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地震被災者への心理的対応(その3)

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング


村田 晃(心理学博士 PhD University of Denver USA)


引き続く地震による多数の直接の被災者及びその関係者がいる状況で、専門家だけでは初期の心理的援助は困難と思われます。したがって、地震に
遭遇された方に対し、一般の方でもできる範囲で初期段階での心理的援助に参加することは非常に重要と考えます。

その際の実践的指針として、米国国立PTSD (心的外傷後ストレス障害) センターと同国立子どもトラウマティックストレス・ネットワークが発行した 「サイコロジカル・ファーストエイド[心理的初期援助 ](PFA)実施の手引き」2006年版 が役立つと考えます。(日本語訳は、兵庫県こころのケアセンター作成)(現在第2版)。

この手引きは、初動の災害救援活動を行う人向けに作成された、初期における心理的援助の手引きですが、一般の方でも参考になりすぐ使える所がありますので、以下に一部内容を抜粋・編集しました。

なお、概要の日本語版は以下を参照ください。
https://www.j-hits.org/_files/00126991/pfa_supplement.pdf

その3

1.困難を乗り越える対処法に関する基本的な情報を提供する

被災後の心身の苦痛な反応や困難な状況にうまく対処する様々な方法について、被災者と話し合いましょう。


(1)助けになる対処法(不安を抑え、苦痛な反応を減らし、状況を改善し、困難な時を乗り越えることに役立つ方法)の例

・誰かに話して支えてもらう、誰かにそばにいてもらう。

・大災害が起きた後に興奮・動揺するのは当たり前だ、と自分自身に告げる。

・状況をよくするために今すぐできる、何か現実的なことに集中する。

・必要な情報を得る。

・栄養のある食事をとる。

・休憩をとる。

・適度な運動をする。

・できる範囲でいつもの日課を維持するよう努める。

・気分転換をする (スポーツ、趣味、読書)。

・楽しいことを計画する。

・自分自身とゆっくり対話をする。

・亡くなった、愛する人との思い出を書いたり話したりする。

・リラックスできることをする (呼吸法、瞑想、静かに自分に語りかける、気分が落ちつく音楽を聞く)。

・日記をつける。

・過去にうまくいった対処法をやってみる。

・サポートグループに参加する。

・カウンセリングを受ける。


(2)助けにならない対処法の例

・家族や友人とのつきあいを避ける。

・ひきこもってじっとしている。

・楽しい活動から遠ざかる。

・自分のからだを粗末に扱う(睡眠、運動を十分にとらないなど)。

・食べ過ぎる、あるいは食べない。

・長時間働き続ける。

・自分や他人を過度に責める。

・怒りを暴力的に爆発させる。

・アルコールや薬物で紛らわせる。

・長時間テレビを見続ける、あるいはコンピュターゲームをし続ける。

・危険なことをする(無謀な運転、薬物乱用、安全に配慮しない)。

・愛する人の死や今回の出来事について、考えること・話すことを極端に避ける。


(3)どの対処法をとるかについて相手と話し合う。その目的は次の通りです。

・いろんな対処法の選択肢についてじっくり考える手助けをする。

・その人の対処能力を見極め、把握する。

・適切でない対処行動のマイナスの結果について十分に考える。

・目的を視野に入れたうえで対処法を選択できるよう励ます。

・自分で対処できる、自分でやっていけるという感覚を高める。


2.簡単なリラクセーション法を教える

呼吸法は、心身の緊張をやわらげる役に立ちます。定期的に実践することによって、睡眠、食欲、身体機能を改善していきます。
(注)具体的な呼吸法について、以下 「リラクセーションのためのヒント」(付録E) を紹介します。

リラクセーションのためのヒント

災害や事故にあえば、不安になったり、緊張を感じたりするのが当たり前です。しかしそうはいっても、不安や緊張の辛さがいつまでも続くと、日常を取り戻す
ためにしなくてはならないことができなくなってしまいます。

災害や事故に続いて起こるさまざまな問題には、簡単には解決できないことが多いものです。しかし、できることもあります。昼のあいだにリラクセーションを
行ない、気持ちを穏やかにする時間を作りましょう。そうすることによって、よく眠れるようになり、集中力が高まり、生きていくためのエネルギーがでてきます。
リラクセーションの方法には、エクササイズ、呼吸法、瞑想、水泳、ストレッチ、ヨガ、寺院への参拝、運動などがあります。気持ちが穏やかになるような音楽を
聞いたり、自然のなかで過ごしたりするのもいいでしょう。

ここでは、基本的な呼吸法を紹介します。


○あなた自身のために

1.鼻からゆっくり息を吸ってください――ひとつ、ふたつ、みっつ――肺からお腹まで、気持ちよく空気で満たします。

2.静かにやさしく、「私のからだは穏やかに満たされています」と自分に語りかけましょう。今度は口からゆっくり息をはきます――ひとつ、ふたつ、みっつ――肺からお腹まで、すっかり息をはききりましょう。

3.静かにやさしく、「私のからだはほぐれていきます」と自分に語りかけます。

4.ゆったりとした気持ちで、5回繰り返しましょう。

5.必要に応じて、日中に何度でも繰り返してください。


○子どもたちのために

子どもには、次のように呼吸法を指導しましょう。

1.からだをリラックスさせるのに役に立つ、ちょっと変わった呼吸の仕方を練習してみよう。

2.まず、片方の手をこんなふうにお腹のうえにおきます。 [実際にやって見せる]

3.そうそう。じゃあ、鼻から息を吸いましょう。息を吸うと、空気がいっぱい入ってきて、お腹がこんなふうにふくらむよね。 [実際にやって見せる]

4.今度は、口から息をはきましょう。息をはくと、お腹がこんなふうにぐーっとへこんでくるね。 [実際にやって見せる]

5.3つ数えるよ。そのあいだ、ゆっくりゆっくり息を吸って。また3つ数えたら、ゆっくりゆっくり息をはいて。

6.はい、じゃあ一緒にやるよ。…よくできました!


○ゲームに取り入れてみましょう

・シャボン玉をふく。

・チューイングガムで風船をつくる。

・丸めた紙や脱脂綿を、テーブルの端から端に吹き飛ばす。

・息をふーっと吐く登場人物が出てくるお話をする。あなたがそれを真似て、子どもたちも一緒に息をすることで手助けする。

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村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

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