27年間ANAのCAとして培った接遇ノウハウを伝授するプロ菅又蒼圭美

27年間ANAのCAとして培った接遇ノウハウを伝授するプロ

菅又蒼圭美

客室乗務員や管理職としてのキャリアを生かし、企業に合わせた実践的な研修を展開

　「国際線チーフパーサーとして培ったノウハウを基に、『お客さまに感動していただけるサービスとは何か』をひも解き、ビジネスシーンなどで生きるスキルを細やかにレクチャーいたします」

　そう語るのは、企業向けの「接遇＆おもてなし研修」や一般向け「女子力アップセミナー」などを主催する「グリーンフォレスト」代表の菅又蒼圭美さん。27年間勤務した全日本空輸(ANA)を退社後、ホスピタリティ・コンサルタントとして活動しています。

　「独立後、初めて講師を務めたのが北杜市の市民講座です。笑顔の作り方や立ち振る舞い、コミュニケーションの取り方、メイク術を学ぶ全4回の『女子力アップセミナー』は、地元で接客業を営む男性が参加するなど、大変好評をいただきました」

　初回の成功を皮切りに、自治体や企業、高校から依頼が数多く舞い込むようになりました。
　「客室乗務員として接遇力を磨き、管理職として延べ1000人の部下の労務管理を行い、マネジメント力を養ってまいりました。特に若い社員など、現場の声を反映させたサービスマニュアルを確立し、労働組合で構築した労災対策で表彰されたこともあります。私が持つ知識や技術が、なにかしら組織の課題にお役に立てると思っています」

　菅又さんは、クライアント企業に合わせて内容をカスタマイズ。経営者からは「話が合理的で分かりやすい」との評価も。その理由を「私自身、あまり気が利く人間ではないので、どうしたらお客さまに気持ちが伝わるのか、失敗を重ね恥をかきながらも一生懸命に考えて行動に移してきたからではないでしょうか」と分析します。

「好感」「満足」「感動」をもたらすサービスが学べる「接遇＆おもてなし研修」

　菅又さんは、「接遇＆おもてなし研修」を3段階に分けています。レベル1は、基本的なマナーを備え、清潔感のある身だしなみで、相手に好感を持ってもらえるサービスができることです。
　「レベル2になると、それより一歩進み、お客さまのニーズをくみ取り『満足していただくサービス』を提供すること。レベル3になると、お客さまの予想を超えた『感動をもたらすサービス』へとステップアップします」

　レベル3のサービスとして、自身が乗務時に実際に行っていた具体例を挙げます。
　「国際線の日本到着便で、お薬を飲んでいるお客さまがいらっしゃいました。機内では、CA（客室乗務員）全員で情報を共有し、席の近くを通った際に『ご気分はいかがですか？』と、お声掛けします。これだけでもお客さまは驚かれます。その方は乗り継ぎの予定があったので、地上スタッフや次にお乗りになる飛行機のCAにも、体調がすぐれないことを引き継ぎます。すると、空港で待っている間や、乗り継ぎ便に搭乗してからも、ご本人を見守ることができるんです」

　乗客は体の調子が悪く不安がある機中で、CAの温かい対応に深く感じ入ることとなり、「こんなに素晴らしい気遣いを受けた」と知人に共有します。これがいわゆる、本当の意味での口コミです。

　「レベル3はそう頻繁に起きるわけではありません。ですが、うわさを聞いてANAを選んでくださったお客さまに、レベル1やレベル2の好感度や満足度の高いサービスを常にきちんとお届けできれば、期待を裏切ることはないんです」

中高齢者の接遇研修を実施し、深みのあるサービスが受けられる地域づくりを

　身なりや所作といった「形」より、接遇の「心」について教えてほしいとリクエストされることもありますが、「お客さまを歓迎して、おもてなしをする形」を身に付けることは、とても大切だと強調します。

　「心構えについて説明しても『いい話を聞いた』で終わってしまいます。シチュエーションに応じた礼儀作法や身だしなみ、アイコンタクトなどは、すぐに実践できます。自分の行動を変えることで、お客さまの反応が違ってきます。それが接遇の面白さや、やりがいにつながるんです。形に心が伴っていくのです」

　多くの実体験に基づいた菅又さんの言葉には説得力があり、世代や性別を超えて心に響きます。例えば、コミュニケーション研修を受けた地域の80代の女性が「これからの人生がすごく楽になりました」と喜んでくれたそうです。

　「相手を傷つけず、そして自分も気持ちよく会話するにはどうしたらいいかをお伝えしました。生き生きとした表情になった女性の様子から、今までコミュニケーションで苦労されてきたのかと想像して胸が熱くなりました」

　キャリアコンサルタントの資格を持つ菅又さんがこれから取り組みたいのが、人生経験を生かした、中高齢者に向けた接遇研修です。自治体と一緒に、人生100年時代を楽しめる地域づくりに貢献したいと抱負を語ります。

　「さまざまな経験を積んできた方々が、接遇マナーをちょっと学んだら、深みのある心遣いができるようになります。成熟した世代から、相手をおもんぱかるサービスを受けられる社会はとても豊かですよね」

（取材年月：2022年8月）

国際線チーフパーサーとして得た接遇のノウハウを伝え、笑顔のあふれる豊かな社会に

客室乗務員や管理職としてのキャリアを生かし、企業に合わせた実践的な研修を展開

「好感」「満足」「感動」をもたらすサービスが学べる「接遇＆おもてなし研修」

中高齢者の接遇研修を実施し、深みのあるサービスが受けられる地域づくりを

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