東日本大震災から13年
今年も夏の甲子園が始まり、連日、高校球児たちの熱戦が繰り広げられています。
その一方で、広陵高校野球部における暴行問題が話題となりました。
報道によれば、部内のルールを守らなかった下級生に対して上級生が暴力を振るったとのことです。
詳細は当事者以外にはわかりませんが、この出来事は「しっかりした組織に潜む暴力性やハラスメントの構造」を考えるきっかけになります。
「良い攻撃性」と「悪い攻撃性」
暴力を生む心性は攻撃性です。
心理学者エーリッヒ・フロムは、人間の攻撃性には二つのタイプがあると指摘しました。
◇良い攻撃性
:生命や安全を守るために発動される防衛的な攻撃性。
危険が去れば収まり、長期的な破壊衝動にはつながりません。スポーツで「もっとアグレッシブに行こう!」と檄を飛ばすのも、この範疇です。
◆悪い攻撃性
:生存とは関係なく、支配や破壊そのものを目的とする攻撃性。怨恨や恐怖、不安、ストレスが背景にあり、意図的かつ人間特有のものです。
しっかりした組織で暴力が起きるとき
実績を重ね、ルールや上下関係が確立している組織ほど、内部の文化や慣習は強固になります。
「強い身体づくりのためにインスタント食品は禁止」など、一般家庭では考えにくいルールも、組織の文化として大切に守られるでしょう。
こうしたルールを守らせようとする行為は、本来「組織を守る良い攻撃性」です。
しかし現実には、相手を屈服させたり精神的・身体的に傷つけたりする「悪い攻撃性」が混ざりやすく、それが暴力やいじめ、ハラスメントにつながってしまいます。
悪い攻撃性と相性の良い「権威主義」
成果を出し続ける組織では、文化や慣習を守るための権威が高まります。
メンバーはその権威に従い、リーダーは権威によって秩序を維持します。これは組織運営に必要な側面もありますが、同時に権威主義という危険な構造を生みやすくなります。
権威主義は、支配と服従の関係を強化し、悪い攻撃性と結びつきやすいのです。
さらに、権威に従っていれば安心できるため、一度そこに慣れると離れることが難しくなります。
自由からの逃走と大人のメンタルヘルス
権威ある組織に身を置きながら、その在り方に疑問を持ったとき――いざ離れようとすると、安心感を失い,強い不安が押し寄せます。主体性が十分に育っていなければ、その不安に耐えられず、再び服従の中に戻ってしまいます。
エーリッヒ・フロムは、この心理を『自由からの逃走』と呼びました。
これは転職や退職の場面,さらに,本来の自立や依存の問題の場面にも当てはまり、「本当は変わりたいのに現状に留まってしまう」という大人のメンタルヘルスの重要な課題の一つです。
権威や組織文化は組織を守るために必要ですが、悪い攻撃性や権威主義と結びついたとき、大人の心にまで影響を及ぼします。
暴力やハラスメントを防ぐためには、組織と個人がともに「良い攻撃性」を活かし、主体性を育てていくことが欠かせません。
メンタルヘルス対策は,社員の主体性を育てることに役立ちます。
そして,「自由からの逃走」の課題を乗り越えるための最良の方法が心理カウンセリングです。
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