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「自殺」そして「適応障害」~心の健康についての2011年の重大ニュース (2)

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング

「自殺」そして「適応障害」について、エフエムいみず(79.3MHz) の私の番組、「心に元気を!
大人のメンタルヘルス」(12月28日水曜)で話しています。

「心の健康についての2011年の重大ニュース」の第二弾として、今回は「自殺」と「適応障害」を
取り上げてみたいと思います。

○まず「自殺」ですが、残念ながら2011年も自殺者が全国で3万人を超えるかもしれません。
したがって、当然のことながら自殺予防は大きな国民的課題です。

この自殺予防については、私はこの9月の「自殺についての特集」の時も述べましたが、自殺
の率に大きな男女差があることが手掛りとなると思います。

つまり、女性は男性に比べて自殺の率が半分以下と低いということです。ところが、自殺の
原因の大きなものとして挙げられているうつ病には、女性は男性の2倍以上なりやすいのです。

言い換えば、女性は男性に比べて圧倒的にうつ病になりやすいのに、自殺に至ることは少ない。
一方、男性は女性に比べてうつ病になることは少ないのに、自殺に至る率は高い。

それでは、この女性の生きる事へのたくましさはどこからくるのでしょうか。裏返すと、男性の
生きる事へのもろさは何に由来するのでしょうか。

その理由の一つは、心の悩みを持った時に、助けや援助を求める行動の差が大きく関係している
のではないか、と考えます。

というのは、何か悩みを持った時に、女性は気軽に他の人に相談するのに比べ、男性は悩みを
持っても自分だけで抱え解決しようとするからではないか、ということです。

実は、心の悩みを持った時の解決方法のこのような男女差は日本に限らない現象です。私が
米国の大学院に留学中にも米国人から同じことを聞きました。

コロラド州デンバー大学大学院でうつに関する博士論文執筆中に、私がインタビューした何人
もの心理学者が、「男は常に強くなければならないとの意識が強く、したがってうつになっても
援助を求めない」と話していました。

米国では自立・独立独歩を求める価値観が中心ですが、いわばそれが裏目に出たともいえます。

しかし私は、本当の強さ・男らしさは、自分の弱みをさらけ出せることだと思います。それこそが
真の勇気ある行動だと思います。

ですから、世の男性も、心の悩みを持った時に、気軽に他の人に相談したり医療機関に行くこと
が、真の勇気ある行動であり男らしい行動であると考えられたらいい、と思います。それこそが、
心の悩みが重症化して自殺にも至るのを防ぐ重要な手立てだと考えます。

○次に「適応障害」ですが、これは皇太子妃雅子さんが「適応障害」で今年も療養生活を送られ
ていることから取り上げました。

ちなみに、適応障害とは、ストレスが原因となって気分・感情や行動の障害が起きる心の病気
です。

皇太子妃雅子さんの場合は、皇室に入られた後に適応障害が起きていることから、皇太子妃と
いう立場と深く関係していることが考えられます。

雅子さんは元々ハーバード大学・東京大学・オクスフォード大学で学び、また最難関の外交官
試験に合格して外交官の道を歩まれておられました。そして、皇太子妃となられた後も、
いわゆる皇室外交の一翼を担って行きたいと考えておられたと思います。

ところが、諸般の事情からそれが実現できずにいたことが、ストレスとなったものと考えられます。

ですから、長年に渡る医師団の治療もはかばかしくいかないのも当然と言えます。
なぜなら、適応障害の根本的な解決にはストレスの原因となる要因を取り除くしかないからです。
それ以外はあくまでも対症療法的(例えば薬物療法など)でしかないと思います。

雅子さんは心理療法(カウンセリング)も受けられていると思いますが、例えばものごとの
見方を変える認知療法にしたって、現状を追認するための二次的な対応策でしかないと
思います。根本的な対応策は、現在の環境を変えるしかないからです。

しかしながら、皇太子妃雅子さんが適応障害であることを医師団が公式に認めたことは、
精神疾患は誰でもなり得る(雅子さんのような最高の知性を持った人でも、皇室の位置に
ある人でも)ということを広く世間に認識させたという意味では、非常に意義のあること
と思います。

ついては、雅子さん自身が自ら肉声で、自身の病状や置かれた状況について国民に語られ
ることが、更に心の病気に対する正しい理解に寄与するものと考えます。

なお、更に詳しい内容はエフエムいみずのインターネットラジオで聴くことができます。
インターネットで聴くには、次にアクセスしてください。
http://www.voiceblog.jp/fmimizu/ バックナンバー第31回

皆さんからの番組へのEメールをお待ちしています (直接、エフエムいみず へどうぞ)。
http://www.fmimizu.jp/

なお、この番組の最後に流れる曲、「心」(釈 敏幸作詞・作曲・唄)については、以下のYouTube
で全曲が聴けます。釈 敏幸さんは、統合失調症を抱えながら音楽活動を続けていらっしゃいます。
http://www.youtube.com/watch?v=c4PXxh3raLU

来年も、引き続き心の話題についてお送りいたします。 どうぞよろしく。

うつ心理相談センター所長
心理学博士(PhD University of Denver USA)
村田 晃






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村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

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