Mybestpro Members

村田晃プロは北日本新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

「先延ばし」の心理学

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング

「先延ばし」の心理学について、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!
大人のメンタルヘルス」(1月11日水曜)で話しています。

年の初めに今年の目標を立てられた方も多いと思います。その時、実行するのは「まあ、
明日からでいいや」ということにはならなかったでしょうか。

このいわゆる「先延ばし」(英語でprocrastination)という行動ですが、定義としては
一般的には、「大事なことを先延ばしすること」といえます。
具体的には、お正月のための必要な買い物などをぎりぎりまでしない、とか、試験勉強を
その前夜までせず一夜漬けする、とかです。

この傾向は意外と一般的で、心理学の面からもいろいろ研究されています。(20%の人は
慢性的な「先延ばし」の傾向を持っているという研究もあります。)

私自身も、米国デンバー大学大学院博士課程在学中に、カウンセリング心理学の博士論文に
着手するのをとかく「先延ばし」しようとして、いかに締切期限までに仕上げるかで苦労し
ました。実は他の多くの学生も同じような悩みを持っていましたが。

○「先延ばし」の歴史
 この「先延ばし」の傾向は人間の歴史では結構昔からあったようです。

 紀元前1-2世紀に書かれたユダヤ教の文献に既に「時間が空いたら勉強するというな。
何故なら何時まで経っても時間が空かないだろうから」と、「先延ばし」を戒める記述が
あるそうです。

 更に、進化論の立場からは、この「先延ばし」の傾向はもっと古く、人類の起源にさか
のぼるという考えもあります(これについては後ほど詳しく述べます)。
 
○「先延ばし」する理由
 それでは、人は何故大事な物事を先に先にと延ばすのでしょうか。
 これについては心理学的にいろいろな説明が行われていますが、その主なものを挙げて
みます。

1. 時間管理の下手
2. 集中力のなさ
3. 完璧主義
4. 強い不安感
5. 自己否定的な考え
6. 課題に興味が持てない
7. 人間の進化に由来

1の時間管理の下手というのは、①残り時間が十分あると過大に考えること、②少ない時間で
課題を完成できると自分の力を過大評価すること、が挙げられます。

3の完璧主義というのは、100%完璧でありたいと思うあまり、少しの失敗も恐れて課題に
手がつけられずに先延ばしするということです。ちなみに私自身もこの傾向があると思い
ます。

4 の強い不安感というのは、課題を過剰に大きくとらえてしまう結果、やる前から不安感が
先だってしまって前に進めない、というものです。

5 の自己否定的な考えというのは、やる前から「自分はダメだ、できない」と思ってしまって
課題に手が付けられない、ということです。

ちょっと面白い説明は、7の「先延ばし」は人間の進化に由来しているというものです。
これはどういうことかというと、人類は歴史的にはごく最近まで生き延びるために日々狩猟・
採集に追われる生活をしていた結果、目先の生存に直接関係ない課題は後回しして先延ばし
してしまう傾向に元々ある、というものです。

また、「先延ばし」を文化の違いの面から捉え、それは必ずしも悪いことではない、とする
見方もあります。

例えば、あるフランス人は「先延ばし」は一種の芸術(art)ととらえ、それは効率だけを
無条件で是とする考えに対する問題提起だとし、2011年3月26日を「国際先延ばしの日」と
することを提案したそうです。
ちなみにこの話には更におちがあって、実際にはその日は4月4日まで「先延ばし」された
そうです。

実際、物事をしばらくほおっておくと、自然と本当に必要な事柄とそうでないものが淘汰
されてくる、という利点はあると思います。

ただ、実際の日常生活では過度の「先延ばし」はやはり問題を起こすので、避ける必要がある
でしょう。では、どのような方法があるでしょうか。

○「先延ばし」の傾向に対する対応策
1. 現実的な目標を立てる
余り大きすぎる目標は負担になってかえって意欲をやる気をそぐ恐れがあると思います。

2. 課題を小さいものに分けて一つ一つ解決していく。
このことは、特に非常に大きな課題に取り組むときに有効だと思います。長期的な課題
でも、日々やることを具体的に決めてやっていくようにすれば、課題に圧倒されてしまう
ことも防げるのではないかと思います。そして小さな課題を達成するごとに自分にご褒美を
やるようにすれば、もっといいと思います。

3. 課題が自分にとってどのような意味をもっているかを常に確認する。
自分のやっていることの意味があいまいになれば、当然やる気も薄れると思います。
ですから、やっていることの意味を常に確認することは非常に大事と考えます。

4. 最後に、何と言っても、「何もしないよりは一つでも何かしたほうがいい」と考え、
とにかく何かをやる、ということではないか、と思います。

ただ、分かっていてもそれが出来ないのが、慢性的に「先延ばし」する人の人たるゆえん
ともいえますが。

皆さんはどうお考えでしょうか。

村田 晃
心理学博士(PhD University of Denver USA)
臨床心理士、富山県スクールカウンセラー

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究。

村田晃プロは北日本新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

心理相談・カウンセリングのプロ

村田晃プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼