「お葬式」言葉の定義と意味

佐々木博一

佐々木博一

最近は、お葬式の様子もだいぶ変わってきましたね。

お葬式を含めたその前後の儀式なども短縮、簡略化されてきたように思います。もっとも、感染症が大きな要因なのだとは思いますが、それでも現代社会の家族構成や、仕事のあり方などもお葬式の変化の要因としては大きな一因になっていると思います。

さて、そのお葬式ですが、お葬式という言葉の定義や、お葬式を行う意味について考えたことはありますでしょうか。

ここでは、歴史的に見た埋葬や儀式の様式などではなく、現代における本来のお葬式の言葉の定義とお葬式を行う意味についてお話を進めていきたいと思います。

それではまず、「お葬式」の言葉の定義についてです。
先に答えを言ってしまうと、「お葬式」=「葬送儀礼」+「告別式」のことなのです。

最近はコロナ禍の中、少人数での家族葬や、時間を区切って一般会葬を行うようなスタイルで行うお葬式が増えきていますが、コロナ禍前のお葬式を思い出し想像してみて下さい。
(地域によって、様式が異なることもありますが、ご容赦ください。)

知人のお葬式に、一般会葬者として参列したと想像してみて下さい。
受付をして、お葬式会場に入ると、親族席と一般会葬者席があり、一般会葬者席に座ります。
前方には、祭壇が飾ってあり、近くには身内の方が座っています。
開式の時間になると、導師(和尚様)が入場してお葬式はスタートします。

※座席の位置などは会場・式場(ホール、お寺の本堂、自宅など)によって、違いはあると思いますが、一般的なホールでの座席でお話を進めていきます。

この時、そこでは導師が祭壇に向かいお経を唱え、身内の方がいらっしゃいます。導師を含め導師から前方で今まさに行われている儀式が「葬送儀礼」です
「葬送儀礼」とはいわゆる宗教的儀礼なのです。

葬儀が進み、一般会葬者の方々の焼香が行われます。この焼香の時こそが故人との最期のお別れの時となります。つまりは「告別式」お別れの会のような意味があります。

このように、時を同じくして同じ場所で同時に行われる「葬送儀礼」+「告別式」=「お葬式」となるわけです。

著名な方がお亡くなりになると、報道では「葬儀は近親者で~後日告別式を~」という言い方をよく耳にします。つまり、「葬送儀礼」は近親者で行い、後日「告別式」を執り行います、というように、「お葬式」という言葉ではなく、「葬送儀礼」と「告別式」を使い分けていることに気づきます。

それでは、お葬式の意味について考えてみたいと思います。
お葬式が持っている意味には、四つの意味があると思います。
①故人の供養
②遺族の心のケア
③ご遺体の対応
④故人の死を社会的に知らせる

まずは、
①故人の供養 から解説していきます。
そもそも供養とは、死者の霊にお供え物をしたり、死者の冥福をお祈りすることです。
その供養をするということを最初に形として表したものがお葬式になります。

②遺族の心のケア についてです。
愛する身内の「死」というものはなかなか簡単には受け入れ難いものではないでしょうか。癒されるのには時間がかかることではありますが、現実を受け止めるための儀式としての役割は非常に大きいものではないかと思います。故人への感謝と共に、残された遺族のこれからの出発点になるのもお葬式の意味にはあるのです。

③ご遺体の対応 については、
お葬式そのものの意味というよりは、その前後のご遺体への対応が重要になります。お亡くなりになる方が全て病院のベッドの上とは限りません。事故であったり、孤独死であったり。どのような状況であっても、ご遺体には敬意を表して向き合うことが大切です。
映画の「おくりびと」であったように、故人のご遺体の対応をきちんとしてあげることも、ご供養なのではないかと思います。

最後に、
④故人の死を社会的に知らせる ことです。
知らせる方法はいくつかありますが、どの方法でどのタイミングで知らせるかは、故人とのお付き合いの度合いや関係性もあると思います。
お付き合いが深ければ深いほど、長ければ長いほど、知らせる必要性は高くなっていくと思います。知らせなかったこと、逆に知らなかったことで、今後のお付き合いに影響がでてくる場合もあるようです。
故人がお世話になった方や、故人を慕っている方もいるはずです。生前の感謝の意味も込めてお知らせすることは故人のためにも欠かせないことだと思います。

今では、エンディングノートをはじめ、故人の友人や知人などを遺族に伝える方法は多様にありますので、ぜひそういったものも活用していただきたいと思います。

今回は「お葬式」の言葉の定義と意味についてあらためて解説させていただきました。
当たり前、当然の内容だとは思いますが、愛する身内の「死」は突然おとずれることもあります。喪主ともなれば、短時間で色々なことを決断し、バタバタとした時間を過ごすことになるでしょう。

ひょっとすると、お葬式の意味どころか悲しんでいる暇もないまま、お葬式の当日を迎えることになる方も少なくないのではないでしょうか。

だからこそ、喪主に寄り添ってお葬式のお手伝いをすることになった親族や友人たちが、お葬式の意味を踏まえて、喪主に寄り添ってあげることができたなら、本当にいいお葬式になるのではないでしょうか。

今回の内容がお葬式のあり方を考えるきっかけになれば幸いです。

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