生成AIと人間の役割分担で変わる、中小企業の帳簿づくり
「今期は利益が出ていますね。」
決算報告の際にそうお伝えすると、社長からこんな言葉が返ってくることがあります。
「先生、黒字なのは分かるんだけど、なぜかお金がないんだよね。」
実はこれは珍しい話ではありません。むしろ中小企業ではよく見られる現象です。
今回は「黒字なのにお金がない会社」がなぜ起きるのか、その原因と確認方法について分かりやすく解説します。
利益とお金は別物
まず理解していただきたいのは、「利益」と「預金残高」は全く別のものだということです。
例えば100万円の商品を販売した場合を考えてみましょう。
商品原価が60万円であれば利益は40万円です。
しかし、その100万円をまだ回収していなければ会社の預金は増えていません。
つまり、
利益は増える
お金は増えない
ということが起こります。
会社経営では「利益」だけでなく、「お金の流れ(キャッシュフロー)」を見ることが重要なのです。
貸借対照表を見る習慣をつけよう
多くの経営者は損益計算書(P/L)の売上や利益には注目しますが、貸借対照表(B/S)はあまり見ていません。
しかし、お金の状態を把握するためには貸借対照表の確認が欠かせません。
特に次の項目を確認してみてください。
① 売掛金が増えていないか
売掛金とは、売上は計上したものの、まだ入金されていないお金です。
例えば
売上1,000万円
入金700万円
なら300万円が売掛金になります。
売掛金が増え続けると利益は出ていても現金は不足します。
前年と比較して売掛金が大きく増えていないか確認してみましょう。
② 在庫が増えていないか
在庫も要注意です。
商品を仕入れた時点ではお金が出ていきます。
しかし販売されるまでは費用になりません。
そのため、
お金は減る
利益にはまだ影響しない
という状態になります。
特に製造業や小売業では在庫の増加が資金繰り悪化の原因になることがあります。
③ 借入金がどれくらい残っているか
貸借対照表の負債の部に借入金が記載されています。
会社の資金繰りを見るうえで非常に重要な数字です。
利益が出ていても借入金の返済額が大きければ預金は減っていきます。
減価償却費と借入金返済の関係
ここで多くの経営者が混乱するポイントがあります。
それが「減価償却費」です。
例えば500万円の機械を購入したとします。
購入した年に500万円全額を費用にするのではなく、耐用年数に応じて毎年少しずつ費用化します。
仮に10年償却なら、
毎年の減価償却費50万円
となります。
ここで重要なのは、
減価償却費はお金が出ていかない費用
だということです。
機械購入時に500万円はすでに支払っています。
毎年計上される50万円の減価償却費は会計上の費用であり、実際のお金は出ていません。
そのため、
利益100万円
+減価償却費50万円
であれば、本来は150万円程度の資金を生み出していると考えることができます。
それでもお金が残らない理由
問題は借入金の返済です。
先ほどの機械を銀行借入で購入したとしましょう。
年間返済額が120万円の場合、
利益100万円
減価償却費50万円
借入返済120万円
となります。
資金の増加額は
150万円-120万円=30万円
です。
もし返済額が180万円なら、
150万円-180万円=▲30万円
となり、黒字なのに預金は減少します。
ここが経営者の方が最も誤解しやすいポイントです。
借入金の返済は利益計算上の費用ではありません。
そのため損益計算書には表れませんが、実際にはお金が出ていきます。
簡単な目安
私はお客様に次のような見方をおすすめしています。
毎年の
税引後利益+減価償却費
と
借入金元本返済額
を比較してみてください。
例えば
税引後利益 300万円
減価償却費 200万円
借入返済額 400万円
なら、
300万円+200万円-400万円=100万円
です。
資金は増える可能性があります。
一方で、
税引後利益 100万円
減価償却費 100万円
借入返済額 300万円
なら、
100万円+100万円-300万円=▲100万円
となり、黒字でもお金は減少します。
まとめ
黒字なのにお金がない会社が生まれる主な原因は、
売掛金の増加
在庫の増加
借入金返済の負担
です。
そして、その状況を把握するためには損益計算書だけでなく貸借対照表を見る習慣が欠かせません。
会社経営において本当に重要なのは「利益」だけではなく、「お金が残る経営」ができているかどうかです。
毎月の試算表では、売上や利益だけでなく、
売掛金
在庫
借入金
預金残高
の推移も確認してみてください。
数字の見方が変わると、会社の経営判断も大きく変わってきます。経営者自身が貸借対照表を少しずつ理解し、お金の流れを把握することが、安定した経営への第一歩になるのです。


