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佐々木博一

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佐々木博一(ささきひろかず) / 墓石・終活カウンセラー

お墓総合サポートサービス

コラム

海洋散骨「肩の荷がおりました、やって良かった」

2022年6月15日

コラムカテゴリ:冠婚葬祭

コラムキーワード: 終活 いつからお墓参りお墓

今回のコラムは、私が実際に海洋散骨をさせていただいたお客様からの声と、散骨をさせていただくことになった経緯など、リアルな声と経験をお伝えしたいと思います。

散骨のご依頼者様は40代の男性でした。彼はお遺骨を持参されて事務所にやってきました。散骨されるお遺骨は彼の母親でした。

私は散骨業者ではありますが、故人の遺志、残されたご家族の意思や想いなどを伺いながら、散骨が最善の選択なのかどうか、ご相談も兼ねて話を伺うようにしています。

母親は離婚し、息子である依頼者は父方の性を名乗っていて、母親は一人暮らしをしていた。
最後は老人ホームで暮らしていた。時々母親と会う機会もあったという。
母親には、面倒をみてくれる身内もなく、息子を頼っていたように思えた。

その母親は、三年前に母親の両親の眠るお墓を墓じまいしたそうです。

その時、依頼者の男性は私にこう言いました。
「私がこの事務所に来るのは初めてじゃないんです。実は二回目なんですよ」

「えっ、記憶にない、誰だっけ?」そう思ったのが正直なところです。

一瞬の沈黙がありましたが、瞬間的に記憶が蘇ってきました。

私は彼に尋ねました。
「ひょっとして、三年くらい前に○○県で墓じまいをされて、八戸沖での散骨を依頼されたA子さんの息子さんですか?」

彼は一言だけ「はい。」と答えました。

今、目の前にあるお遺骨は、その当時私に散骨を依頼してくださったA子さんご本人のお遺骨でした。

A子さんは離婚されて、息子さんはいるが、父方の性を名乗っていて、将来息子さんには頼ることはできないし、余計な心配や面倒をかけたくない。私の代で私の先祖のお墓をどうにかしたい。埋葬されている先祖の遺骨は散骨をしたい。
自分の時も散骨をしていただきたいなど、当時A子さんと話した記憶が次々と蘇ってきました。打合せはご自宅でしたが、集金は引越し先の老人ホームだったのを思い出しました。

A子さんは、老人ホームに入居されて約半年後にご逝去されたとのことでした。

A子さんは生前に散骨を希望されていたこと、遺族の方々もその希望に異論がなかったとのことで、話し合いの結果、散骨をすることに決まり散骨の依頼をしに来たとのことでした。

その日のうちに日程等も決まり、散骨当日を迎えました。

乗船して散骨に参加されたのは、ご依頼者様とその奥様のふたりでした。
奥様とはその時初めてお会いしました。船に乗ってからも、気さくに話しかけてくれて仏事やご供養に関する質問など、会話をしながら船は沖へ向かっていきました。

旦那様が風にあたりたいと甲板に出ると、奥様が突然質問されてきました。
「お義母さんは、どうして散骨を希望したのか、生前に何か聞いてましたか?」と尋ねられました。当時(三年前)のことはできるだけ正確にお伝えしましたが、何故散骨を希望したのか、という答えにはなりませんでした。

その過去のいきさつで、お互いに想像をするしかありませんでした。

その時奥様がこう話を切り出しました。
「業者さんを目の前にして、こんなことを言うのは失礼だと思うんだけど、私は散骨反対なんです。今この船に乗っていても、やりたくないと思ってます。」

そしてこう続きます。
「なんでお義母さんは散骨を希望したのか?故人の遺志かもしれないけど家族はなんですんなり了承したのか?私には理解できないんです。」

私はそこに理解を求めようとはしませんでしたが、それ以上深く話をすることはしませんでした。

A子さんがお亡くなりになって、3カ月ほど前に三回忌をされたと聞いています。
散骨が決まるまでの期間、A子さんのお遺骨は自宅に置いていたそうです。
散骨にするべきか、それ以外の方法を取るべきか、検討し悩み続けた期間でもあるように思います。

そして、散骨のポイントに到着しました。
お二人を甲板に促し、汽笛を鳴らし、海に向かって合掌。
粉骨したお遺骨を海に撒き、おくり花を海に撒いて合掌。

合掌を解かれた時、海面に浮かぶお花を見ながら、奥様が「おかあさ~ん、おかあさ~ん」と二度大きな声で呼びかけている姿が今でも印象に残っています。
胸が熱くなるのを感じました。

散骨も終わり、船内に戻り、帰航途中に奥様が話しかけてくれました。
「散骨って素晴らしい。お義母さんが散骨を希望した理由が分かったような気がします。うまく言葉にできないけど、あらためてお義母さんに感謝を伝えられました。」
「この船に乗って良かった、(散骨を)やって良かった。」
と、笑顔で語ってくれました。

その隣で、旦那様も優しく微笑みながら、
「本当に散骨して良かったと思います。ありがとうございます。」とおっしゃっていただきました。

船を下り、おふたりを車までお見送りに行った時には旦那様がポツリと、
「やっと肩の荷がおりました。」

奥様は、
「散骨って素晴らしい、他の人にも宣伝しますね。」

おふたりから深々と挨拶をされ散骨は無事に終了しました。

散骨の良し悪しや、是非について語るつもりはありません。
宗教的な考え方やその地域の風土や慣習文化によって、違いがあると思いますし、法律的なルールが確立されているわけでもありません。

実際に現実問題として少子高齢化に伴いお墓の継承、今後の遺骨の対応に苦慮している方々が多くいらっしゃいます。この先苦慮される方々はもっと増えるのではないかとも思われます。

散骨をされたご遺族の方が、すべてこのご夫婦のようなお気持ちや感想をもたれるとは思いませんが、実の母親、義理の母親を偲び感謝の想いでその瞬間を過ごされることができたのなら、最高のご供養になったのではないかと思います。

ご供養をするということの本当の意味とは、こういうことなのではないのかなと、あらためて気づかされることになりました。

故人は遺族のことを最後まで心配してくれています。
ご供養の方法は多様化してきていますが、どの方法で行うかではなく、故人のことを想い、感謝し、故人の名前を口にしながら身内が集える方法が最適なのかもしれませんね。

きっと今回のご夫婦にとっては、それが散骨だったように思います。

家族の形も環境も様々です。故人、遺族のためにも、それぞれの家族の事情にあったご供養を見つけてみて下さいね。

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