お仏像修復の種類(1)
こんにちは。旭物産の成田です。
今日は「仏像修復の種類(1)」のお話の続きです。
前回のコラムはこちらからご覧いただけます。
部分修復
さて、お仏像を修復する方法の1つ目は
・お仏像の表面を修復する
2つ目は
・現存のお仏像を完全解体して新調同様にする
でした。
次に
・部分修復する
というものがあります。
これは、たとえばお仏像の指が欠けている場合など、一部分だけを修復するものです。
ただ、欠損している部分を修復するということに対して、わたしたちのような仏像業者と、
文化財を保護する立場の人たちとでは、見解が違うと聞いたことがあります。
そのままの姿と本来の姿
そのあたりを少し説明します。
文化財のお仏像ですと、今の状態でそのまま保存するという考えのようです。
ですから、指が欠けていれば、その指が欠けたままの状態を維持して修復し、見た目も変わらないように古めかしい雰囲気を保つそうです。
一方、わたしたち仏像業者が扱う、文化財に指定されていない、いわば日常お参りするお仏像の部分修復はまた違います。
もともとそのお仏像はお参りするためのものです。
お仏像を彫った仏師さんなら、指が欠けているお仏像を皆さんがお参りされているのを想像したらどう思うだろう、ということを考えます。
わたしたちはこの仏師さんの目線でお仏像を修復しますので、
指が欠けていたら指を補って、本来のお姿に戻します。
この場合、欠けた指先が残っていればそれをお仏像に接着しますが、残っていない場合は指先だけ新しく、お仏像の手に合わせて作ります。
新しい指先とお仏像とで、木地の年月に隔たりができることになります。見た目も、お仏像そのものが長年お参りされた線香やろうそくの煙、ほこりで黒ずんでいても、
新しい指はまっさらの白い木片です。
ですので、この白い指に、お仏像の雰囲気に似せて色を付けたりします。
それから指を手に接着しますが、接着後も手と新品の指の色味を合わせ、なじませる必要があります。
傾かない補強
もう1つ
・お仏像が倒れないように補強する
という修復があります。
倒れそうになっているお仏像を今の状態より良くして、倒れないように補強する修復です。
ただ、「すぐには倒れないように」しますが、お仏像が完璧な状態に戻るわけではありません。
できるのは、とりあえず「数年持たせる」修復です。
ですので、数年後には完全解体して修復することを前提としたほうが良いでしょう。
お仏像を修復するための寄進が集まりにくい場合でも、少ないコストでできる修復です。
いずれ完全解体の修復を行うことを見越して行います。そうしてお仏像を持たしている間に寄進を集めるのが望ましいかもしれません。
具体的には、たとえばこんな修復になります。
お仏像は蓮華(蓮台とも言う)という台座上部に立っています。
どのように立っているかというと、こんな感じです。
立っている仏様、つまり仏身の足の裏に、ちょうど下駄のようなジョイント部品が彫られています。
そして、このジョイントの差し口が台座の上部、すなわち蓮華に彫られ、くぼみができています。
仏身の下駄を蓮華のくぼみに差し込み、仏身と台座を接合するというわけです。これで、仏様が蓮華の上にしっかり立つことができます。
お仏像が傾いているのは、この足の裏の下駄に不具合があるからかもしれませんし、蓮華に不具合があるからかもしれません。
傾きの原因をこの辺に絞って修復していくわけですね。
また、お仏像の下駄に不具合がなくても、蓮華と、蓮華の下の台座を接着しているはずのパーツが外れていて、お仏像が傾いて見えることもあります。
この場合は蓮華と台座をしっかり接着させる必要があります。
後光の傾き
お仏像の後光(光背ともいう)が傾いている、ということも往々にして見られます。
後光の傾きを調整する修復もできます。
このときも、後光の部品に経年変化で不具合が起きている可能性があるので、後光の差し込み部分の部品を調整します。
また、後光は蓮華の際(きわ)に差し込まれているので、この蓮華の差し口部分に不具合があれば修復することになります。
実際、差し口部分が朽ちていて、そこに修復された跡があるお仏像を見たこともあります。
傾きが見られるようなお仏像は、ほとんどが何十年もお参りされているものです。
部分的な不具合を修復しても、全体的に接着剤の膠(ニカワ)の効きが悪くなっていて、どの部分も接着がゆるくなっている可能性があります。そうなると、数年後には完全解体して修復する必要が出てきます。
お仏像の状態はそれぞれ違いますが、お仏像の傾きを直すだけで済ませるより、全体的に修復したほうが良い場合もあります。
一番の方法
さて、以上が「お仏像修復の種類(2)」のお話でした。
実際には、それぞれのお仏像の状態を見てみないと、どのような修復方法がふさわしいか分かりません。
また以前の記事でも触れた通り、どこまで追い求めるかによっても修復方法は違ってきます。
どの場合でも、お仏像に一番ふさわしい方法が良いでしょうね。
わたしどもでもこのあたりはていねいにご説明させていただきますので、お仏像を後世に遺すために一番良い方法を一緒に考えましょう。
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう。