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グループ・カウンセリングの実際(国内編)~私自身の体験

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング

「カウンセリングの実際」のその2として、今回はグループ・カウンセリングについて私自身の体験(まずは国内で体験したもの)からお話ししたいと思います。

グループ・カウンセリングとは、前回述べた一対一での個人(個別)カウンセリングと違って、集団(グループ)で、ある共通の問題などについてカウンセリングを行うものです。グループの人数は目的によっても違いますが、普通10人位が適正と言われています。また、カウンセラーの数も一人とは限らず、場合によっては二人ということもあります。

個別のカウンセリングに対するグループ・カウンセリングの目的・意義は、一つには、カウンセリングを実施する側から言えば、個別カウンセリングに比べて同じようなことを多数の人に同時にできて効率的であることです。
これは実用的な観点からですが、実はそれよりももっと大事なことは、グループでカウンセリングを行うことによって、個別のカウンセリング場面では得られないもの(グループでの相互作用)があり、参加者にとってそれから学べるものが多い、ということです。

また、グループ・カウンセリング自体もその目的によって分かれ、一つは、当面の問題解決(例えば薬物依存など)を目的としたもの、もう一つは、自己成長(人間についての理解を深めるなど)を目的としたものがあります。今回私がお話しするのは、この自己成長を目的としたグループ・カウンセリングの参加体験です。

私は大学を卒業して東京の新聞社に勤務していたときに、東京・目白の財団法人日本カウンセリング・センター主催のものに参加しました。そのきっかけは、私が個別カウンセリングを受ける中で、私のカウンセラー(小和田元彦氏)がそのセンターに関係していたことを知ったからです。(ちなみに、日本カウンセリング・センターは、日本で最も歴史のあるカウンセリング団体で、日本のカウンセリング界の第一人者だった友田不二男氏が創設から関わっていました。)
その日本カウンセリング・センターで、私は、入門編から始まり各種のグループ・カウンセリング(体験学習)に参加しました。

日本カウンセリング・センターでのグループ・カウンセリングは週一回・毎回一時間半でした。ただし、時間の枠が決まっているだけで、実際にその間でどうするか決まったものは何もないのです。カウンセラーも何も言いません(ちなみに、カウンセラーは「世話人」と呼ばれていました)。

その中で、普通の展開はこうです。

グループ・カウンセリングが始まってしばらく沈黙が続くうちに、誰かが沈黙を破ろうとして、何か話題を提供したり問題を提起したりする。しかし、大抵の場合他の人は乗って来ない。そしてまた沈黙が続く。
しばらくはこのような連続となる。けれども、そのうちに誰かが、「他人の、この場面以外の外の出来事」でなく、「その人自身の、今ここで」の率直な気持ちを語り始める(「こんな沈黙が続くは嫌だ」「あなたのその言葉が大嫌い」とか)。そこで初めて、他の人も「それぞれの、今ここで」の気持ちを、否定・肯定なものに関係なく率直に話し始める。
その中で、「今ここ」で「自分自身」が何を感じているか、また他の人が何を感じているか、への理解が深まる。

まとめれば、グループ・カウンセリングは大体こういう展開をしていくことになります。
しかし、これはいわば教科書的な理想的な展開を述べたまでで、実際にはもっと紆余曲折があり、なかなか皆さん本心を出さずに終わってしまうこともあります。

後で知ったことですが、このやり方はいわゆるエンカウンター・グループ(以前は感受性訓練ともいわれました)というもので、米国の心理学者カール・ロジャースが始めたものです。

ロジャースは、従来の指示的・権威的なカウンセリングのやり方と180度違った、非指示的な来談者中心のカウンセリングのやり方を提唱し、その後のカウンセリング界に大きな影響を与えました。
日本カウンセリング・センターの中心的存在であった友田不二男氏は、日本でのロジャース研究の第一人者であり、ロジャースの考え方の普及に努めたことから、この「構成されない場面」でのグループ・カウンセリングが、日本カウンセリング・センターで大きな比重を占めたことは当然といえます。

しかし、他のグループ・カウンセリングのやり方もありました。友田氏自身、その後にはグループ・カウンセリングの中で、中学の国語の教科書を読むことを始めたことを記憶しています。友田氏が、カウンセリングに参加している人に子供がやるようなことをあえて求めたのは、多くの人が、書いてある簡単な事も正確に理解できていないことを身をもって知ったからだ、と言っています。
それで、友田氏のグループ・カウンセリングでは、参加者は、教科書の一字一句の意味を如何に正確に捉えるかに、友田氏から厳しい指摘を受けながら全力を注ぎました。

ところで、グループ・カウンセリングには、この通いのものの他に、泊りがけの集中的なもの(ワークショップ)もあり、私も参加しました。
泊りがけのグループ・カウンセリングの利点は、日常からしばし離れてカウンセリングに集中できる、というところにあります。

私は、千葉県の山荘や青森県の十和田湖畔等でのワーク・ショップに参加しました。
大体週末とかを利用して、一泊二日とか二泊三日とかの日程で、朝から夜までグループでのカウンセリングの連続です。そしてその後は相部屋で雑魚寝となります。

私自身はカウンセリングの時間は結構自由に振る舞われたのですが、その他の自由時間に他の人とどう対応し振る舞っていいか、に少し迷いました。つまり、カウンセリング場面といういわば非日常的な場面と、その他の日常的な場面とをどうつなぎ、また切り替えるか、ということです。

これはその後、私の中で、突き詰めていけばカウンセリングにとっては日常・非日常の差は特になく、「いつでもカウンセリング」、という考えに落ち着くのですが。
(続く)

うつ心理相談センター
心理学博士 村田 晃

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村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

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