じまいをすることになりますが、そこで使用していた墓石は移設して、納骨堂も作り直すなど、旦那様方のお墓のリフォーム工事をすることになり、それなりの費用もかかることになります。

ですが、ご説明を終えた後、来るときには下を向いていたご夫婦は、しっかり前を向いて、「息子に相談してみます」「親族に話をしてみます」と明るい表情で帰って行かれました。

二ヶ月ほど経った頃でしょうか、旦那様から墓地で会いたいとご連絡をいただきました。
「両家墓」にするに当たって、見積もりを取ってほしいとのご依頼でした。

墓地で一時間以上もお話しされたのを覚えています。息子さんは快諾されたとのこと。奥様の妹さんや親族の方は、即答はしなかったものの、「お世話になります」と一部費用の負担を申し出てくれたとのことでした。それぞれの菩提寺に話をした際にも、それはいい方法だと褒めていただいたということでした

こんなにスムーズに話が進むことはレアケースなのかもしれません。
違う家の者が同じお墓に入ってもいいのだろうか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのかもしれませんが、墓守をしている方が了承していれば何の問題もありません。

「両家墓」という考え方について、伝わりましたでしょうか。

それぞれのご家庭で、様々な諸事情があるわけですから、限られた選択肢の中から最善のご供養を見出すのは容易ではありませんし、後に後悔することもあるかもしれません。
日本人には、墓石に向かって手を合わせるという文化が脈々と受け継がれています。多種多様な方法が生まれてくる中で、できるならお墓を継続させたいと思う方々へ、この「両家墓」という考え方は合っているのかもしれません。

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