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地震被災者への心理的対応(その2)

村田晃

村田晃

テーマ:心理相談・カウンセリング


村田 晃(心理学博士 PhD University of Denver USA)


  地震に遭遇された方への心理的対応について、米国国立PTSD (心的外傷後ストレス障害) センターと同国立子どもトラウマティックストレス・ネットワークが発行した 「サイコロジカル・ファーストエイド[心理的初期援助 ](PFA)実施の手引き」の日本語訳 (兵庫県こころのケアセンター作成)を、引き続き紹介します(現在第2版)。
  この手引きは、初動の災害救援活動を行う人向けに作成された、初期における心理的援助の手引きですが、一般の方でも参考になると思いますので、以下に内容を抜粋します。

  なお、概要の全文は以下を参照ください。
https://www.j-hits.org/_files/00126991/pfa_supplement.pdf

○ 安全と安心感

目的: 当面の安全を確かなものにし、被災者が心身を休められるようにする

災害や事故の直後にまず必要なことは、安心感を取り戻すことです。 安全が確保され、安心することができれば、苦痛や不安は軽くなります。 大切な人が
行方不明になっている、死亡通知を受け取る、遺体の身元確認をするなどの状況におかれている被災者を支えてください。  被災者の苦しみをやわらげるためにとても重要なことです。

安全と安心感は、いろいろな方法で提供できます。
(以下は一つの方法)

○ 現実的な問題の解決を助ける

目的: いま必要としていること、困っていることに取り組むために、被災者を現実的に支援する

必要な手段や資源を提供することによって、 「自分には乗り越えていく力がある」 「なんとかなる」 「自分を誇りに思う」 などの感覚を高めることができます。
つまり、現在あるいは今後予想される問題について被災者を支援することは、心理的初期援助(PFA)の中心的な活動なのです。 被災者は、問題解決に対する現実的な援助を歓迎するでしょう。

被災者がいま必要としていることについて話しあう機会は、心理的初期援助を提供しているあいだ、何度もあるでしょう。 生活ストレスが山積みになった環境で、問題に取り組むことは困難です。 しかし可能な限り、被災者が必要としていることを解決できるよう、手助けしてください。 「達成可能な目標」 を定めるように助言しましょう。 小さな目標を達成することによって、失敗感や事態にうまく対処できないという感情を軽くすることができます。 また、成功体験を積み重ねることや、「自分で状況をコントロールできる」 という感覚を取り戻すことにも役立ちます。 それらは被災者が日常を取り戻していくために、欠かせないものです。

ステップ1. いま最も必要としていることを確認する

被災者が必要としていること、困っていることをいくつか挙げた場合は、一つずつ順番に考えていかなくてはなりません。 すぐに解決できることもあれば (食べ物を手に入れる、家族に無事を知らせる電話をかける)、すぐには解決できないこと (行方が分からなくなっている大切な人を探す、以前のような日常に戻る、遺失物のために保険を申請する、家族のためのケアを手配するなど) もあるでしょう。 でも、問題を片づけるための具体的な行動に手をつけることならできるかもしれません (捜索願や保険の申請書に記入する、ケアサービスを申し込むなど)。  被災者と一緒に問題に取り組むために、まず、いますぐに援助が
必要な事柄を選ぶ手伝いをしましょう。

ステップ2. 必要なことを明確にする

問題を明確にするために、被災者と話しあってください。 問題を理解して明確にできれば、対処のための具体的なステップを描き出すことはより簡単になります。

ステップ3. 行動計画について話しあう

被災者が必要としていることや困っていることを解決するために、何ができるか話しあってください。 被災者がしてほしいことを伝えてもいいし、あなたから提案してもいいでしょう。 被災者が食べ物、衣類、避難場所、医療、心のケア、宗教的な配慮、経済的援助などを得る手助けをするために、支援の内容を事前に
把握しておいてください。 また、行方不明の家族や友人を探すための支援を受けたり、救助活動に貢献したい人々がボランティアの機会を得たりする手助けもできます。 使える可能性のある資源や援助、それを得るための認定の基準、出願手続について、現実的な情報を伝えてください。

ステップ4. 解決に向けて行動する

被災者が行動を始める手助けをしてください。 たとえば、必要なサービスを受けるための予約、事務手続きなどを手伝ってください。



○ 子どもや思春期の人に対応するときには

・幼い子どもに対応するときには、椅子に座るか、子どもの視線の高さにあわせてしゃがみましょう。

・学童期の子どもに対しては、感情、心配なこと、疑問を言葉にできるように手助けしてください。 普段気持ちをあらわすのに使っているシンプルな言葉(頭に
きた、さびしい、こわい、心配など)を用いましょう。  「恐怖」 「脅え」などの極端な言葉は、かえって苦痛を増すので、使わないでください。

・子どもの話を注意深く聞き、あなたのことをちゃんと理解しているよ、と伝えましょう。

・子どものふるまいや言葉が、発達的には退行しているように見えることがあることを知っておいてください。

・言葉づかいを子どもの発達レベルにあわせましょう。幼い子どもには通常、「死」 のような抽象的な概念は伝わりにくいものです。 可能な限り、シンプルで
直接的な表現を用いてください。

・思春期の人に対しては、大人同士として話しかけましょう。 そうすることによって、かれらの気持ちや心配や疑問にあなたが敬意を払っているというメッセージを送ることができます。

・子どもに十分な情緒的支えを提供できるよう、親の機能を補強し、支えてください。


○ 高齢者に対応するときには

・高齢者はもろさをもっていますが、同時に強さももっています。 かれらは人生のなかで逆境を乗り切ってきた人たちであり、多くの人が効果的な対処能力を
身につけています。

・聴力に問題が見受けられる人に対しては、低いはっきりした声で話しかけましょう。

・見た目や年齢のみに基づいた決めつけをしないでください (例えば、混乱した高齢者は、記憶、思考、判断などに、不可逆の問題を抱えているなど)。見かけ上の混乱の理由としては次のことが考えられます。 環境の激変による認知の障害(災害の日時や場所等の認識不全)、視力や聴力の衰え、栄養不良や脱水状態、睡眠障害、持病あるいは服薬に起因する問題、社会的孤立、孤立無援感や無力感、などです。

・精神的な疾患を抱えている高齢者は、不慣れな環境に対して、さらに混乱したり、困惑したりしやすいでしょう。 そのような人を特定したら、精神保健相談、
あるいは適切な機関への紹介が受けられるよう援助してください。


○ 障害をもつ人に対応するときには

・援助を求められたときには、できるだけ静かな、刺激の少ない場所で対応するようにしてください。

・直接のコミュニケーションが困難でないかぎり、介護者ではなく本人に向かって話しかけましょう。

・コミュニケーション能力(聴力、記憶、発話)の障害が見受けられる場合には、簡単な言葉で、ゆっくりと話しかけましょう。

・「障害をもっています」と主張する人の言葉を信じてください――たとえそれが見た目に明らかなものでなく、あなたにとって聞きなれないものであったとしても。

・どう手助けしたらいいか分からないときには、「何かお手伝いできることはありますか」と聞いてください。そして、その人が言うことを信じてください。

・可能なら、自分のことは自分でできるようにしてあげてください。

・目の不自由な人が慣れない場所を移動するときには、「腕をお貸しましょうか」と申し出てください。

・その人の必要に応じて(耳が不自由など)、情報を書きとめることを申し出たり、お知らせを文書で受け取れるよう手配したりしてください。

・その人の介護必需品(薬品類、酸素ボンベ、呼吸器装置、車椅子など)を確保してください。

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村田晃
専門家

村田晃(心理カウンセラー)

うつ心理相談センター

法務省心理技官として25年勤務後、米国の2大学院に15年留学、カウンセリング心理学修士号及び博士号取得。 留学中にうつ病になり精神科病院にも入院。その体験からうつへの関心を強め、以後うつを多面的に研究

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