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瓦葺の屋根構造と瓦漆喰(モルタル)の役割

原田誠

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テーマ:快適な生活送れる瓦屋根住宅

瓦は日本家屋の代表的な屋根材で、瓦屋根は古くから使われていて、現在でも多くの家を守り続けています。

家を新築する際には、屋根材を瓦にしようか別の素材を使おうかと迷う人もいると思います。そういった人に向けて、瓦についての基礎知識を中心に瓦屋根の特徴を紹介していきましょう。

瓦構造について

家の寿命というのは、屋根と基礎で決まると言われています。そして屋根は、家全体を雨風や太陽熱などから守る重要な役割を果たしています。そんな重要な部分に使われる瓦の選び方はとても大切です。

ひと口に瓦と言っても、その種類は形状や焼き方などによってさまざまです。それぞれで特徴は変わってきますが、瓦全体の特徴としては「他の屋根材と比べると耐久性に優れている」ということが挙げられます。

瓦の特徴と役割についてご説明します。

【耐久性・強度】
他の屋根材が約10年から20年で寿命を迎えるのに対して、瓦自体は半永久とされています。実際、メンテナンスしながらも1400年前の瓦を使用している建物が現存します。瓦は豪雪地域の積雪にも耐えられるだけの強度で家を守ってくれます。

【通気性】
瓦屋根は、瓦を1枚1枚重ねて構築していきます。瓦が重なり合ってできる山と谷の部分には自然な通気性があり、適度な換気を保ちます。これにより屋根裏の熱気や湿気を追い出してくれます。
また、屋根下地に断熱材を施工することで室内の熱損失を低減、四季を通して快適な居住環境を確保することができます。

【遮音性】
瓦は、物音を吸収してくれるという性能も持っています。激しい雨音も気にならないほどの静かさと言われ、これは瓦屋根ならではの特徴と言えるでしょう。

【断熱・耐熱&耐火性】
瓦はその形や工法上、屋根との間に隙間ができるようになっていて、この隙間にできる空気の層が熱を遮断してくれます。また、瓦自体が焼き物でできていることで、屋根材の中でも最も断熱性が高いのです。

1000℃以上の高温で焼成される瓦は、建築基準法で指定されている安全な不燃材でもあり、火事などの際の屋根からの類焼も防いでくれます。

【防水性】
前述したように高温で焼き締められる瓦は非常に硬度が高く、吸水率も低くなっていて、瓦に雨が染みたとしても雨漏りの心配はありません。さらに瓦の形状が水はけの良い形なので水切りの面でも優れています。

【日本家屋の美しさ】
和瓦屋根は、日本独特の形状です。
その柔らかい見た目には温かさと静かさが感じられ、古くから続く日本家屋の美しさがあります。

瓦の種類によるメリットとデメリット

瓦の種類は、主に「粘土系」と「セメント系」の2種類に分かれます。
さらにその中でも複数の種類があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。

【粘土系瓦】
粘土系は1000℃~1250℃ほどで焼き上げる焼き物の瓦のことです。そして同じ粘土系の中でもいくつかの種類に分かれています。

<釉薬瓦>
釉薬瓦は、瓦の形に整えた粘土に釉薬を塗って焼き上げた瓦です。瓦の表面にガラス質の釉薬層が形成されることで耐水性があり、無釉薬瓦と比べて耐久性が高くなります。
量産性と色の管理が容易なこともあり、瓦の種類の中でも数多く生産されています。

<無釉瓦>
釉薬を塗らずに焼き上げた瓦が無釉瓦で、「いぶし瓦」「素焼瓦」などがそれに当たります。
無釉瓦は釉薬瓦に比べると耐久性に劣ることがデメリットなのですが、意匠性やデザイン性に優れていることで、日本建築でも西洋建築でも長年にわたり愛され続けています。

「いぶし瓦」
焼き上げた後に燻すことで表面に炭素の膜を施した瓦です。太陽の光が炭素の膜に反射、光沢のある渋い銀色に輝く瓦で、お城や社寺などでよく使われています。

「素焼瓦」
焼き物の自然な風合いを生かした赤瓦が素焼瓦です。洋風建築に合うことから、ヨーロッパなどでもよく見かけます。

【セメント系瓦】
セメント系瓦は焼き上げて造る瓦ではありませんが、成形精度の高いことがメリットです。
ただし、経年劣化は避けることができないので、再塗装などの定期的なメンテナンスが必要です。

セメント系瓦には、フッ素樹脂などの塗料で着色するプレセメント瓦や、成形の後、乾燥する前に着色するコンクリート瓦などの種類があります。

瓦葺の屋根の構造と瓦漆喰について

【瓦葺屋根の構造】
瓦を用いた屋根仕上げのことを瓦葺屋根と言い、その構造は基本的に3層からなっています。

<1層目>
一番下に下敷きとして板を敷きます。これは野地板と呼ばれ、厚さは約9mm~12 mmの薄い板です。

<2層目>
野地板の上にルーフィングシートという、屋根の防水シートを敷きます。これは雨漏りなどを防ぐためには必要なものです。
ルーフィングシートにはいくつかの種類があり、そのグレードによって耐用年数が変わってきます。

<3層目>
いちばん上になる3層目に瓦を敷きます。
瓦は単に置くだけではなく、ルーフィングシートの上に桟木(さんぎ)という角材を取り付けて、桟木に引っ掛けるようにして瓦を重ねて釘やビス等で留め付けていきます。
ちなみに、所々に切れ込みが入っている桟木や、桟木とシートの間に流水テープなどを使用することによって侵入した雨水を下へと導く工法を行っています。

そして近年では、瓦1枚に対して1カ所以上を釘やビスで固定しています。こうすることで、地震の際の揺れによる崩壊を防ぐことができ、耐震性が強化されます。
また、台風時の瓦の飛散を防ぐことが出来ます。

【瓦漆喰とは】
瓦屋根には瓦漆喰というものがあります。漆喰とは主に白い塗り物のことで、この漆喰を瓦屋根に塗ることで瓦を固定します。
また、棟(屋根のてっぺん)部分や壁際なども漆喰などで固定されています。
東北の日本海側などでは凍害や塩害に考慮して、漆喰ではなくモルタルセメントが使われています。
近年では屋根の軽量化、メンテナンスのしやすさから漆喰・モルタルを使わない工法も主流になってきています。

漆喰は一般的には石灰に麻を加えて、草木や海草から取れる接着剤や水などを混ぜて練り上げてできています。
漆喰には瓦と瓦をくっつける接着剤の役割があり、特に台風の多い沖縄や姫路城では瓦屋根全体を漆喰で固める屋根も見られます。

また、漆喰やモルタルは環境によって異なりますが15年~30年ほどで落ち始めて、放っておくと雨漏りの原因になってしまいます。
隙間がひどくなれば屋根自体を傷めることにもなり、瓦の葺き直しなどが必要になる場合があります。

こういったトラブルを防ぐためにも、定期的に瓦の点検をしましょう。

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原田誠
専門家

原田誠(職人)

株式会社 原田瓦工業

屋根瓦工事は「丈夫で長持ち」との定評あり。神社仏閣の屋根瓦施工はもちろん、おしゃれな家にピッタリの個性豊かな屋根瓦、ガーデニングに最適な廃瓦リサイクル商品まで、身近な空間に新しい瓦の活用をご提案します

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