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「うつになったらどうするか」

2011年12月9日 公開 / 2014年6月5日更新

テーマ:心理相談・カウンセリング

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

コラムキーワード: 対人関係療法

「うつになったらどうするか~うつとは何か5」について、エフエムいみず(79.3MHz) の
私の番組、「心に元気を!大人のメンタルヘルス」(12月7日水曜)で話しています。

今まで、うつの症状・発生頻度や原因について述べてきましたが、今回は、では実際
うつになったらどうするか(うつの対処法)について述べます。

うつの対処法としては、私は、(1)薬物療法、(2)心理療法(カウンセリング)と、(3)周囲の
支え、が三本柱と考えます。

○まず、薬物療法と心理療法(カウンセリング)については、その両方の組み合わせが
うつ病に対しては最も効果的、との実証的な研究結果が米国で報告されています。

(1)薬物療法

うつ病に対しての医学的な対処法としては、抗うつ薬での治療が中心です。
現在は、各種の抗うつ薬が開発されており、その効果は高いといえます。

ただし、抗うつ薬が効き始めるまでには少し時間がかかる(通常2~3週間)こと、
それに副作用(眠気や体重増加など)がありうること、は認識しておく必要があります。

また、うつの症状が改善されても、自分だけの判断で服薬を止めないことが重要です。
理由はうつが再発する可能性が高いからです。 ですから、薬を止めたい場合にはまず
主治医に相談することが大事です。

(2)心理療法(カウンセリング)

うつ病に対しての心理学的な対処法には各種の心理技法が使われています。

ただし、私は個々の心理技法の前に、信頼できる人に話を聴いてもらえるだけでもかなり
気分が楽になるのではないかと思います。 秘密をしっかり守ってくれ、批判せずにじっくり
話を聴いてくれる人がいたら、まずその人に話してみるのもいいと思います。

具体的な心理技法としては、私は、①認知行動療法、②対人関係療法、及び③実存療法
の3つを挙げたいと思います。

① 認知行動療法
認知行動療法は、米国でうつ病に対する治療法として開発されたものが基本となっており、
うつ病に対して効果のあることが実証的に示されています。

認知行動療法は、認知(ものの考え方)の歪みがうつの気分の形成に関係しているという
理論に基づいています。

特に、自己に対する否定的見方や、周囲への敵意や強い不信、将来への悲観的な見方が
うつに関係していると考えます。

ですから、心理療法の過程では、そのようなものの見方がいかに実際とかけ離れているかを、
一つ一つ実例を挙げて検証していきます。 このような作業を通して、物事の認識の誤りや
歪みを正し、ひいてははうつの気分の解消を目指すものです。

この認知行動療法は、うつ病に対しての切り札的な心理療法としてみなされている風も
ありますが、わたしは人によって向き不向きがあると思っています。

というのは、認知行動療法を行うには論理的に考えるなどのかなりの心理的エネルギーが要求
されるからです。

うつの人は、思考力・集中力など心理的エネルギーが落ちているわけですから、自分のものの
考え方を検証する作業はかなり負担になることが考えられます。

ですから、認知行動療法は、軽度のうつや論理的な思考が得意な人にとってはいいでしょうが、
重度のうつや論理的な思考が得意でない人にとっては向いていないと思います。

② 対人関係療法
この方法は、家族間のあつれきなど、対人関係の問題がうつの原因と考える立場によっています。
したがって、うつの対処法としては、問題である対人関係の改善に重点を置きます。 必要に
応じて、当の本人だけでなく、関係する家族を巻き込んだ家族療法(集団カウンセリング)もあり
ます。

③ 実存療法
この方法は、人はその人生においての目的・意味を見い出せない時、うつに陥るという考え方に
基づいています。 したがって、カウンセリングの過程では、人生の目的・意味を新たに創造する
ことに重点が置かれます。

私は個人的には、この考え方が好きです。

(3)周囲の支え

うつからの回復には、以上の薬物療法や心理療法に加えて、周りの家族や友達、職場の同僚・
上司の理解と支えが非常に重要です。

言い換えれば、周囲の理解と支えがない限り、薬やカウンセリングもその効果をうまく発揮でき
ないといえます。

家族は、本人に対し、あせらずゆっくり休める環境を作ってあげることが大事と思います。
職場も、うつは誰でもなりうるものだということを理解し、本人がまた職場復帰できるよう準備
することが大事と思います。

このような周囲の支えがない限り、ちょっとしたきっかけでうつが再発する可能性は高いと考え
ます。

次回はこの「うつとは何か」の最後として、「うつの予防法」について述べたいと思います。

なお、更に詳しい内容はエフエムいみずのインターネットラジオで聴くことができます。
インターネットで聴くには、次にアクセスしてください。
http://www.voiceblog.jp/fmimizu/ バックナンバー第28回

皆さんからの番組へのEメールをお待ちしています (直接、エフエムいみず へどうぞ)。
http://www.fmimizu.jp/

なお、この番組の最後に流れる曲、「心」(釈 敏幸作詞・作曲・唄)については、以下のYouTubeで全曲が
聴けます。釈 敏幸さんは、統合失調症を抱えながら音楽活動を続けていらっしゃいます。
http://www.youtube.com/watch?v=c4PXxh3raLU

うつ心理相談センター所長
心理学博士(PhD University of Denver USA) 村田 晃

この記事を書いたプロ

村田晃

心理相談・カウンセリングのプロ

村田晃(うつ心理相談センター)

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