お仏像を修復するタイミング(1)
こんにちは。旭物産 成田です。
今日は仏像修復方法の種類についてお話させていただこうと思います。
この種類というのは正確に何種類と決まっているというものでなく、
わたしがこの仕事をさせていただいてきた中で自分なりに種類分けをしたものになります。
ですから、ほかの業者さんの目線とは少し異なることがあるかもしれません。
ご了承いただければ幸いです。
さて、この仏像修復方法のひとつ目としては、
・お仏像の表面を修復する
という方法です。
この方法は、現存しているお仏像を解体することなくそのままの状態で表面をきれいにします。
詳しいやり方は業者さんによって異なりますが、おおまかにいうと
現存の状態から上に塗り重ねるということをします。
塗り重ねるものは、彩色の絵の具であったり金箔を押したりするのですが、
その下地(女性のお化粧にに下地が必要なのと同じです)も塗り重ねるのですね。
出来栄えは、とてもきれいに輝きます。
少し気になる点といえば、元の塗ってあったものを落とさないで
上から塗った分だけの「塗ぶくれ」が起こります。
ただ、この方法もれっきとした修復方法なので、
キレイになったお仏像をみて、特に違和感がなければ問題ないと思います。
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二つ目の方法は
・現存のお仏像を完全解体して、新調同様にする
という方法です。
これはうちでお受けする修復のほとんどの方法です。
ここで、
お仏像は木を彫ってできたたくさんのパーツを組み合わせて作られています。
「寄木造り」といって、仏様も仏様を支える台座と光背も、
想像を絶するくらいのたくさんのパーツからできているのですね。
そして、組み立てた時は「にかわ」(天然の接着剤)を使用しているのが一般的ですので
何十年か何百年かたったお仏像は「にかわ」の効き具合が弱くなっていることがあります。
ですから、お仏像の修復ではこの点を踏まえて
すべてのパーツを元通りのバラバラの状態に解体した後に、
一から組み直して内部構造を強化することによって
表面からは区別がつきませんが、
この先何百年も耐えれるくらいとても丈夫に仕上がるのです。
うちの修復では、パーツをバラバラにするときに、
もともと塗ってあった下地塗の塗料や金箔や絵の具もスッキリ洗い落とします。
洗い落されたパーツはゆっくりと自然乾燥をさせた後に元通りに組み直します。
この時の状態がいわゆる「仏師さんが彫った」時と同じ状態なのですね。
この何も塗られていない素のお姿に下地を塗ったあと、金箔を押したり絵具で色を差したりします。
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さて、この2通りのお仏像修復の方法の違いは、
どちらが良くてどちらが良くないということはありません。
たとえば、予算をいくらにするかや、お仏像の傷み具合にもよります。
また、どこまで追い求めるかや、修復に対する期待値にもよるかと思います。
ちなみに、お仏像は毎日お参りするものであって、
どこが傷んでいるかなどということは日常ではなかなか気づかないものです。
ですが、ある日目に見えて表面に現れた傷みは、
実は内部が傷んでいたものがゆっくりと時間をかけて表面に達してきた、
ということもあります。
そうはいってもお仏像の修復というものは、
ご自身が一生のうちで1回あるかないかの大きな節目になりますので、
じっくりと考えることも必要かと思います。
もちろん、お仏像の修復は頼もうと思われた方の意思が一番大切ですし、
修復されるお仏像がどんなふうにその人に託したいかということも、
もれなく耳を傾ける必要があると思います。
絶対やってはいけないのは、
修復する人のひとりよがりでやってしまうことだと思います。
このあたりは、わたしは修復をされる前に、
ご依頼いただいた方の納得がいくまで
丁寧にご説明をさせていただいていますよ。
ところで、お仏像修復の種類は、
今日ご紹介した以外にもありますので
それらについてはまたお話させていただきますね。
それでは次回をお楽しみに。