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佐々木博一

葬送・お墓・供養にまつわる悩みを解消する終活のプロ

佐々木博一(ささきひろかず) / 墓石・終活カウンセラー

お墓総合サポートサービス

コラム

「墓じまい」相談実例 ~母娘の想い~

2021年11月15日

コラムカテゴリ:冠婚葬祭

コラムキーワード: 終活 いつからお墓お墓参り

私は、お墓のことやご供養のこと、また終活のことなど、セミナーや相談会などの機会を与えていただくことがよくあります。
今回はそのご相談の中から、特に印象に残った実例をご紹介したいと思います。
印象に残るくらいですから、かなりレアな珍しい実例になると思います。

もう四年くらい前ことだったと記憶しています。
ある団体から墓じまいに関するセミナーの講師に呼んでいただきました。
その時の参加者のおひとりが、今回のご相談者になります。

ここでは、ご相談者様のことをAさんと呼ばせていただき話を進めたいと思います。

セミナーが終了した後に、Aさんが駆け寄ってきて名刺をせがまれましたので、ご挨拶して名刺をお渡ししました。その日はAさんとはそれだけでした。
Aさんは70代の女性の方で、旦那様とお二人でセミナーに来られていたそうです。

5月の中頃だったでしょうか。セミナー終了から10日~2週間ほど経ったころAさんから直接お電話をいただきました。
お電話で相談をさせてほしいとのことだったので、そのまま相談の対応をすることにしました。

相談の内容は、端的に言うと、墓じまいについてと永代供養についてのふたつでした。
墓じまいについては、費用や手順、その後の菩提寺との関係などについてのご質問でした。永代供養については、これもやはり費用面と、どこのお寺で永代供養をしていただけるのか、などの内容でした。

Aさんのお知りになりたい情報はまずお伝えさせていただきました。
Aさんは、少し気が楽になったのか、ご自身のことや旦那様のこと、墓じまいをしなければ、という結論に至ったこと、今後は永代供養をしてもらうという決断をしたことの経緯など、お話していただきました。

特に強調していたことは、墓じまいであれ永代供養であれ、あまりお金をかけられないということ。そして、県外に嫁に出した一人娘がいるそうなのだが、その娘さんに費用や今後の供養について、面倒や負担をかけたくないということでした。

その当時のAさんの家庭環境は、Aさんと旦那様のお二人暮らし。一人娘はいるが、県外に嫁に出して、お孫さんがいらっしゃる。娘さんの嫁ぎ先のお相手は、ご商売をされているご子息の長男で、そのご商売の後継者だそうです。

墓じまいをしたいと思っているお墓は、実は旦那様が将来のためにと30年ほど前に墓地を購入して、将来娘さんには負担をかけさせたくないという想いから、自分たちが入る時のためにと、墓石を建立したものでした。なので、まだどなたの遺骨も埋葬されていない墓石でした。

Aさんは、当時を振り返り、一人娘なのだから、お墓を建立しないほうがよかったのかな。と墓石を建立したことに後悔しているような口ぶりでした。
結局、一度も使わないまま、墓石を解体してしまうことになるなんて…。

そこで、最後に私からいくつかご質問させていただきました。
「今回のご相談内容について、娘さんにもご相談されていますか?」
「墓じまいのこと、永代供養のこと、娘さんには話されましたか?」
「今後のことで、娘さんには負担をかけたくないことは娘さんには伝えていますか?」

要するに、今回のことについて娘さんには話されているか、質問しました。
Aさんの答えはNO!でした。
Aさんと旦那様とで話されて結論を出していたようで、嫁に行った娘には事後報告でもいいだろうということで、一言もお伝えしていないということでした。

私からはこんなことをアドバイスさせていただきました。
「墓じまいも永代供養の申し込みも、いつでもできます。まず初めに、私にお話したように、娘さんに今のお気持ちと、今後のお考えについて伝えてみて下さい。」

伝えたところで、何も結果は変わらないかもしれません。ですが、肉親である娘さんには何の相談もないことは、娘さんにとってはとても悲しいことのように思えるのです。
家族が話し合って納得して出した結論であることが大切だと思うのです。

電話の向こうでAさんは納得していただいたようで、
「わかりました、お盆に娘が帰省した時にでも話してみます。
と言って、その日は電話を切りました。

そしてお盆が過ぎ、9月に入った頃でしょうか、Aさんから連絡をいただきました。

Aさんの第一声は、
「墓じまいをすることにしました。作業をお願いできますか?」というものでした。
私は、もちろんできる旨の返答をさせていただきました。

すぐさまAさんからの話が続きます。
「お盆に娘が帰省した際に、墓じまいのこと、永代供養のこと、今後の供養で娘に負担をかけたくないことなど話しました。」

それに対して娘さんは次のように話されていたそうです。
「実は、私もそのことは気になっていた。でも親の死について私から口にすることはできなかった。」と話が始まりました。

今後のことについて娘さんの口から出た内容とは、
「嫁ぎ先の墓地の中に、小さくなるけど両親のお墓を建立したいと思っている。死後はそのお墓に埋葬して供養していきたい。子供たちにとっても八戸のおじいちゃん、おばあちゃんなのだから。」

そして…
「このことは、嫁ぎ先のご両親も旦那も理解し承諾してもらっているから安心して。いつ、このことを切り出そうか迷っていた。」
ということのようでした。

お盆が明けてから、娘さんの嫁ぎ先を尋ね、あらためてご挨拶と今後のことについて話もされてきたようでした。

このことを電話の向こうで話されているAさんの声は、ご相談時の声とはまるで別人のようで若々しく明るいトーンに聞こえました。

最後にAさんはこんなことも言っていました。
「娘に話してみて良かった。まさか娘がそんなことを考えてそんな準備までしているとは思わなかった。娘たちの意向に沿うことに決めました。本当に良かった。ありがとうございました。」

その後、墓じまいの作業をさせていただき、仕事としては終了したわけですが、その後もAさんからはご相談者を紹介いただいたり、時折連絡をいただいたりしています。

ひとつの実例をご紹介いたしましたが、この結末はどう思われますか?
いくつものご相談を受けてきましたが、嫁ぎ先の墓地内にお墓を建立して供養していく、こういう結末は未だかつてこの一件だけです。私の中ではレアケースです。

このようなケースは滅多にないことだとは思いますが、大切なことは墓じまいやご供養というのは、自分だけのことではないということです。
特に親子であればなおさらではないでしょうか。

最後は自分で決めなければならないことではあると思います。ですが、大切な方へ気持ちを伝えて、理解し納得して進めなければ、後から後悔することにもなりかねませんし、今後の関係性にも影響がでるかもしれません。

親子だから言いにくいこともあれば、他人だから言い易いこと、またその逆もあると思います。Aさんからすれば、私のような他人だから言えたのかもしれませんね。

墓じまいは、自分にとっても先祖であるように、自分の子孫や自分の兄弟、自分の叔父叔母にとっても先祖であるお墓を片付け、別な方法の供養を選択する第一歩だと思います。

そんな機会に、親戚で先祖のことを想い、自分たちの将来や終活について考える、そんな機会になるのかもしれませんね。

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この記事を書いたプロ

佐々木博一

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