~ 士衛塾空手を通して、伝えたいこと 34 ~
士衛塾山梨の門下生に向けた、私からのメッセージを転載します
2023年 2月号 士衛塾山梨ニュースより
この間感じたことなどを、こちらに書いています。ぜひ、皆さまご一読いただければ幸いです
■ 今号は、3月の昇段審査会で、初段を受験するお二人に聞きました ■
お二人ともシニアで空手を始めています。
中村さんは、息子と一緒にはじめ、なんと2022年1月に行われた極真の全日本大会で第3位となり、2023年4月に行われる世界大会に出場します。母として、シニアの女性としてフルコンタクト空手の世界大会に出場するのは、おそらく山梨で初だと思います。凄いことです。
小野さんは56歳で空手を始め、現在62歳です。この年齢で日々進化している身も心も強者です。定期的に試合も出場しており、選手としても現役です。士衛塾のシニアで一番強い方です。
今回は、士衛塾山梨のシニアを代表するお二人に書いていただきました。二人は3月の昇段審査会において初段を受験します。これまでの努力が試される試練の場でもあります。そして、最高の場でもあります。
とかく人は歳を取ると守りに入ってしまいます。いくつになっても、常に挑戦し続けることはなかなか出来るものではありません。素敵な人生を歩んでいると思います。
それぞれの人生観が出ていて個性あふれる素敵な文章をいただきました。ぜひお読みください。
【中村仁実】
「今日寄ってく?」
土曜日の稽古後、どちらかともなく出てくる会話である。寄っていくのは道場からの帰り道にある手作りアイスの店のことで、ここ何年か通っている。
道着のまま店に入るので、店主も覚えてくれる様になり、少しずつ話をする様になった。
「その道着は柔道ですか?」
聞くところによると、店主の娘さんとお孫さんは親子で柔道を習っているそうで、私達にとても親近感を抱いてくれ、ミニアイスのサービスをしてくれる様になった。
この店には常時20種類以上のアイスクリームが置いてある。息子は注文のたびに割と異なるアイスを注文する。季節のフルーツを使ったものがお好みで、新作が出ると躊躇なく注文し、あわよくばダブルで!などと言い出す。ダブルかあ…魅力的だが大人の知識と経験が邪魔をして私はカップのシングル一択だ。
そんな息子を横目で見ながら、一方の私は数種類のループから抜け出せない。もちろん他の味のアイスも気になる。とても気になる。息子のを味見はしてみるものの、チャレンジができないのだ。
これではまるで自分の組手のようではないか。数少ない技を同じリズムで出してしまう。攻撃の手を緩めてはいけない!と勝手に思い込んで一辺倒な空手になる。
息子は胴回し回転蹴りを覚えたいそうで、最近私の布団の上で過ごす時間が長い。自分の布団の上でしたら良いのに、と思いながら練習の様子を録画する。新しいことに挑戦したいが、でんぐり返しができない私には胴回しはハードルが高すぎる。なので「ロッキーのテーマ」をかけてバタバタすることにしている。乗ってくるともうひとラウンド追加する。
組手の時に新しいパターンを取り入れることが出来るといいなぁと思っている。先生方からのご指導もあり、こうしてみよう、ああしてみたら…と頭の中で渦を巻く。しかし試合でそれらができた試しがない。緊張で冷静さも失い蹴りすら出せないこともあった。
もっと普段から色々試してみよう!きちんと味わい、体の中に取り込んで自分のモノにしなければ、本番で力を発揮することは難しい。
「今日はカフェロイヤルにします。」
新作のアイスに挑戦してみた。食べながらとても大事なことに気が付いた。私はその店でまだ一度もバニラを食べた方がない。やはり一旦基本に戻ろう。
【小野浩二】
57歳目前で空手を始めてようやく6年目に入りました、塾生募集のチラシを毎日ながめては電話しようか悩んでいた日々、電話をした日、初めて笛吹支部の練習に参加した日、腹筋20回で翌々日起き上がれなった日、今でもはっきり覚えています。
覚えが悪く先生方にはご迷惑を掛けながらも10ヶ月が経ち初めての合宿・審査会です、型の審査では体育館の後方より受験生が一人ずつ呼ばれ所定の場所に、9級受験の私は当然最前列です、目の前には多くの先生方が怖い顔してバインダーを抱えており緊張は最高潮に、この年になって人前で間違える事など許される訳もなく上手い下手は別として絶対に間違えないよう練習を積み臨みましたがやってしまいました。
「用意」の合図に一人だけ「始め」、半身になって足の親指が揃ったまま本当の「始め」がなんと長い事か、フリーズした頭でまた1年白帯がよぎりました。
何とか合格をいただき初めて色のついた帯を手にした時は大人ですから表情には出しませんが嬉しかった、今でも白から茶まで並んで置いてありますが橙色が一番輝いて見えます。
それから半年程して初めての試合「関東マスターズ」に参加、初級クラスながら準優勝し人生初のトロフィーを頂きました、嬉しくて1週間程眺めていたのですがこれは本物ではないのです、4人の総当たり戦で1試合目は判定負け、次戦は相手がいません三戦目もまさかの不戦勝、結局一敗しただけの準優勝、そこで誓いました同大会で実力により準優勝以上できた時に箱から出して2つのトロフィーを並べる、それまでは封印する、コロナの中止を挟んであれから4年すっかり箱が黄ばんできました、しかも今年からは上級クラスでのエントリーですどうしましょう、このニュースが出る頃には結果が出ているかもしれませんが。
またこの大会では忘れられない事が、大会も終盤に入った頃突然選手紹介が始まりました、聞いていると年齢73歳、会場がザワツキました、試合が始まると当然フットワークを使う訳もなくコートのセンターで殴り合いです、でも確かに2分間休まず息も絶え絶えに戦っています、会場全体から拍手が起き勝敗を超越したすごい戦いに涙があふれます。
金融機関生活では決して味わう事のない多くの貴重な体験をしてこの3月に昇段試験に挑戦させていただきます、遠方から毎日道場に通う塾生や送り迎えをする親御さんには頭が下がりますし練習時間・技量共に不足しておりますが、先の短い大人枠と理解ください、合否は別として今できる精一杯の力でチャレンジさせていただきます。
簡単な様で難しい「継続は力なり」をモットーに稽古に励んで参ります、塾生の皆様、先生方、今後ともよろしくお願い致します。
追伸です、お母さん、お父さん送り迎えの時間を利用して空手始めませんか?同世代か僕より若いおじいちゃん、おばあちゃんもきっといますよね!何歳になっても「遅い」はありません、痩せます・腰痛が治ります・肩こりが治ります(個人の感想であり効用を保証するものではありません)最初の一歩は勇気が必要ですし1にも満たない小さな一歩ですが、掛け合わせる事によりが大きくなります、0はいつまで経っても0のままです、お待ちしております。
■ 私の振り返り ■
私自身の昨年の振り返りは、何と言っても20試合に出場したことでしょう。こんなにたくさん試合に出る人はシニアではそういないと思っています。「勝っても負けても、とにかく馬鹿みたいに試合に出よう」と昨年の春に決めてから、数多く出場すること目標に掲げ20試合となりました。それまでは2019年に12試合出たと記録に残っています。ちなみに成績は20戦中、優勝が7回、準優勝が2回、3位が1回で、残りの10試合は初戦または2回戦で負けています。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」ていうやつですかね。
20試合の中では、同じ方と二週続けて試合で対戦し毎週負けたこともありました。稽古で肋骨を負傷しながら臨んだ試合もありました。手合わせしたかった方と対戦できた試合もありました。それぞれの試合で、嬉しかったり、悔しかったりしながら、たくさん勉強できました。そして、シニアの仲間たちや他流の先生方と交流ができたことは、試合でメダルをもらうことよりも、私にとって何よりもの「宝」です。感謝しかありません。
以前にも書きましたが、どれだけたくさん試合に出ていても、試合には慣れるかもしれませんが、緊張します。また、寄る年波には段々と逆らえません。ジュニアでは年上に負けますが、シニアでは逆に年下に負けます。今から気力体力ともに充実していくジュニアに比べ、昨年よりも衰えている自分自身を感じるにつけ、「若いっていいな」と思います。その点、中村さんや小野さんはすごいと思います。進化し続けていますからね。私も見習おう。
未だコロナ禍の中ではございますが、OYAJI(シニア)の空手界がコロナ前よりも大変盛り上がっています。特に50歳以上の部(笑)。以前はジュニアの大会はあってもOYAJIの部がなかったのですが、今は結構な確率でOYAJIの部があります。おかげでたくさんの試合に出ることができます。ワクワクしますね。
■ 試合に出るタイミング ■
最初の試合に出るタイミングはどうでしょうか。入門してどの位から試合に出て良いのかというと、最低3か月ほど経っていれば大丈夫です。初心者の部に出ることができます。試合で初心者という括りは、入門しておよそ6か月未満です。長くても1年という試合がほとんどです。この時期にたくさん試合を経験しておくと後々良いです。何年も経ってからでも良いのですが、経験年数が多くなると、それだけ周りも強くなり、経験値も上がってくるので、厄介です。
いつも例え話で言っていますが、試合を学習塾のテスト、稽古を勉強と置き換えてみると、一定期間ごとにテストを受けて実力や到達度を確認している生徒と、何年もテストを受けていない生徒とではその成長の違いは明白です。都度、苦手な部分をテストで確認し、勉強で補っていくことは、空手の稽古と試合の関係と同じです。
空手には色々な目標や楽しみ方があります。試合がすべてではありませんが、一つの楽しみ方として試合に出るのも良いと思います。しかし、黒帯を目指すのであれば、ジュニアは、どんどん試合に出た方が良いでしょう。
■ 修行年数 ■
試合の申し込み書には、修行年数を書く欄がある場合があります。
修行年数が「1年」でも、月に1回の稽古の1年と週1回の稽古では、随分と差があります。同じく、週1回の稽古と週2回の稽古では「倍」違います。修行年数は、特に初心・初級クラスの組み合わせの一つの目安となり、できるだけ同程度の修行年数と組み合わせることとなりますが、実際は稽古の回数では大きな開きがある場合が多く、どうしても実力差が出てしまうのは仕方ないのかもしれません。
やはり、出来るだけ多くの練習をしておくと良いです。
■ 邪魔なプライドはいらない ■
子どもたちには、どんどんと挑戦させてみるけれど、大人になると、それまでの経験からくる失敗したくないという「守り」と、負けたらどうしようという「恐れ」や「プライド」が時として「挑戦」を邪魔します。わかっているけれど出来ない事態になることも多いです。小野さんや中村さんも、空手を習ってみるというスタートラインに立つまでは、相当、悩んだことと思います。しかし、恐れずにスタートラインに立ち、進み始めた結果が現在の姿です。
「守る」ためには恐れずに「攻める」ことが大切だと思います。「挑戦」し続けることは大変ですが、「やりがい」があり、高い壁と思っていても、やってしまえば「そうでもなかったかもしれない」と思える場合がほとんどです。
例え、試合に負けたとしても無くすものはありません。私も昨年10試合負けましたが、得たものはとても大きかったです。負けた時の方が勉強になります。失敗から教訓を学び成長していきます。
「挑戦」して「失敗」することを「恐れるなかれ」。「失敗は成功のもと」。
■ 試合はすべてではない ■
試合、試合と言っていますが、大前提は「稽古」が一番大事であることはいうまでもありません。私も稽古が一番好きです。特に基本稽古は奥が深く、毎回満足する出来とはなりません。出来ないことだらけです。だからこそ、日々反復する基本稽古から学ぶことを追及していきますが、時々降りてくる「気づき」に嬉しくなったりします。
組手のように、スカッとすることのない地味な基本稽古や移動稽古や型ですが、これらの点と点を意識し、つなげることでバラバラだったものが、組手という実戦でのレベルアップにつながります。勝つことがすべての格闘技でもスポーツでもない「武道としての空手道」、「武道としての試合」であるからこそ、「基本」を極めるために追及することが大事です。すなわち、自分自身の身体と対話し、個々の身体の特性を最大限生かすことを目的とします。それには、皆、同じ基本や・移動・型を行わなければなりません。個人個人バラバラなことを最初から行うのではなく、同じ動きを行い、追求している中で個性が出てきます。ここを伸ばしていけばよいのです。
みんなで同じことを行っているからこそ、その人の個性がだんだんと際立ってきます。
■ 優秀賞 ■
コロナ禍で数年、年明けの「鏡開き」ができておりませんが、稽古や試合において頑張った塾生を表彰する、表彰制度を復活させることとしました。
賞状のみの授与となりますが、2022年度の優秀賞を以下の方々としました。
小野浩二、梶原旅人、川中隆矢、川中椋仁、中村仁実、野崎光生、保坂傳、前川輝、前田悠冴、宮下琉汰、八巻斗誠、渡邉龍之介の12名です。おめでとうございます。
そして、士衛塾総本部の新年会でも
2022年 年間MVP賞 保坂傳
2022年 年間優秀賞 前川輝、前田美里・悠冴
が表彰されました。改めて、おめでとうございます。
■ 冬合宿 ■
3月4日(土)、5日(日)に行われる冬期審査会等について、以前より合宿会場と宿泊としてお借りしていた「湖畔」の閉館に伴い、当面の間、「合同練習会兼審査会」として開催することとなりました。
合同練習会兼審査会は、4日の一日で終了しますが、その後、湖畔の方に紹介していただいた宿泊施設に宿泊し、翌5日は士衛塾 最高師範セミナーを総本部道場で受けることとしました。
広く皆様に参加していただきたく、告知をいたしましたが、バス乗車人数の関係から、バスでの参加者をこちらで人選させていただきました。もちろんマイカーでの参加もOKですので、参加希望がございましたら、お声がけください。
夏は車を複数台出せるようにしたいと思っていますので、もう少し参加人数を増やせるかと思います。
■ 大阪大会 ■
今年は昨年以上に試合に参加しようとも目論んでいる私の今年の第一戦目は新潟での新年会の翌日、大阪で行われた大会でした。私の部門は午後からだったのと、新潟から飛行機が大阪まで飛んでいるので、前日、新年会に参加し、閉館となってします湖畔に宿泊し、朝の便で向かいました。
大会は、壮年のカテゴリーは、くじ引きで対戦者が決まったり、急きょ3位決定戦も創設されたりと、なんとも楽しい大会でした。私の初戦は、ぜひ対戦したい先生だったので、負けましたがすごく楽しく戦うことができました。
この壮年の大会では貴重な素手素足でした。やはり私たちの行っている「フルコンタクト空手」は素手素足が醍醐味なので良いですね。
主催の先生とも「素手素足は良いですね。防具付きは、自分自身が痛くないので、やたらと突いたり蹴ったりできますが、素手素足だとちゃんと狙って突いたり蹴ったりしないと自爆するので、ちゃんと出来ますね」と話していましたが、やらかしましたね。自分で言っておきながら自爆を実践してしまうとは…。相手の奥足に右足でインローを放った際、相手の前足が出てきているのを気づいているのに止めもせず「ええぃ、いってしまえー」とばかりに思い切り蹴って、右足の指先で膝を蹴ってしまいました。おかげで、めでたく小指の付け根の関節の所を骨折してしまいました。自分で言っていてこれですから、恥ずかしくて言葉が出ません。
試合が終わり、少し歩くのが痛いかな?でも内出血とかしていないし、腫れていないので大丈夫かな?と思っていたら、大阪空港で帰りの飛行機を待っている際、段々と内出血と腫れが…。これはまずいなと。東京駅では痛くて脂汗が出てきました。
三週連続の試合の初っ端からのケガでお恥ずかしい。休み明けに整形外科を受診したら、ギプスシーネと松葉づえを渡される始末。それでも先生にあと二週連続で試合があることを伝え、テーピングの固定の仕方を教わりました。肋骨や大きい骨の骨折と違い、足の小指は相手に攻撃される心配がなく、自分が気を付けていれば良いし、立つことができるので、この後の試合を棄権するという考えは、全くなかったです。
■ 統一大会 ■
そうして迎えた、記念すべき極真の第一回目の統一大会。テーピングをして試合に臨みましたが、踏ん張りが効かない。痛めた右足を崩されまいと体重をかけ過ぎで、逆に右足を崩されるという、中盤まで距離感などに悩みつつの組手。得意な右足は足先を当てられないので、慎重にスネを当てるローキックしか使えません。得意とする奥足へのインローは足先が当たる危険があるので、使えません。と言いつつ2回ほど蹴っていました。後半、パンチで応酬しましたが残念な結果となりました。
この大会はYouTubeで解説付きのライブ配信をされていたので、帰ってから見ましたが、自分の試合が解説されているはすごく新鮮でした。
■ 関東マスターズ ■
私の3戦目、今回は私のことより、小野浩二さんの進化に驚きました。そして感動しました。
小野さんは、三人の総当たり戦でした。一戦目は、ほぼ相手を追い込み、勝利しました。二戦目の相手は、昨年のこの大会で、手も足も出なかった相手。しかし、今回は見事にくらいつきました。後半追い込み相手を下げる場面も見受けられ、素晴らしい戦いをしてくれました。やはりシニアの鏡です。表彰は優勝者のみでしたので、表彰はされませんでしたが、見事に第2位です。
この素晴らしさを伝えたく、木村最高師範にも動画を送り、見ていただき、メッセージをいただきました。
「動画拝見致しました。何事にも逃げずに真っ向から向き合う姿勢が組手から見て取れますし、彼自身も真剣に取り組む性格なんだなと男として尊敬します。正に幾つになってもできる武道を小野さんが証明してくれたようです。小野さんに、お疲れ様でしたとお伝えください。」
本当に素晴らしいですね。
結果は、望月正臣さんは士衛塾山梨として挑んだ初めての試合、見事に優勝をしました。初戦は緊張し硬さが目立ちましたが、危なげなく勝利しました。すごいです。おめでとうございます。
私は、何とか2試合勝てて優勝させていただきました。一人は昨年の東都大会で敗退した方だったので、これで一勝一敗です(笑)
試合という目標を持ち、勝つために一生懸命練習することは、人を成長させます。
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