忙しいイメージのある先生は、今も忙しいのか?
「今はタブレットで何でもできるんでしょう? なのに、なんで先生はあんなに忙しいの?」
タブレットは全員持っているけれど
ママ友との話の中で、よくこのような疑問を聞きます。これを読んでくださっている方にも「公立の小中学校児童生徒全員1人1台タブレット持ってるんだから、先生の仕事もずいぶん楽になったのでは」と思われる方も多いでしょう。
確かに、文部科学省の「GIGAスクール構想」によって、小中学生に1人1台の端末が配られ、教育のデジタル化は環境の面で一気に進んだように見えます。
でも実は、**“道具が揃っただけで、働き方そのものはあまり変わっていない”**というのが、多くの現場の実情です。
たとえば、紙の通知表がデジタル化されても、成績や所見(先生からの一言)を入力する作業は依然として先生の手作業です。
授業でタブレットを使うにしても、多くの学校では「ネットワークがつながりにくい」のが現状であり、「プリントをタブレットに配布しても、採点は手作業」など、デジタルとアナログが入り混じって余計大変になっている、という現場が多くあります。
さらに、何度もお伝えしてきたように学校には「授業以外の業務」がものすごくたくさんあります。保護者対応、校内会議、研修、クラブ活動、行事の準備……これらの多くは、まだアナログのまま残っています。つまり、ICTは導入されても、それを活かして働き方や授業の内容を“設計し直す”ところまでは、まだ十分に進んでいないのです。
先生方はあまりに忙しいので「ICTを使いこなせるようになるまでの時間がとれない」なか、何とか工夫してタブレットを使っているような状況です。
だからこそ、いま本当に必要なのは、「教育の(先生の働き方の、授業の)仕組みそのものを見直すこと」だと考えます。
「ICT機器を入れること」は、日本全国格差なく実現されました。ところがその先の、運用フェーズで格差がどんどん広がっているのです。
事務作業の省力化、情報の一元管理、教材の共有化など、いうのは簡単で、そんなこととっくにやっているだろう、ということについて、それがなぜ実現できないのか、原因を突き止め解決し、現場が実感できる形で「働き方改革」とつなげていくことが大切なのです。
私たち保護者や地域の大人が、学校の“外側”からその背景を知り、理解を寄せることも大きな支えになります。デジタル化は魔法の杖ではありません。中途半端なデジタル化はとてつもなく業務を増やします。
でも、先生の笑顔を増やし、教育のプロである先生方が子どもたちに向き合うためにも、腹を括って地域や保護者が「デジタルにしよう」ということも大事です。えんぴつの温かみが、とか、手書きの良さが、とか、思い入れのある方も多くいらっしゃるでしょう。そういうことが大切な場面ではぜひそれを大切にしていただくべきだと私も思います。
ですが、まるで修行のように「教員たるものは○○だから絶対手書きでなければならない」みたいな考えを口にするのはもうやめにしませんか、ということを申し上げたいのです。
地域や保護者からの何気ない一言はものすごいプレッシャーになります。100人の保護者の感謝の声を、1人のクレーマー(とまではいかなくても、感情に任せた人)の一言の苦言が難なく上回るインパクトを与えます。
子どもたちの未来を支える教育DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、今まさにスタートラインに立ったばかり。私たち一人ひとりの理解と関心が、その歩みを後押ししていきます。
しっかりと子どもたちを見て伸ばしていただけるよう、先生の働く環境を我々も守っていきませんか



