~ 士衛塾空手を通して、伝えたいこと 49 ~

伊藤龍吾

伊藤龍吾

テーマ:伝えたいこと


士衛塾山梨の門下生に向けた、私からのメッセージを転載します。

2021年 9月号 士衛塾山梨ニュースより

この間感じたことなどを、こちらに書いています。ぜひ、皆さまご一読いただければ幸いです

■ コロナ禍のなかで ■
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらずに、昨年の夏よりも感染者は多く、増え続けています。緊急事態宣言下で東京オリンピックを行う一方、部活動の中止、不要不急の外出の自粛など子どもたちは我慢を強いられています。そして、みんな日々感染のリスクと戦いながら過ごしています。
 7月30日付の山梨日日新聞に、私の仕事で調査・報道発表した記事が掲載されました。内容は、「2020年度学校健診後治療調査」結果です。
 これは、山梨県内の 公立、私立の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校302校を対象に、学校での健診(歯科、眼科、視力、聴力、内科)を受けた人数、その内要受診となった人数、要受診判定後に受診した人数を調査したものです。
 コロナ禍の中で、学校健診で「要受診」となったにも関わらず医療機関を受診していない「未受診」の割合は、2019年度調査に比べ多くなっています。山梨はもとより、全国的にも新型コロナウイルスによる影響については、40.3%の学校が「影響があった」と回答しました。影響事例は、「肥満児童・生徒の増加」、「視力低下」、「保健室登校の増加」「虫歯のある児童・生徒の増加」など多数報告されました。また、不登校、授業に欠席ぎみ、登校をしぶる児童・生徒が多くいるとの声が養護教員から寄せられています。さらに、学校休校中の運動不足などに起因すると考えられる骨折などの怪我の増加、心身における体調不良の増加が指摘されました。学校休校中、ゲームなどのメディアに費やす時間が増加したことで 生活リズムの乱れや視力低下として影響が出ているとの声が寄せられました。歯科では、全体的に口腔内の状況が悪化し、虫歯のみでなく歯垢の付着や歯肉炎が増加していると指摘されています。「コロナ感染が不安」であることを理由にした受診控えも多く発生していたとの報告が寄せられました。
 調査結果の一端にもみられるように、長引くコロナによる活動の制限や自粛は、子ども達の心身にもその影響を及ぼしています。

■ 活動の場を開放したい ■
 前述の調査結果にみられるように、心身ともに健全に発達するために必要なものの中には、非日常ではなく日常を過ごすことや適度な運動が必要だと考えます。
 道場では、もちろん感染防止対策をしっかりと講じながら、練習との両立を行っていきたいと思います。でき得る限りの対策をとるため、練習の変更など、ご不便をかけておりますが、できるだけいつも通りに子どもたちや門下生が集い、活動、いや、暴れられる(笑)場を開放したいと考えています。合宿や大会についても同様の考え方です。

■ 「越山魂」のワッペン ■
 士衛塾のワッペンの中で、時折、空手衣の背中に「越山魂」と書かれたワッペンを目にすることがあります。この「越山魂」には、木村越山総裁の魂はもちろん、険しい越後の山々を乗り越える「力」が背中のワッペンに込められています。このワッペンを背負うことが出来る条件は、
①原則、茶帯以上
②練習用ではなく、試合用の道着につける
③全日本や世界大会に出る
④これらを総合的に判断し、私が認めた者 が付けることが出来ます。このワッペンを背負う空手衣には、他のワッペンは不要です。
 山梨でも限られた人にしかこのワッペンは許可していません。ぜひ、士衛塾の魂を背負い戦える人になってください。

■ 空手衣は心を写すカガミ ■
 これを書いている時は、もう少しで夏期合宿という時です。【いや、中止になってしまいました】私は、合宿・試合・イベントなどオフィシャルな場に出る際は普段の練習用の空手衣は着ません。しっかりとクリーニングやアイロンがけをしたものを着用します。合宿が二日間あれば当然二着持っていきます。一日目で大量の汗をかいたものを二日目に着るのは、私はちょっとできません。なによりキレイでシワの無い空手衣に袖を通すと、買ったばかりの空手衣に最初に袖を通す時の気持ちになれます。しかし、いくらアイロンがけやクリーニングをしても一度袖を通してしまえばシワシワです。だからこそ、見た目ではないのです。そういう空手衣を着るという心が大事です。例え空手衣はシワシワになっても、その人のココロは綺麗に筋かしっかり通ってパリッとしているはずです。また、成長に伴い短くなった空手衣は、非常に恥ずかしい恰好だと思ってください。
 空手だから「まぁ良いか」ではなく、礼儀や躾を教える空手だからこそ、身なりをきちんとしましょう。

■ 空手の楽しさ面白さと奥深さ ■
 試合などのルールのある競技としての空手はとても面白いです。お互いに安全かつ平等なルールの上で勝敗を決します。最初からはなかなか勝てません。諦めずに頑張っただけ強くなります。なかなか勝てない人は、その大会に向けた練習のポイントが少しズレているか、練習量が足りない人。やはり圧倒的な厳しい練習量が勝ちに繋がります。
 その大前提となるのが基本などの土台となるもの。これは本当に難しい。奥深い。突き詰めようとしても、底が見えない。だから面白いし、探求していくことが楽しい。技(技術)はいくら磨いても完璧はないし、完璧と思っても、まだその上がある。空手の本当の楽しさや面白さは基本にあると思います。
 軸の作り方、その動かし方、重心の意味、呼吸のコントロール、相手との同調等々学ぶべきものはたくさんあります。例えば、呼吸について。日常的に呼吸は意識しなくても自然と行われます。これを意識して行います。簡単な例では「深呼吸」。深―く息を吸うと「心」が落ち着きますし、なんと体の90%以上をしめる毛細血管を通って身体の先端のまで酸素が運ばれ「身体」も活性化されます。まさに「心と身体」に作用します。呼吸をコントロールすることで、自分自身をコントロールできます。また、相手の呼吸を読んだり、合わせることもできます「息がぴったり」ということです。しかし、呼吸は吸うことだけに意識がとらわれがちですが、実は吐くこともとても大切です。しっかりと吐ききること。その上でしっかりと吸うことです。これ「息吹」です。
 呼吸だけでなく、軸や重心なども同様に、普段意識していないことを意識下に置くことで人の体の底知れないパワーを体験できます。
 空手を通して、たくさんの自分の体の神秘さを学べます。これはすごいです。
 子どもには子どもの空手、30歳には30歳、50歳には50歳、60歳には60歳のそれぞれの空手があります。私も30代よりも体力は明らかに落ちましたが、技の深さやその他のことは計り知れないくらい成長しました。始めるのに遅いとかもないです。幼児でもお年寄りでも何歳でも、思った時が始める時です。

■ 今は耐える時、しかし攻める時 ■
 新型コロナの影響で、予定したものは急きょ実現できないなど色々なことが思うようにいきません。自粛や部活動の禁止など、我慢をしなければなりません。今まさに「押忍」の精神を発揮する時です。以下引用を掲載します。
(武道家の心構えです)
耐えがたきを耐え 忍びがたきを忍び
押さば押せ 引かば押せ
これすなわち 自己滅却の精神也
我が道に いかに険しき山あれど踏みてぞ越えん
押忍の精神

 「押忍」とは「押」と「忍」の二文字より成り立ち、その内、忍とは刃に心と書く。刃(カタナ)とは日本武士の魂であり、我々にしてれば拳技こそが刃である。研いていない刃は鈍ら(ナマクラ)であり、イザという時に本来の役に立たない。同様に拳技も日頃より、研き、鍛えておかねばならないのである。
 当然、切れ味鋭い刃は武器にもなるが、凶器にもなり得る。刃は抜身であってはならない。武士は普段は刃を鞘に収め、無闇に抜き放つことはあってはならないとされていた。空手も同様、真に必要な時以外にはその拳技を振るってはならない。蛮勇で振るった技はすでに拳技ではなく、凶器に過ぎない。心という鞘に収めて制御してこそ「技」である。故に刃と心は合わせて一字で忍と書く。
 その「技」と「心」を以ってして、何を「押」えるのか?当然、自己に未熟と他者の不当な侵略や暴力を押さえ止めるのである。自身を護り、かつ仲間を護る護身の術、精神に他ならない。押忍とは武の精神の表れであり、武とは二つの弋を止めると書く。

 耐える中で、今できること見つけ出し、一生懸命に取り組む。以前の試合がなかった時、このような状況だからこそ士衛塾山梨としても様々な新たな取り組みができました。競技としての空手ではなく、武道としての空手を取り組むことができました。それは、今も生きていて大きく花咲こうとしています。耐えに耐えてどんどんと小さくなってしまうのではなく、耐えつつも、「今だからこそ」できることを探すアンテナ、実践する行動力が欲しいところです。
 「攻める姿勢」はとても大事です。組手と一緒です。相手の攻撃を防御しているだけでは勝てません。攻撃という攻めることが勝ちにつながります。
 忍耐こそが自分自身にエネルギーを蓄える時、耐え忍びながらも様々なアイデアでできることをやり尽くす。ここが何もしない人との差がつく時です。まだまだ、やれること、やっていないことはたくさんあるはず。それを探し実践することもまた楽しいです。

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伊藤龍吾
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伊藤龍吾(格闘家)

新國際空手拳法道「士衛塾」山梨県支部

世界大会入賞者を多数持つ士衛塾では、初心者から上級者まで、目的に沿った指導ができます。指導者はプロとして自覚と誇り持ち、常に研究と勉強・実践を怠りません。一流の道場からは一流の選手が育ちます。

伊藤龍吾プロは山梨日日新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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