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「地震と心の健康について~今年の心の健康重大ニュ―スから」

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング

「地震と心の健康について~今年の心の健康重大ニュ―スから」について、エフエムいみず(79.3MHz)
の私の番組、「心に元気を!大人のメンタルヘルス」(12月21日水曜)で話しています。

今年も残り少なくなったことから、心の健康(メンタル・ヘルス)の観点から今年の大きな出来事を今回と
次回で取り上げたいと思います。

○今年は、何と言っても地震(東日本大震災)に関してのことが第一と思います。特に富山県の場合は、
その少し前に起きたニュージーランド地震も含みます。

今回の未曾有の地震を通じて、誰もが自然の猛威を改めて痛感したのではないでしょうか。
ただしそれと同時に、それに負けない人間の持つ強さも改めて実感したのではないでしょうか。

それは、個々人の持つ強さのみならず、人と人とのつながりも含めてです。そのことを具体的に示す
ものとして、日本国内のみならず世界中各地からの今も続く物的・心理的支援の広がりがあります。

その中で特に精神的な支えが大きく注目されているのは、「絆」という言葉が流行語になったことにも
端的に示されているといえます。

○この精神面については、私は人間は本来的にストレスに対しての「自己回復力」といったものを持って
いると考えています(個人的にも人類全体としても)。
それが人類を今まで生き延びさせてきた原動力ではないかと思います。

しかしながら、今回のような大災害の場合には自己回復力だけでは対応できないことも十分考えられます。

○以下、その場合に自己回復力を補足する手立てを幾つか述べます。
(なお、もし強い不安感などが長く続くようであれば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を疑い、精神科
専門医の診断を受けることをお勧めします。)

一つは、身体面からの対処法で、運動やストレッチ・リラクセーションなどがあります。

もう一つは、ものの見方・考え方からの対処法です。

大きく言えば、前向きなものの見方・考え方をする、ということですが、具体的には、仏教の観点
からと実存主義の観点からの二つを取り上げたいと思います。

まず、仏教の観点からですが、これはテレビで瀬戸内寂聴さんの地震被災地での青空説法を観て
学んだことです。

瀬戸内さんは、地震で身内を亡くして何故自分だけが助かったのか・何とかできなかったかと
苦しんでいる人に対して、次のように話されていました。

「亡くなった方はあなたの身代わりになって死んだのです。ですから、その人の分まで生きる
のがあなたができることです。」

それを聞いた人は、少し心が楽になったように感じる、といっていました。

私は、このような考え方は、全く不可抗力な場面にも関わらず、自分だけが生き延びたことに
罪悪感を感じている人に対しては、とてもいい助言だと思います。

もう一つ、実存主義的な対処法としては、第二次世界大戦中に、ユダヤ人としてナチの強制
収容所に送り込まれ生き延びた精神医学者フランクルの考え方が挙げらます。

フランクルは、自分自身の体験を基に、「人間は絶望的な状況に追い込まれても、それをどう
意味づけるかによって希望を持つことができる」、といっています。

この考え方は、どのような事態であっても、それに意味を見出す・作り出すことによって希望
を持つことができる、ということであり、逆境に置かれた人に対してそれを乗り越える励みと
なるものの見方といえます。

○次に、今回の未曾有の大震災を通じてもう一つ明らかになったことは、物質的な幸せよりも
精神的な幸せの大事さ、ではないでしょうか。

これに関連して思うのは、11月に来日したブータン国王夫妻のことです。

ご存知のように、ブータンという国は中国とインドの両大国に挟まれた小国 (広さは九州くらい
で、人口は70万人) です。 また、国の経済力を示す国民総生産(GNP)は日本の20分の1という
経済的に貧しい国でもあります。

ただし、ブータンは、単に物質的な充実度からものごとを見るのではなく、精神的な充実度
からものごとを見ることを提唱し、「国民総幸福量(GNH)」という新しい指標を提案した国
として世界の注目を集めています。

ちなみに、ブータンの国民の97%が、自分は幸せと調査に回答しているとのことです。

このブータンの提唱する幸福の考え方は、今回の地震の被害と重ね合わせるとき、今後我々は
何を目標にしていくべきか、の示唆を与えるものといえます。

○最後に、今回の地震以後改めて着目された金子みすずの詩の中に、私たちがいかに互いに
気持ちを分かち合える(共感的理解)か、について触れたものがありますので、紹介したいと
思います。

 さびしいとき

私がさびしいときに、
よその人は知らないの。

私がさびしいときに、
お友だちは笑ふの。

私がさびしいときに、
お母さんはやさしいの。

私がさびしいときに、
佛さまはさびしいの。

『金子みすゞ全集』(JULA出版局)より

注:蛇足ながら、最後の「私がさびしいときに、 佛さまはさびしいの」は、その前の
「お母さんはやさしいの」を超える真の共感的理解だと思います。簡単に言えば、共に
喜び共に悲しむ、ということだと思いますが。

なお、更に詳しい内容はエフエムいみずのインターネットラジオで聴くことができます。
インターネットで聴くには、次にアクセスしてください。
http://www.voiceblog.jp/fmimizu/ バックナンバー第30回

皆さんからの番組へのEメールをお待ちしています (直接、エフエムいみず へどうぞ)。
http://www.fmimizu.jp/

なお、この番組の最後に流れる曲、「心」(釈 敏幸作詞・作曲・唄)については、以下のYouTubeで
全曲が聴けます。釈 敏幸さんは、統合失調症を抱えながら音楽活動を続けていらっしゃいます。
http://www.youtube.com/watch?v=c4PXxh3raLU

なお次回は、今年の心の健康に関するその他の重大ニュースについて述べたいと思います。

うつ心理相談センター所長
心理学博士(PhD University of Denver USA)
村田 晃

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村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

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