マイベストプロ、始動!(2018.3.26)
財政制度分科会(令和3年4月15日開催)より、
毎回ではありますが、かなり踏み込んだ内容になっていますね・・・!!!
ちょっと長いですが、読んでみて下さい。
◆制度創設時からの介護保険費用等の推移
○ 介護保険制度は創設から約20年を迎えたが、
介護費用は、制度創設時に予測した水準に比べて増加。
制度創設時の推計は、推計時点(95年度)から単価が変わらない前提としているが、
その後の名目GDPの推移を勘案したとしても、実績が制度創設時の推計を上回る。
更に、2010年までの推計期間を経過した後も、費用は増加し続け、
足元では10兆円を上回る水準となっている。
○ 保険料についても、当初見込みを上回るペースで上昇。
足元では制度創設時から約2倍の5,869円となり、5,000円を上回る水準となっている。
制度創設時の推計から乖離した要因として、
居宅サービス費用の大きな増加や当初見込みを上回る要介護認定者数の増加が考えられる。
○ 一方で、介護保険制度の創設に伴い、
社会的入院(介護を理由とする一般病院への長期入院)が解消され、
医療保険から介護保険に移った費用相当分について、
医療保険の負担が▲1.2兆円減少するとされていたが、
制度創設前後の1999年度から2000年度にかけた
財源別国民医療費における保険料の減少は▲0.1兆円にとどまっており、
その減少効果は限定的にとどまった可能性が高い。
◆利用者負担の見直し
○ 保険料負担者である40歳以上人口は、
介護保険創設以来増加してきたが、2023年をピークに減少し、
あわせて40~64歳の若年者世代の支え手の割合が減少していくことが見込まれる。
一方で、要介護認定率や一人当たり給付費が高い75歳以上の高齢者は2030年頃まで増加し、
その後も85歳以上人口が増加していくことが見込まれる。
○ こうした中で、介護保険制度の持続可能性を確保するためには、
利用者負担の更なる見直しをはじめとした
介護保険給付の範囲の見直しに引き続き取り組む必要。
○ 利用者負担については、2割・3割負担の導入を進めてきたが、
今後、高齢化により介護費用が更に増加することが見込まれる中で、
制度の持続可能性を確保し、保険料負担の伸びの抑制を図る観点から、
今般の後期高齢者医療における患者負担割合の見直しを踏まえ、
介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや
利用者負担2割に向けてその対象範囲の拡大を図ることを検討していく必要。
◆介護人材確保の取組とICT化等による生産性向上
○ 今後、高齢化による介護需要の増加により、生産年齢人口が減少する中で、
介護人材の必要数は増加が見込まれている。
○ こうした中で、新型コロナウイルス感染症の影響による離職者の
介護分野への職業転換施策の推進等による
介護人材確保のための取組を進めるとともに、
サービスの質を確保しつつ、より少ない労働力でサービスが提供できるよう、
配置基準の緩和等も行いながら、業務のICT化等による業務効率化を進めていく必要。
○ また、介護サービスの経営主体は小規模な法人が多いことを踏まえ、
令和4年6月までに施行される社会福祉連携推進法人制度の積極的な活用を促すなど、
経営主体の統合・再編等による介護事業所・施設の運営効率化を促す施策も
あわせて講じていく必要がある。
○ こうした取組は、介護職員の働きやすい職場を実現するとともに、
介護職員の処遇改善の余地をもたらす。
今後、我が国において就業者の大幅な減少が見込まれる中、
介護サービスを安定的に提供していくために必要不可欠な取組。
◆ケアマネジメントのあり方の見直し
○ 制度創設時、ケアプラン作成は「高齢者の自立を支援し、適切なサービスを確保するため、
・・・そのニーズを適切に把握したうえで、ケアプランを作成し、
実際のサービス利用につなぐもの」とされた(「高齢者介護保険制度の創設について」(1996))。
また、介護保険サービスの利用にあたっては一定の利用者負担を求めているが、
居宅介護支援(ケアマネジメント)については、
要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、
利用者負担をとらないこととされた。
しかしながら、介護保険制度創設から約20年が経ち、
サービス利用が定着し、他のサービスでは利用者負担があることも踏まえれば、
利用者負担を導入することが自然。
○ また、ケアマネ(居宅介護支援)事業所の約9割が他の介護サービス事業所に併設しており、
「法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた」
という経験を見聞きしたケアマネジャーが約4割いるなど、
サービス提供に公正中立性の問題が存在。
更に、ケアマネジャーは、インフォーマルサービスだけでなく、
介護保険サービスをケアプランに入れなければ報酬を受け取れないため、
「介護報酬算定のため、必要のない福祉用具貸与等によりプランを作成した」ケアマネジャーが
一定数いることが確認されている。
利用者負担を導入し、利用者が自己負担を通じて
ケアプランに関心を持つ仕組みとすることにより、
ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資する。
○ また、福祉用具の貸与のみを行うケースについては報酬の引下げを行う等、
サービスの内容に応じた報酬体系とすることも必要。
◆多床室の室料負担の見直し
○ 制度創設時、「施設介護については、在宅介護とのバランスや
高齢者の自立が図られてきている状況から見て、
食費等日常生活費は、利用者本人の負担とすることが考えられる」とされた
(「高齢者介護保険制度の創設について」(1996))。
このため、2005年度に、食費と個室の居住費(室料+光熱水費)を
介護保険給付の対象外とする見直しを実施(多床室は食費と光熱水費のみ給付対象外)し、
2015年度に、特養老人ホームの多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを行った。
○ しかしながら、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室については、
室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっている。
○ 居宅と施設の公平性を確保し、どの施設であっても
公平な居住費(室料+光熱水費)を求めていく観点から、
給付対象となっている室料相当額について基本サービス費等から除外する見直しを行うべき。
◆地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)のあり方の見直し
○ 地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業は、
各自治体が高齢者の伸び率を勘案した事業費の上限内で事業を実施し、
その枠内で交付金を措置する仕組みとしているが、厚労省が定めるガイドライン上、
「一定の特殊事情」がある場合には、個別の判断により事業費が上限を超えても
交付金の措置を認めることとされている。
○ 「一定の特殊事情」の判断要件として
「費用の伸びが一時的に高くなるが、住民主体の取組等が確実に促進され
費用の伸びが低減していく見込みである場合」とされているが、
相当数の保険者が3年連続で上限を超過している。
また、「介護予防に効果的なプログラムを新たに導入する場合」をはじめとし、
当該要件を充足する場合として例示されているケースもエビデンスに基づくものとは言い難い。
更に、判断要件が例示であり、例示以外の理由での申請も認めていることから、
単なる事業量や利用者数の増加等を理由とした申請が相当数行われ、
「一定の特殊事情」として認めがたい、こうした申請も含めて全ての上限超過が認められている。
○ 上限が機能せず、形骸化しており、
重要な制度改革の根幹がこのような運用となっていることは看過できない問題であり、
上限超過を厳しく抑制すべき。
◆区分支給限度額のあり方の見直し
○ 介護サービスは生活に密接に関連し利用に歯止めが利きにくいこと等から、
制度創設時に、「高齢者は介護の必要度に応じて設定された介護給付額の範囲内で、
自らの判断と選択により実際に利用したサービスについて
保険給付を受けることができることとすることが適当である」
(「高齢者介護保険制度の創設について(1996)」)とされ、
要介護度ごとに区分支給限度額が設定された。
○ しかしながら、制度創設以降、様々な政策上の配慮を理由に、
区分支給限度額の対象外に位置付けられている加算が増加。
○ 制度創設時に企図したように、
設定された限度額の範囲内で給付を受けることを徹底すべきであり、
居宅における生活の継続の支援を目的とした加算をはじめ、
加算の区分支給限度額の例外措置を見直すべき。
◆居宅サービスについての保険者等の関与のあり方
○ 居宅サービスについては、制度創設以来、事業所数が大きく増加。
また、居宅サービスが充実する中で、訪問介護や通所介護の一人当たり給付費が、
全国平均と比べて極めて高い水準となっている地域もある。
〇居宅サービスのうち、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護については、
市町村は、都道府県に事前協議を申し入れ、その協議結果に基づき、
都道府県が指定拒否等を行う枠組み(「市町村協議制」)があるが、
あくまで定期巡回サービス等を普及させる観点から、
競合する訪問介護等の一部サービスを指定拒否できることとされている。
同様に、市町村が指定権者である地域密着型通所介護についても、
あくまで定期巡回サービス等を普及させる観点から指定拒否ができることとされている。
○ 定期巡回サービス等の創設から約10年以上経過し、
サービスの普及が進んでいることも踏まえ、
自治体がより積極的に地域のサービス供給量をコントロールするための方策として、
全サービスの居宅サービス事業者及び地域密着型通所介護の指定にあたって、
定期巡回サービス等の普及の観点にかかわらず、
サービス見込み量を超えた場合に、
市町村が都道府県への事前協議の申し入れや指定拒否ができるようにすべき。
また、都道府県及び市町村がより積極的に制度を活用できるよう、
国はガイドラインや取組例の発出等の支援を行うべき。
◆軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化
○ 近年、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハビリテーションといった
医療系の居宅系サービス費用が、総費用や要介護者数の伸びを大きく上回って増加。
○ 居宅療養管理指導等のサービスは、
原則、「通院が困難な利用者」に対して給付することとされているが、
近年、軽度者(要支援1・2、要介護1・2)の費用の伸びが顕著な状況であり、
実態として「通院が困難な利用者」へのサービス提供となっているか、把握を行う必要。
○ 例えば、居宅療養管理指導については、
薬局の薬剤師による軽度者へのサービス費用が大きく増加しているが、
「必要以上に居宅療養管理指導を利用するプランを作成した」ケアマネジャーが
一定数いることが確認されており、
「少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、
居宅療養管理指導費は算定できない」と算定要件が明確化されたことも踏まえ、
算定要件を満たす請求のみが適切に行われるようにすべき。
◆介護施設・事業所等の経営状況の把握
○ 介護及び障害福祉サービス等事業者は、
法令上、サービス提供内容等の運営情報について都道府県に報告を行い、
都道府県は、厚労省が設置する「介護サービス情報公表システム」及び
「障害福祉サービス等情報検索」で報告を受けた内容を公表することとされている。
○ このうち、障害福祉サービス等については、
すべての法人について、「事業所等の財務状況」の都道府県への報告及び
「障害福祉サービス等情報検索」における公表が法令上義務化されている一方で、
介護サービスについては、法令上何ら規定がなく、公表が義務化されていない。
○ このため、介護サービスについても法令改正を行い、
財務諸表等の財務状況の報告・公表を義務化し、
介護施設・事業所の経営状況の「見える化」を推進すべき。
また、障害福祉サービス等については、法令上、報告・公表が義務化されているにもかかわらず、
「障害福祉サービス等情報検索」での財務状況の公表が低調であるため、
法令に従い、財務状況を公表するように徹底すべき。