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古民家の小屋裏活用

肥塚光義

肥塚光義

テーマ:古民家・町家再生

古民家の広い小屋裏空間


富山には屋敷林に囲まれた格式のある古民家が数多くあります。家の大きさをみても、現在の一般住宅の2~3軒分の床面積があり、大きな屋根が特徴です。正面から見ると、一見、平屋の様に見えるのですが、側面から見ると2階部分に窓が付いている場合が多く見受けられます。

この場所は「あま」と呼ばれており、小屋裏になっています。昔は普段使わない生活道具を置いたり、蚕などを育てる空間になっていたそうです。古民家では1階の床面積が50坪を超えるものも多いのですが、「あま」もほぼ同じ面積ですので、かなり広い空間になります。

現在では養蚕業を行うことは無くなっていますので、古民家にお住いの方の多くが物置や部屋を作って利用されているのではと思われます。


古民家の外観
写真:屋敷林に囲まれた古民家(滑川市 I 様邸)


古民家の側面
写真:古民家の側面(2階部分の「あま」には窓が付いています)


古民家の小屋裏再生


上記の写真の古民家の小屋裏空間を再生した様子をご紹介します。

施工前は家財道具の納戸として小屋裏空間を利用されていました。屋根の棟が一番高い場所では、天井高がかなり高く、3階までありそうな高さでした。一方で、小屋裏の端では屋根の傾斜で天井高が低く、人が入れない高さの場所もあります。その場所には窓も設置できませんので、小屋裏を改装するに当たっては、採光の問題がありました。

ご依頼内容は、小屋裏空間に部屋と納戸、箪笥用のウォークインクローゼットなどの施工でした。


施工前の古民家の小屋裏
写真:施工前の古民家の小屋裏 (曲がった梁が屋根を支え、大きな土壁で仕切られています)


土壁と梁
施工時に、お施主様からは「土壁をできるだけ残して施工して欲しい」とのご要望を頂きました。土壁は断熱性・遮音性に優れているものの、施工する手間が多く掛かるため、現在はクロス施工に代わってきています。そのため、土壁を施工できる職人も殆どいないのが現状です。古民家再生の場合、この貴重な土壁を極力残す様に施工しています。


土壁を覆って施工
上の写真は土壁を木材で覆って、その上から新規の壁を作る様子です。既存の土壁を下地材として残すことで、土壁の遮音性・断熱性能を活かしています。


梁を出した施工
石膏ボードで覆っています。既存の曲がった梁を室内に出すことで、室内のアクセントになっています。更に屋根の傾斜で低くなっている天井を高くすることで空間を有効活用できます。


梁を活かしたデザイン
梁を活かした部屋:天井高が高いので、上部にもう一つ窓を設置し、明るく開放感のある空間になりました。



クローゼット
収納するものによって形状を合わせて作ったクローゼットの棚



寝室
天井高にピッタリ合った箪笥
I 様邸は歴史のある古民家ですので、代々使われてきた家財が多く残っています。写真の箪笥もその一つです。最近の家では棚付きのクローゼットを作ることが多いため、箪笥を使うことは少なくなってきましたが、I 様は箪笥を使うことにこだわりを持たれていました。I 様の所有する箪笥は歴史のあるものが多く、室内にあるとインテリアのアクセントにもなっています。

クローゼット
クローゼットの中の箪笥


箪笥を置くWC
箪笥のウォークインクローゼット
I 様は箪笥を大事にされています。間取りを決めるときに、既存の箪笥を並べて置けるウォークインクローゼットをご希望されました。そこで、既存の箪笥のサイズを測って並べて置けるウォークインクローゼットを作りました。


古い建具を活かした小物棚
古い建具を再利用した壁収納
壁収納に用いているガラス引戸は I 様邸で使用されていたもので使わなくなったものを再利用しました。また、アンティークな雰囲気に合う様に天井には藤を貼っています。手前にも一竿箪笥が置いてあります。


採光を採る工夫
採光の工夫をした部屋
古民家の小屋裏を利用するときの課題の一つが彩光です。古民家の小屋裏は屋根が大きいため、窓を取れる場所が側面などに限られてくることと、面積が大きいので、どうしても採光の取り難い空間が出てきます。そこで、写真の様にガラス戸から光が入りやすい様に窓と戸の位置を合わせています。


階段ホール
階段・ホール
こちらも採光の取り難い空間ですが、ホールの窓から奥まで光が抜ける様に空間の配置をしています。


古民家や町家の再生では、既存のものをできるだけ活用して施工することで様々なメリットがあります。
・土壁の断熱・遮音性能をそのまま活用できること
・貴重な古材や建具などの建材を残せること
・既存のものを活かすことでのコスト削減
・古さをデザインに生かすことで、リフォームしていない箇所との統一感を出すことができること

古民家や町家を再生して思うことは、お施主様が受け継いでこられた家を大切に思われていることです。使われていた木材や建材もできるだけ再利用して欲しいというご要望も多く頂き、施工する者としても大変嬉しく思います。

現代のライフスタイルに合った住空間に変えつつ、古民家や町家を次世代に受け継いでいって欲しいと思います。

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肥塚光義
専門家

肥塚光義(大工)

肥塚建築

木の癖、反りを見極め、1本1本の特性を最大限に活かす「木組みの技」は、宮大工に学び、50年近い経験に裏打ちされた熟練技術。その卓越した技は古民家再生や移築において遺憾なく発揮されています。

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