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教育用ICTツールで業務を効率化し、子どもたちと触れ合い笑顔で学べる環境づくりをサポート

学校教育のICT支援で子どもが笑顔で学ぶ環境を創出する専門家

大江香織

大江香織 おおえかおり

#chapter1

教育情報化コーディネータ1級を保有し、教育用AIチャットボットを開発

 「ICT技術を通して先生方の本来の業務である授業を充実させ、子どもたちと触れ合う時間を増やすお手伝いをします」と話すのは、「ハイパーブレイン」の大江香織さん。

 教育の情報化で20年以上の実績を持つ同社で取締役を務め、学校でICTを活用するための環境整備や情報教育の推進を担う「教育情報化コーディネータ1級」の保有者です。1級は最上位資格にあたり、国や都道府県の長期的な施策を設計・助言できるレベルとされ、保有者は全国で7人のみとのこと(2024年12月現在)。

 「学校教育におけるICT化を見通して、私どもが2022年に開発したのが、教育用AIチャットボット『EQ.bot(エクボ)』です。保護者や先生の困りごとに応えるヘルプデスクとしてご利用いただけます」

 1人1台タブレット端末が配備され、子どもたちの学習方法が多様化した一方で、操作方法の指導など、現場の教師は新たな対応が必要となりました。例えば、家庭学習中に機器に不具合が生じた際も対処を求められます。

 「保護者から連絡が入ると、業務時間外でも応対せざるを得ませんが、学校側も分からないことが多く、回答できないこともあります。『エクボ』を導入すれば、時間帯を気にせず問い合わせが可能です」

 教師からも授業中にトラブルが起きた場合に、すぐに調べられて助かったという声が届いているそうです。

 「教育現場ならではの言い回しなどをAIが学習するので、解決への道筋をスムーズに見つけられます。定期的に利用状況を分析し、より使いやすくなるようアップデートを続けています」

#chapter2

教師の家庭に育ち、多忙な姿を目にしたことが原点。教育現場のICT化を推進

 両親ともに教師をしている家庭に育った大江さん。テストの採点や得点の集計など、「家に仕事を持ち帰るのはいつものこと」で、幼いころから忙しい様子を見てきたと言います。

 1996年に大学を卒業し、英会話教室の運営会社を経て学習塾の講師に転職。「子どもたちの『分かった!』という瞬間に出会え、教えることは楽しかったですね」と振り返ります。

 「結婚を機に本部に異動しました。情報システムに携わり、パソコンを使えば簡単に生徒の成績を一元管理できることが分かりました。多忙だった親の姿を思い出し、教育現場のICT化を進めるべきだと考えるようになりました」

 夫の転職に伴い愛知県へ転居。教育委員会に、自身の考えをメールで送ったところ担当者の目に留まり、市の教育研究所で臨時職員として働くことになりました。 

 「在職中は、文部科学省が各学校に対して行うアンケート調査の集計や分析の効率化に取り組みました。やりがいがありましたが、リーマンショックで契約更新はかなわず、次の道を探していたところ、職場でお付き合いがあったハイパーブレインから声を掛けてもらったんです」

 2010年に入社し、ICT支援員の管理や教育情報化のコンサルなどを担当。学習の場でICTを最適化する上で課題を感じ、2018年に大学院で学び直すことを決断しました。

 「変則的な勤務を認めてもらえ、ありがたかったですね。仕事と両立しながら、情報技術を活用した教育支援のあり方など知見を深めました」

#chapter3

迅速・円滑な学校運営を支援する教育委員会向けのダッシュボードをリリース

 大江さんのもとで2025年にリリースするのが、教育委員会向けのダッシュボード「See+board(シーボード)」です。

 ヘルプデスクで受け付けた用件やICT支援員の活動実績を一元管理する「d+tas(データス)」、授業実践事例共有サイト「SmileHub (スマイルハブ)」、保護者や教員らの質問に答えるAIチャット「エクボ」と三つのツールを包括。教育行政に必要な情報を抽出し、一つの画面に集約しています。

 「学校を管理し方針を立てるのは教育委員会で、実践するのは現場です。学校で起きていることを教委がリアルタイムに追える仕組みがあれば、双方の風通しが良くなるのではという思いで開発しました」

 各学校の状況を把握するには報告を上げてもらうしかなく、報告を受けた時にはすでに事情が変わっているということも起こりがちでした。「シーボード」があれば、ある内容の問い合わせが急増したら教育委員会がすぐにキャッチアップし、解決策を提示するなど、迅速かつ円滑な学校運営をサポートできると説明します。

 「教育用のダッシュボードの開発は増えていますが、多くは学校単位で、教育委員会向けは珍しいのではないでしょうか。教育現場の現状や課題をデータとして見える化することで、委員会内で議論が活発になることも期待しています」

 子どもたちが笑顔で学べる環境づくりのため、「指導案や授業研究、マネジメント業務の時短と効率化を図れるシステムを取り入れてほしいですね」と大江さんは呼び掛けます。

(取材年月:2024年12月)

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専門家プロフィール

大江香織

学校教育のICT支援で子どもが笑顔で学ぶ環境を創出する専門家

大江香織プロ

教育情報化コーディネータ

株式会社ハイパーブレイン

教育用AIチャットボットや、教育委員会と学校の情報共有をスムーズにするダッシュボードなどのICTツール開発。教師本来の業務である授業の充実や子どもとの触れ合いに専念できるようサポートします。

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