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「些細な無神経な行動が心の健康に及ぼす影響」

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング

心の健康についての最新のニュースを、英語で発信されているインターネットの情報を
駆使してお届けする連載の第三弾です。

今回は、「些細な無神経な行動が心の健康に及ぼす影響」についてです。
この研究結果は、私も会員であるアメリカ心理学会の今月(11月)の会報誌からです。

無神経な行動の例といえば、次のようなものです。

「すみませんが」と言わないでいきなり人に物事をたずねる。
何かしてもらっても「ありがとう」とお礼を言わない。
話している最中に携帯電話がなると、今までの話を無視して携帯で話し続ける。

これらの無神経な行動は、叫んだりわめいたりといったはっきりした非礼で攻撃的な
行動と比べると些細といえるかもしれません。

しかし、このような一見些細ともいえる無神経な行動が、心の健康に与える影響が意外と
大きいということが最近の研究で分かってきました。

一つの要因はテクノロジーの発達です。特に、インターネットと携帯電話の影響です。

○インターネットが無神経な行動に及ぼす影響

インターネットを使ってのコミニュケーション、特にソーシャルメディアといわれるものが
無神経な行動を助長するのは、一つにはその匿名性によります。

つまり、匿名が許される場面では、人は普段は言わない事でも言ったり発表したりしがち
だからです。これがいわゆるサイバー上のいじめにつながることになります。

ただし、匿名でないソーシャルメディア(例えばフェイスブック)であっても無神経な行動を
助長するという研究結果もあります。

つまり、ソーシャルメディアを通して見ず知らずの人と頻繁に意見を戦わすこと自体が、
ふだんの場面においても怒りの感情を不適切に表現したり、けんかに至りやすい行動を
助長し、心の健康に悪影響を与えるというのです。

また、インターネット上で、単にそのような攻撃的な言葉のやり取りを読むだけで、
読んだ人の気分に悪影響を与えるという研究結果もあります。

ところでこれらの結果は、感情を吐き出すことは心の健康に良い、と今まで一般的に
言われてきたことと相反します。

このことについてある研究者は、インターネット上で怒りの感情を吐き出すことは、一時的・
短期的には気分を静めリラックスさせるが、長期的に見ればそのような怒りの発散のやり方
は不健康であるといっています。

○携帯電話が無神経な行動に及ぼす影響。

道を歩きながらスマートフォンを操作していて通行の妨げになるとかの行動が最近問題
になっています。

しかし携帯電話の一番の問題は、他の人に会話の一方しか聞かせないということです。
これが他の人をすごくイライラさせるというのです。

ある研究によると、他人が携帯電話で話しているのを聞くのは、二人の人が会話している
のを聞くより気に障り、注意を妨げるということが分かりました。

その理由は、二人の人が会話しているのを聞く場合と違って、人が携帯電話で話している
のを聞く場合は、会話の内容の半分が分からないからです。つまり、携帯電話での向こう
側にいる人の言っていることが伝わらないということです。

ですから、側で聞いている者にとっては聞こえる話は通話者の会話だけで、その内容は
予測できない脈絡のないものとして聞こえ、そのことが必要以上に注意を奪ってしまう
というのです。

○私自身の考え

一見些細と思える無神経な行動が、実は心の健康に大きな悪影響を及ぼす理由は、
人は自分を無視したり尊敬しない行動に対しては、自分の存在意義を危うくするもの
としてより過敏に反応するからではないか、と考えます。

この無神経な行動に比べれば、面と向かって罵倒するような行動は、いくら過激でも
少なくとも相手の存在を認めている訳ですから、逆に納得しやすいとも言えます。

つまり、心の健康にとって最も良くないのは、表立った攻撃的行動よりも、一見些細に
見える相手を無視する行動ではないかと思います。

とすれば、自分で気付かないうちに誰かを傷つけていないか、を振り返ってみるのも必要
ではないかと思います。

なお、出典は次です。
http://www.apamonitor-digital.org/apamonitor/201311?folio=34#pg39
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この内容は、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!大人のメンタル
ヘルス」(毎週水曜朝8時30分・木曜午後4時30分(再放送)でも今週話しています。

うつ心理相談センター
村田 晃(心理学博士)

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村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

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