「ゴールデンウィークの憂鬱」について
「気候と気分の関係」の心理学について、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!大人のメンタルヘルス」(1月25日水曜)で話しています。
季節も大寒を迎え、いよいよ冬の寒さも本格的となり、特に富山県では雪空が続くことが予想
されます。
そこで今回は、気候(天気)と気分の関係について心理学的な面から考察してみたいと思います。
気候(天気)が気分に影響する、気分は気候(天気)に影響されるとはよく言われていること
です。
では本当にそうなのでしょうか。
いろいろな心理学的な研究によると、気候(天気)と気分との関係を肯定するものが多いよう
です。もちろん一部関係を否定する研究もありますが。
それによると、特に湿度・気温・日照時間が気分に影響するとのことです。
例えば、高い湿度は集中力を低下させ、眠気を催させる。
気温の上昇は不安や懐疑心を低下させる。一方気温が高くなると攻撃(暴力)的になる。
日照時間が増えると楽天的な考えが増加する。などです。
季節と気分との関係では、春のような快適な気候は、いい気分・良い記憶及び柔軟な思考
と関係していることが認められました。しかし、他の季節(夏・秋・冬)ではこのような
関係は認められませんでした。
しかし、うつには季節性のうつ(Seasonal Affective Disorder: SAD)というのがあります。
特に冬に起きやすいものです。これは、冬は日照時間の短くて寒く、春のような快適な気候
状態に特に欠けていることが関係していると考えられます。
ちなみに私自身、1996年に米国ウイスコンシン州滞在中、季節性のうつと診断されました。
ウイスコンシン州はカナダに近くて普段でも冬は寒いのですが、その年は何十年振りの寒波
とのことで零下30度位まで気温が下がりました。
私は在学していたウイスコンシン大学大学院の冬休み中で、アパートで独り暮らしをして
いましたが、外にも出られず気分が落ち込み、大学の診療所へ行きました。そこの精神科医は
私を季節性のうつと診断し、抗うつ薬を処方すると共に「光療法(Light Therapy)」を勧め
ました。
光療法とは、非常に明るい蛍光灯のパネルのまえに一定時間(30分とか)座っているもので、
冬場の日照時間の不足を人工的な光で補うものです。
とすれば、冬場の季節性のうつは日照時間が長くなる春が来ると共に自然と無くなるはずですが、
私の場合はそうではなく、結果的に季節性のうつではないと分かりましたが。
ところで、以前にうつと自殺は強い関係があると述べました。つまり、自殺した人のなかには
うつになっていた人が多いということです。
そして、このような冬場のうつといった季節性のうつのように、気候とうつが関係あるとすれば、
寒冷・温暖といった気候と自殺率とは関係があることが予想されます。
そのため、最新(平成23年板)の政府の「自殺対策白書」で、都道府県別の自殺率の統計を調べ
ましたが、結果は必ずしもそうではありませんでした。
北海道や東北地方、新潟・富山といった北陸地方は確かに自殺率は全国平均を上回っています。
しかし同時に、沖縄・高知・九州の大部分の県など日本の南に位置する県も自殺率が全国平均
よりも高くなっています。ですから、気候と自殺率の関係は一概にはいえません。
自殺に関しては、気候よりも大きな要因は経済変動だと思います。日本の自殺の統計でいわゆる
働き盛りの中高年の男性の自殺率が際立って高く、特に不景気に高いのはそのことを端的に示して
いるといえます。
以上、気候(天気)と気分の研究においては、一般的には気候(天気)が気分に良い影響を
与えるよりも悪い影響を与える方が多いとのことがいわれています。
しかしながら、実際には人間が、北極に近い極寒の地を含めて気候の厳しい地域(富山県の
ような豪雪地域も含めて)にも住みつき生活していることをみれば、人間というのは悪い気候を
上回って適応できる力を持っている生物といえます。
結論として、気候(天気)は確かに気分に影響はするが、それはあくまで限定的で、人はそれを
超えて適応できる力をもっていると私は考えます。
皆さんはどうお考えでしょうか。
皆さんからの番組へのEメールをお待ちしています (直接、エフエムいみず へどうぞ)。
http://www.fmimizu.jp/
なお、この番組の最後に流れる曲、「心」(釈 敏幸作詞・作曲・唄)については、以下のYouTube
で全曲が聴けます。釈 敏幸さんは、統合失調症を抱えながら音楽活動を続けていらっしゃいます。
http://www.youtube.com/watch?v=c4PXxh3raLU
うつ心理相談センター所長
心理学博士(PhD University of Denver USA)
村田 晃