お仏壇とご本尊様の意味
こんにちは。旭物産の成田です。
今日は前回に引き続き、お仏像の修復に欠かせない塗りの職人さんの
インタビュー、その後編です。
前回の記事は
こちらからどうぞ。
大切な造形美
さて、お仏像修復の下地塗りで大事なことは、修復途中で素の状態、つまり仏師さんが彫ったままの状態に戻した、その造形美を保ちつつ、薄く均一にコーティングすることです。
そのとき、表面は滑らかでないといけません。
ホコリが入ることはもちろん、一点のダマ、要するに塗料の固まりが残ることも許されません。
ホコリの入らない環境を整えた作業場所で、ダマができないよう、十分に気を付けて塗ることが必要になります。
特にわたしどもの目指すクオリティは、自分で言うのも何ですが、
とても高いです。
仏師さんの繊細な彫りが塗料で埋まってしまうと、元の彫刻の良さが台無しになります。
いかに元の造形美を保ちつつ仕事をするかが、塗師屋(ぬしや)さんの腕の見せどころです。
業界の中でわたしどもはクオリティにこだわる「うるさい」取引先と呼ばれています。
というのも、わたしはそれだけお仏像に対して責任を持っているからです。お引き取りから納品まで、その時々のお仏像の声を聴き、いつも最上級のクオリティを追求しています。
好きなお仏像、難しいお仏像
それでは、引き続き塗師屋さん、有限会社竹正(たけしょう)の社長、竹森康二さんのインタビューです。
成田:好きなお仏像は何ですか?
竹森社長:鑑賞の対象として好きなお仏像は多々あります。
興福寺(奈良市)の阿修羅像、東大寺(奈良市)のご本尊様である東大寺盧舎那(るしゃな)仏像、東寺(京都市)の薬師三尊像などです。
成田:いずれも国宝や重要文化財ですね。
旭物産の中で好きな仏像は何ですか?
竹森社長:彩色用の下地塗りのお仏像、金箔用の塗りのお仏像のすべてです。
成田:旭物産の中で難しい仏像はありますか?
竹森社長:すべてです。
成田:竹森社長はうちのお仏像すべてに誇りを持って塗ってくださっているようで、頼もしいですね。
「やれるうちはやる」
成田:今後、何かチャレンジしたいことはありますか?
竹森社長:高級車の内装のような、木を美しく見せる塗りを、より美しく塗ることです。
100%の天然木でなくとも、突板(※)や貼りの板なども含め、建材などの内装材やテーブルなどに、伝統工芸で培った、
木目をより美しく見せる塗りの技術を提供していきたいです。
※突板(つきいた)=ベニヤ
成田:そういったお仕事もぜひ拝見したいです。
現在の竹森社長に通じる、青春時代のエピソードがあれば教えてください。
竹森社長:学生のころ、スクーターがとても流行り、どんどん新しい型が発売されていました。
わたしも欲しかったのですが、新しいのは高くて買えないのと、何となく人と違ったスクーターに乗りたくて、当時、町の自転車屋さんでよく売っていたホンダの中古カブを5000円くらいで買って、自分でペンキを塗りました。
ただ塗るだけではなく、自分なりにデコレートしたくて、配色や、よりきれいな塗り方とか、道具を研究しました。
それなりに大変でしたが、その時間はとても楽しくて充実していました。
そのうち、友人に頼まれたりしましたし、ご近所のおばさんの自転車も塗っていました。
完成して引き渡すとき、とても喜んでもらえたことが、わたしもとてもうれしかったです。
成田:なるほど、塗師屋さんになる前からプロ顔負けの“塗師屋さん少年”だったわけですね。
竹森少年が生き生きとペンキを塗る姿が思い浮かぶようです。
ところで、今何か取り組んでいることがあるそうですね。
竹森社長:The artisan+(ジ アルチザンプラス)に参加しています。
尾張仏具に携わるさまざまな職人たちのグループです。
それぞれの職人が寺院仏具の製造で培った技術を生かし、
オリジナルアイテムの新しい工芸品などを作っています。
試行錯誤を重ねながら伝統の良いところは残し、
今だからこそできること、付加価値をプラスした、暮らしに寄り添うモノづくりが
The artisan+の活動目的なんです。
サイトはこちら
から
成田:アルチザン、つまり「熟練の職人」の集まりというわけですね。
最後に、何歳まで塗師屋さんを続けたいですか?
竹森社長:「やれるうちはやる」ですね。
成田:ありがとうございました。
竹森社長のルーツや新しいチャレンジまで、いろいろなお話を聞けました。
いかがでしたでしょうか。
お仏像というものができ上がるには、また修復されるには、腕の良い職人グループみんなで
心を一つにして取り組む必要があるのです。
今回はその工程に欠かすことができない、今脂が乗りきった塗師屋さん、竹森康二社長に
インタビューしてみました。
それでは、次回またお会いしましょう。